自分の為の心理療法
心理療法をしていてチョコチョコ、というより結構感じることがあります。
それはクライアントの為に話している内容が、フッと気づくと今の私自身が抱えている問題についても当てはまる事がかなり頻繁にある、ということです。
当然、心理療法そのものはクライアントの為にしているのですが(実際カウンセリング料も頂いていますし)、でもそれが自分自身にとっても大きな気づき(洞察)になっている事が多いんですね。変な言い方ですが「カウンセラーの私自身がクライアントなんだ ! 」と気づかされる訳です。
ですからクライアントとの会話中何か恥ずかしいような、申し訳ないような、妙な気分でカウンセリングを続けることがあります。
そんなケースの一つとしてこの様なことがありました。
そのクライアント(Tさん-女性-28才)は対人関係が全くダメで、どんな学校に入学しても、成人してどんな会社に就職しても怒りの対象として色々な人から「切れられて怒られる」事がしょっちゅうあったそうです。困ったことにTさんは「何で自分が怒られるか、理由が分かれへん ! 」と、色々な人に切れられて怒られる理由が全く分からず、何か他人事の様にお話されていました。
結構長く根気よくカウンセリングを続けた結果、ようやく「母と自分との間に20年以上前から横たわる深いわだかまり」がある事に気づかれました。
最初は「母と私とは結構仲良いよ、よくオシャベリしているよ」と仰っていましたが、実はその表面的な会話の奥底に母娘とも20年以上手を触れずにいた「母娘間の解決されていないわだかまりがあり、両者ともそれに触れることを恐れ、表面的には仲良さそうな会話に終始していた」事を白状されました。
そしてTさんは勇気をふりしぼってお母さんとその封印された「わだかまり」についてお話をされたようです。わずか10分程の会話だったそうですがお母さんもその「わだかまり」についての心の奥底での自責や葛藤があったのか、充分にその内容は伝わり、新たな母娘関係構築の準備が出来上がりました。
この時、私は心の中で「ハァ~、俺もどうしよう・・・」と、私の母との問題について改めて考えさせられたのです。
今までの母への不義理や親不孝の数々が一瞬にオーバーラップされてきて、「オマエは人のことを云々する事ができるエライさんなんか ! ! 」・・・と、カウンセリングしながら自問自答している自分がそこにいました。
お陰様でこのTさんはその後順調に母娘関係を修復し、ひいては他者との対人関係の構築についても改善できる素地がついてきました。
しかし私は・・・
死んだバアチャンが昔よく言っていました。
「人のふり見て我がふり直せ」って。
やはり昔の人はイイこと言うよな~
カウンセラーになってもう何十年にもなるのに、50をとうに超えたこの年になってようやく気づきました。
心理療法ってカウンセラー自身の為にもあるんですね。
「さあ ! 次は俺の番だ」
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