今日はまた読書感想です( ¨̮ )
例に漏れずネタバレ等あるかと思いますので読む際は自己責任でお願いします!





今回は桜庭一樹さんの無花果とムーンです。
この前GOSICKPINKを読んだらがっつり桜庭一樹さんに浸りたくなったので次の本はこれ!と決めていました(笑)

主人公は高校3年生の女の子月夜。
この月夜の一人称視点で物語が進んでいきます。
兄2人と父親の4人暮らし。
しかし月夜はもらわれっ子で、家族の誰とも血が繋がっていません。
ある夏の日、月夜が大好きな兄、奈落が死んでしまうことから物語は始まります。

どの作品もそうですけど、桜庭一樹さんのネーミングセンスが素晴らしいです!!
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけないの海野藻屑しかり、荒野の山野内荒野しかり。
名は体を表すという諺がものすごいしっくりきます。
今回の主人公。前嶋月夜という名前もそうですが、2番目の兄の奈落という名前のインパクトも凄まじいです。
そして一番上の兄。天才的現実主義(本文中での紹介)者の兄の名前は一郎。
お祭りのために街に一時的にやってくる労働者で、月夜と仲良くなる男の子2人組は密と約。
超絶美少女の遠藤苺苺苺苺苺(いちご)先輩など(フルネームが出てくるのはさすがに数回で、作中ではイチゴ先輩と書かれていますけど)名前だけでものすごく魅力的です!
もう名前とキャラが合致しすぎていて忘れられないキャラになります。

そして今回何より思ったのが、主人公、月夜の性格が悪い(笑)
そんな喧嘩を作中ちゃんと月夜と友達がやるのですけど、これに関しては友達が正しいかなと思ってしまうくらいには性格が悪いです(笑)
悲劇のヒロインぶってるんじゃないよ!とツッコミを入れたくなるときもあったり(笑)
ただこの物語は月夜の一人称視点で進んでいくので、月夜の気持ちもそうやって行動してしまう気持ちもよく分かる。
しかし月夜視点で進んでいくのに、月夜の周りの人にも共感できるような場面が多々あります。
そしてそれがなんとなくむず痒い気持ちになります。
月夜のもらわれっ子であるがための苦労、気遣い。
捨てられないように優秀でいた自分。
家族の仲を上手く取り持ちながら自分の居場所を確保した自分。
そして血は繋がってないけど兄という立場の奈落への恋心。
自分を抑えながら生きてきた月夜。
奈落が死んだことで、家族のバランスも崩れ、自分の抑えてきた感情も崩れ。
バランスが崩れだことで一番上の兄とも普段の喧嘩(犬の喧嘩)とは違う激しい喧嘩(人間の喧嘩)をして、家族も友達もしっちゃかめっちゃかにして月夜は自分のしたいように行動していきます。
でも、それでいいじゃない。って思えます。
だって人間ですから。(某詩人さんみたいですけど(笑))
相手の顔色伺いながら愛想よく尻尾ふる犬じゃないから。
感情があるし、意志があるし、それをもとに行動ができる人間なんです。
友達とだって、好きのバランスを取りながら続けていくのは疲れちゃうから。

そして奈落にそっくりな少年、密とその恋人、約も物語のアクセントになっていて。
密は奈落が現世に戻ってくると月夜の夢の中で言ったつぎの日に町にやってきます。
兄の言葉を信じる月夜は、密をあの世からやってきた奈落だと思います。
ただ、密の性格は奈落とは違っていて。
それでもそんな密と月夜は仲良くなっていきます。
月夜以外の人には密が奈落に似てると思わないこと。
また月夜も物語の最後には似てないと思うことから密と奈落は全然別人だということが分かるんですけど。
案外密って、奈落のなりたかった姿なのかななんて思ったりして。
もしくは奈落の本性みたいな。
楽しいことが大好きでお調子者で、女の子からもモテて、友達も多かった奈落。
みんなを明るくする人気者ほど、ほんとの自分を隠してたりしますよね。
今ある家族のバランスを崩してでも、月夜に想いを打ち明けて、でもそれが結局自分が死ぬことと繋がってて。
やっと自分を解放しようと思った矢先にこれだったから、自分の本性に近い密にちょっと重なってみたのかななんて。
そんな風に思っています。

クライマックスの月夜が秘密を打ち明ける
シーンは胸が張り裂けそうでした。
自分が死ねば良かったんだって思うあの感じ。
私自身そんな大層な体験をした訳でもないのに、そう思う事があるくらいなので。
月夜の立場だったら、ほんとに辛くて怖くてそして激しい感情だなって思います。
でもそれを乗り越えさせる月夜の周りの人々。
そしてほんとに色んなひとから助けられて、生きていくことにした月夜。
その強さが眩しいくらいです。

これは月夜が夏休みをかけて、反抗期を迎え、喪うこと、愛されてることを理解する物語でしま。
奈落が死んだときの月夜はまだ喪うって感覚を理解してなくて、夏休みをかけて期間限定の人達と知り合って、長い時間をかけて喪失に向き合って、理解して。
胸が切なくなるくらい悲しいけれど、やっぱり完全な絶望ではない。
桜庭一樹さんの世界観がぎゅっと濃縮されたような1冊です。
月夜は永遠に奈落のことが大好きで、奈落はもう2度と月夜に会えないけどこっち(死者の世界)には来て欲しくなくて、月夜に生きててほしくて。
月夜は奈落以外いらなくて、奈落に会うためなら死んでもいいとすら思っていて、でも奈落以外にも好きのニュアンスはもちろん違うけど、月夜がすきで、心配で、生きてて欲しいと思う人は月夜が思うよりいっぱいいて。
全てが愛おしく思えるような物語でした。

こっから先、月夜が別な誰かと恋をするのか、やっぱり奈落をすきなままなのか。
この先を自分に託されたような。そんな読後感でした。
これは定期的に読み返したくなる1冊になる気がします!

そんな本でした。
ではでは(・ω・)ノシ
読み終わった本がもう1冊あるので近々また感想でも書こうと思います!!
それまでおさらば!なのです(・ω・)ノシ