早期退院に向けて、娘のカロリーアップが進んだ。
これまでは、3日完食でカロリーアップをしていたところ、2日完食に変更された。
さらには栄養補助飲料が追加された。
これは一本で200kcalもある。
娘は、この栄養補助飲料を飲むことを非常に嫌がっていた。
味は美味しくないし、食べ物以外でカロリーを摂ることを娘は異常に嫌っていた。
だが、早期退院をしたい、という強い想いから、無理矢理飲んでいた。
だが、いくら退院するためと言っても、心のケアをしていない身体での 、この食事は、娘にとって相当辛かっただろう。
心は泣きながら、苦しみながら、それでも頑張って食べていたのだろう。
結果、退院することは叶ったのだが、このやり方は娘の心をさらに苦しく追い詰めてしまったのだ。
娘は、入院してから、なぜかご飯粒をスプーンで潰して食べるようになっていた。
理由は聴いていないが、もしかすると、食べることへの恐怖を紛らわせる行為だったのかもしれない。
ちなみに、この行動は今も続いているのだが…。
そういえば、この行為を、1人の看護師さんが「やらないで!」と注意をしたことがあったな。
私は、彼女が禁じる理由がわからなかったので「理由を教えて欲しい」と詰め寄ったことがあった。
この頃の私は、病院に対して負の感情しかなかったので、ちょっとした言動にいちいち過剰に反応していたんだよね。
彼女はなんて言ったかなぁ。
「食事は出されたまま食べるのがルールだ。」というようなことをおっしゃった気がする。
私は「娘の食べ方を否定するようなことを言わないでください!」と伝えたんだよね。
めちゃくちゃ感じ悪い母親だよね…。
こんな感じで、私はモンスターペアレントだったんです。
今思うと、本当に申し訳ない。
看護師さんたちには下のお世話までしていただいていたのにね…。
食事量が大幅に増えたのにも関わらず、娘は相変わらず寝たきりの状態だった。
身体を動かすことが許されていなかったため、自力でのお通じが全く不能となっていた。
もともと、入院する前もお通じの状態は非常に悪く、週1回出れば良い方、という感じだった。
入院中は、いつもいつも「お腹が苦しい」と訴えていた。
お医者様に相談をしてお通じを良くする薬を飲んでいたのだが全く効き目がなかった。
このままでは食事に影響が出てしまう…と怖くなり、お医者様に改めて相談をすると「若い女の子には可哀想だけど、浣腸しか手立てはない」と言われた。
娘に聴いてみたところ、何でも良いからどうにかして欲しい…と、もう背に腹は代えられない様子だった。
こうして、入院中は3日おきに浣腸をしていただいていた。
だが、もう娘の内臓は弱りきっていたからなのか、浣腸をしてもスッキリと出ることは一度もなかった。
15歳の女の子が、大部屋で他の患者さんや付添の方がおられる環境で浣腸をされ、そのままベッドの横のポータブルトイレで排泄をしなければならない…
どんなにか恥ずかしく、悲しく、屈辱的な感情を抱いていたのだろう……
それを想うと、今も心がギューっと苦しくなるんだ。
娘は毎日「食べる」ために生きているようなものだった。
私は少しでも娘を楽しませたいと、頑張って話しかけていたけれど、娘はもちろんのこと、私もちっとも楽しいという感情がなかったんだ。
私は、ただ、早くここから抜け出したい、その想いだけで生きていた。
私は、ここから抜け出せれば、明るい未来が待っている、そう考えていたんだ。
でも、摂食障害は上辺だけ取り繕ったって、しょうがない。
摂食障害は、心。
心が安心していなければ、治ることは決してないんだ…。
このときの私は、こんなこと知る由もなかったんだ。