私から見た入院した娘は、ホッとしているような、諦めているような…そんな印象だった。
私も娘も入院に至った理由はわかっているのに、お互いそこには触れないように、触れないように慎重になっている、そんな感じだったな。
娘はとにかく「お腹が空いた」と言っていた。
食事が始まったのは入院四日目。
まずはヨーグルトだけだった。
娘は「美味しい、美味しい。」と感動して食べていた。
それを見た私は、娘が食べることの大切さ、幸せを、この入院で想いだして、摂食障害も治るだろうな、なんて都合の良い解釈をしていたっけな。
娘が入院してすぐに、私は仕事を退職させていただいた。
引き継ぎも何もせずに。
でも、私の大切な娘に毎日寄り添いたいという気持ちだったので、自分勝手ではあったが辞めさせていただいた。
主人は、私のメンタルを支えたいと言って、会社の介護休暇を申請してくれた。
これは本当にありがたかった。
毎日の送迎、家事、医師との面談、たくさん支えてくれた。
入院して四日後、主治医との面談に精神科の医師が加わった。
そして、その医師から再び「摂食障害」であることを伝えられた。
今は低体重で命の危険があるので、このまま内科で危険を脱するまで診ていただくこと。
体重がある程度増えたら、精神科に入ることを勧められた。
ただし、入院期間は早くて六ヶ月、だけれど今の状態を診ると一年は覚悟しておいた方が良い、と…。
ただ、両親が精神科に入院させる、という意思がない場合は、病院側から無理に入院させることは出来ません、ということだった。
私は迷っていた。
精神科に入院させて完治させたい気持ちと、精神科に入院することは娘の精神を崩壊させることになるのではないか…という恐怖で。
そして、もう一つ大きな課題があった。
それは高校受験。
娘は推薦入学を目指し、学校の勉強を、とても頑張っていた。
だが、精神科に入院となると完全に推薦入試には間に合わないし、それどころか一般入試すら受けることができなくなる…。
こんな悲劇があるの…?という感じだった。
私がそのことを医師たちに伝えると、医師からこう言われた。
「お母さん、娘さんは今、命の危険にさらされています。命がなければ高校に行くことも出来ませんよ。」
心臓が信じられないくらいの速さで拍動したことを覚えている。
とてつもないショック状態だった。
高校生になることをずっと夢みていた娘に、高校を諦めることを伝えること。
それに加えて精神科に長期入院をすること。
そんなこと私には無理だ。
そんな体験をしなければならない娘に対して、可哀想だという気持ち。
そして………(この気持ちを書くのはためらいましたが思い切って書きます)
高校生になれない娘を持つ母親だと思われたくない、という私のエゴ。
私のエゴが暴れまわっていた。
最低な人間だと感じた。
娘の命が大切です、高校はあきらめます、と即答できない自分に呆れたんだ。