柄之保=つかのたもち

 

 ◆柄之保◆

 

 天眞正自源流兵法に於ける【柄之保=つかのたもち】とは、刀柄の握り方に関しての教えであります。

 

 天眞正自源流兵法の御流儀開祖≪小瀬與左衛門尉長宗≫は、其の師≪天真正伝香取神道流創始/飯笹長威斎家直公≫より、香取の剣・鹿島の剣に伝承される日本剣法の奥秘を伝授されました。

 

 其の極秘剣の根幹とする処に【剣之柄・刀之柄】の所謂『握り方』を【柄之保=つかのたもち】と称し、御流儀教示の口傳躰傳として伝えています。

 

 『柄之保は御流儀口伝の至極なれば、術の発揮の前に能々学ばれん』と伝承される始発にして究極のものであるとの理解が示されています。

 

 香取神道流に於ける柄の握り方は、(故)大竹利典先生著作の≪平法≫の握り構えの極意の章に於いて『左手は柄頭いっぱいに、小指は外れるくらいにする』と有ります。

           大 竹 利 典 先 生 著 「 平 法 」 よ り

 

 

 天眞正自源流兵法に於いても『刀の柄は、柄上部を抑え右手内を前に、左手内を柄頭に、左手小指が柄頭に半分程かけておく事』と云われています。

 

 この刀柄の御教示は、柄の長さにも関連する非常に重要な流儀の核心です。

 

 元来、刀柄の長さは、握り拳の幅に合わせて『三つの握り』と云われており、握り拳三つ分を以て、刀柄の長さにするという香取神の教えが有ります。

 

 古の時代に於ける日本人の握り拳幅の平均は、大凡8センチなので、その3倍の柄の長さである24センチを流儀に於ける基本として、流儀木刀と刀剣の柄に採用されています。

 

 この柄の長さは、天真正伝香取神道流と天眞正自源流兵法の流儀木刀に於いても、全長三尺二寸、柄八寸、と制定されていて、相伝書に於いては「柄八寸の理」として教示されている教えです。

 

 この「柄八寸の理」の核心を開祖≪小瀬與左衛門尉長宗≫は、六道之序として、天眞正自源流兵法に於ける「極意より入道して極意に帰する」初発の教えとして、伝授されました。

 

 御流儀先代である上野源心は、『刀を振るな・握るな・抜こうとするな、手の内は、生きた小鳥を離さず殺さず、逃がす事無く、自由自在に、剣線に従え、納める時は、心静かに、穏やかに、しごく事無く、神速を以て納めよ』と云われていました。

 

 刀柄に関しては、『柄を握る者は、自由を失い、刀を振る者は、動きを失う、剣は、ひとえに一文字口の教示に従い、無空に剣の動線を描き、その道に従うのみ、柄は抑えよ、柄の保ちは全ての始発也』と教示されています。