物置の棚の片隅に置きっ放しになっている古い工具箱の中に、これまた古く錆びたプライヤー(日本で一般的に使われているコンビネーションプライヤー)が入っている事は覚えていた。
それをわざわざ引っ張り出したのは、単に必要に迫られたばかりではなく、蘇らせて再び役に立つようにしたいと思ったからだ。
このプライヤーは、父の物であった。
お世辞にも手先が器用とは言えなかった私の父親だが、日曜大工とか家中の雑事に使用していた事は記憶にある。
そのプライヤーに錆び落としのオイルをスプレーし、ワイヤーブラシで丁寧に擦って磨いた。
ピカピカのシルバー色とまでは行かないが、幾らか黒くシミの残る使い込まれた雰囲気が戻って来た。
磨きながら思ったのだが。
このプライヤーに使われている金属素材は、安っぽい「鋳物」といった手触りではなく、しっかした「鋼」であるという事。
今は、百均でもある程度の種類の工具を揃えられる時代だ。 プライヤーをはじめ、スクリュードライバーにニッパー、形状多彩なラジオペンチだって売っている。
簡便な時代になったなと思う反面、父の時代の様な昔は、ひとつひとつ金物屋でそれなりの値段を払って手に入れていたのだ。 そしてその分、丁寧に使っていたのだ。
錆を落としたプライヤーを手に、ズシリとした重みやカッチリとした嵌合具合に、思わず頬が緩んだ。
ところで。
所持している自動銃のボルトを分解掃除しようと思ったら、へんてこりんなマイナスネジが使われているので作業が滞った。
恐らくはメーカーの、「好き勝手に分解させたくはない」という思いの表れであろう。
一般的な規格品のマイナスドライバーでは、先端部の厚みがあり過ぎてスロットに入らず、回す事が叶わない。
手持ちのドライバーを1本削って、専用工具を自作するか? それともその前に、鉄砲屋さんに外し方を尋ねてみるか?










