お医者様から退院が認められ、娘の自由度はかなり上がった。
目標だった高校推薦入試にも間に合いそう。
私はそれが本当に嬉しかったんだ。
娘の夢が叶うから。
ただ、退院は入試間近になることには間違いない。
2ヶ月間寝たきりだった娘は、体力がかなり落ちているだろうし、歩くことだって急には無理だろう。
高校までは車で送るとして、教室までどのようにして行けば良いのか。
考えた私は車椅子のレンタルを頼むことに決めた。
ただ、この車椅子は結局、全く必要がなかったのだけれど。
お医者様からは、自宅でも安静にし、お手洗い、お風呂も必ず介助をするように強く言われた。
つまり、退院直後の高校入試は、お医者様の立場としては控えて欲しい様子だった。
だけど、お医者様はこのようにおっしゃってくださった。
娘にとって、高校生になることは人生においてとても重要なこと。だから絶対に行かせてあげたい、と。
お医者様に対して、私は疑念を抱いたり、憎しみを抱いていたのにも関わらず、このような温かい言葉をいただいた。
私はそのとき、自分の心の狭さを思い知った。
そして、感謝の気持ちでいっぱいになり、温かい涙が溢れてきたんだ。
今、想い返しても、感謝の気持ちが溢れている。
お医者様はもう私たちのことを忘れてしまったかもしれない。
でも、私は一生、あのお医者様を覚えている。
絶対に。
だって、娘の生命を救ってくださった方だから。
私たちは、本当にたくさんの人から助けられているのだ。
そして同時に、私たちは誰かの心を必ず助けているんだ。
人ってすごい。
人って本当に温かい。