ご縁あって、弁護士を中心に、公認会計士、社会保険労務士など中小企業診断士以外の士業や専門家から構成される勉強会へのお誘いをいただく。
テーマは事業再生がほとんど。資料が送られてきていつも思うのは「餅は餅屋」その道のことはやはり専門家が一番。判例分析に学ぶなどで、法律や会計の、その卓越した専門的かつ高度な知識に圧倒される。しかしながら冷静に考えると、中小企業診断士として馴染みのある事例分析と同様のことをやっていることに気づく。アプローチの視点と、必要とされる知識が異なる場面におかれているのである。
もう一つ思うことがある。それは、弁護士や公認会計士、社会保険労務士など中小企業診断士以外の士業が対応する領域は「技術的問題」であることである。
上図は、中小企業庁「経営力再構築伴走支援ガイドライン」に示されているものである。当ガイドラインには以下のように書かれている。
リーダーシップ研究で有名な米ハーバード大学のR.ハイフェッツは、世の中の問題は既存の解決策が応用できる「技術的問題」と、当事者自身が問題の一部であることから既存の解決策の応用では効果がなく、解決には当事者のマインドセット自体を変える必要がある「適応を要する課題」に二分されていると述べています。そして、リーダーが陥りやすい誤りは、「適応課題」に対して「技術的問題」の解決策を当てはめて解決しようとすることであり、「適応課題」に対処するには、当事者が対話を通じて問題の定義や解決策を探求し、自分たちの捉え方や思い込み、習慣を変えることが必要と指摘しています。
経営改善や事業再生、事業承継、企業としての成長・発展において、いやそれだけでない、企業経営においては「適応課題」への対処が根本にあると私は考えている。もちろん「技術的問題」への対処が必要なときもある。しかしながら、「技術的問題」の背景に「適応課題」がある。だから私は企業支援において「適応課題」への対応を重視する。それが中小企業診断士の重要な役割であると(私が産業カウンセラーになった理由の一つがここにあるのだが)。
餅は餅屋。さまざまな士業があり、各々に役割がある。
中小企業の振興に貢献する。そのためには士業間連携は不可欠である。しかし、他士業のことは知っているようで意外と知らないものである。壁があるようだ。その壁を取り払うことに取り組んでいこうと思う。