人には、禁止されたほうがむしろやりたくなる、という深層心理があります。
「これはやっちゃだめ」と言われると、むしろやりたくなる、という気持ち、よくわかりますよね?
日本の昔話でもよく語られていますね。
『鶴の恩返し』では、「絶対に覗かないでくださいね」と言われたのに、男は覗いてしまう。
あれ、むしろ、そんなこと言われなかったら、どうでしょう?
意外に覗かなかったかもしれません。
『浦島太郎』でもそうです。
「玉手箱を絶対に開けないでくださいね」と言われたから、むしろ開けてしまったのかもしれません。
中高生の喫煙だって、禁止されているからこそ、だと思います。
喫煙することが許されていたら、禁を破る快感がなくなるので、たいして吸いたいとは思わないのではないでしょうか?
このように、人間は、禁止されるとやりたくなるのが人情のようです。
勉強させたいけれど、なかなか素直に言うことを聞いてくれない子どもには、この「禁止されるとやりたくなる」心理をうまく使って導く方法があります。
まあ、「禁止」というほど強く否定することはないのですが、「勉強させてあげない」くらいの態度で接する、ということです。
例えば、テスト前にわざといろいろ用事を言いつけて、
「これとこれとこれを先にやってくれたら、勉強していいわよ」
とか言っちゃうんです。
日頃「勉強しなさい」とばかり言ってる場合は、いきなり態度が変わったところで、お子さんは逆に不信感を抱くかもしれません。
でも、気にせずしばらく続けてみてください。
そのうち、子どものほうから、
「こんなにいろいろやらされたら、勉強できない!」と、
キレてくるかもしれません。
そしたら、決して喜んだ顔は見せず、しぶしぶ、
「じゃあ、今だけ、勉強してもいいわよ」
と言うのです。
まあ、かなりの演技力が必要ですが。
反抗期の子どもにこそ、有効な方法だと思います。
ポイントは、「勉強しなさい」ではなく、「勉強してもいい」という考えにシフトしていくことです。
ここでも、前回お話しした「距離感を大切に」という視点が非常に重要になってきます。
勉強は自分のためにやるのだから、やるか・やらないかはあなた次第、という態度で接することが出来ればうまくいきますが、「勉強させなきゃ、勉強させなきゃ」という思いが強すぎると、無意識の態度や表情に表れてしまいます。
これを書いている途中に思い出したのですが、昔、私の父が酔っ払って「頭がいいだけじゃしょうがない」みたいなことを言っていたのを聞いて、逆に「勉強して頭がよくなってやる!」と決意を固くしたことがあります。
私の父は私のやる気を出させようとして言ったのではなく、本気でそう言っただけだと思いますが、結果的にはよかったわけです。
反面教師の鏡です(笑)
これを意識的にやってみてはいかがでしょうか?
子どもに本気で勉強させようと思ったら、時には演技力も必要、ということです。