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健康寿命を延ばす「最強食材」=魚だが…まさかの“寿命を縮めてしまう”「危険すぎる食べ方」とは【京大名誉教授が助言】
魚介類をたくさん食べる「和食」と「地中海食」が、長寿食として注目されています。しかし、京大名誉教授であり、80代で現役医師である家森幸男氏によると、健康的な要素しかない魚にも「不健康になる食べ方」が存在する、といいます。
「和食」と「地中海食」の共通点
魚介類をたくさん食べているのが、日本と地中海諸国であるというのは、示唆的です。
「地中海食」は近年、長寿食として話題になっています。地中海食とは、イタリア、ギリシャ、スペインなどの地中海沿岸の国々の人が食べている伝統的な料理のことで、2014年にアメリカのハーバード大学の研究班が、寿命を延ばす効果があると発表しました。
私たちの調査でも、1985年、世界研究を始めたばかりの時に、これらの国(ギリシャ・イタリア・スペイン・ポルトガル)の六都市に出かけて、24時間尿の採取と健診を実施しました。
これらの24時間尿のデータと健診結果をもとに、長寿食といわれる「地中海食」と「和食」、そして「その他の西欧食」に分けてタウリンの排泄量や健診データを比較すると興味深い事実が分かりました。
ちなみに西欧食というのは、中央ヨーロッパから北ヨーロッパに住む人たちやそこから移住した人たち(スコットランド、アイルランド、スウェーデン、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア)の食べている食事です。
この結果、タウリンは和食で圧倒的に多く、ついで地中海食、そしてその他の西欧食では少ないことが分かりました。
また、血圧は地中海食が最も低く(男性126・女性123)、微差で次に和食(男性128・女性122)、そして西欧食(男性132・女性130)の順です。
コレステロール値は和食が一番低く(男性173・女性174)、次に地中海食(男性196・女性208)、西欧食(男性211・女性222)という順になりました。
和食と地中海食の共通点は「タウリン=魚」にあり、和食は血圧やコレステロールの数値が大変よいことが分かったのです。
寿命を縮める魚の食べ方
ただし、魚を食べてさえいれば、どんな食べ方でもいいというわけではありません。それを端的に示す、面白い調査結果があります。
カナダの北東にあるニューファンドランド島はご存じでしょうか?
世界三大漁場として名高い、漁業の盛んな島です。当然、現地の人は魚をたくさん食べているだろうと思い、私たちはその島で健診をしました。
また、比較のために、同じカナダでも、フランス語圏で食文化もフランスに近い東部のケベック州、モントリオールでも健診をすることにしました。
その結果は非常に意外なものでした。
高血圧は、ケベックが男性15%、女性12%しかいないのに、ニューファンドランド島は、男性が49%、女性が43%と、半数にも迫る勢いです。さらに、肥満の人もケベックは男性15%、女性10%なのに、ニューファンドランド島では男性43%、女性31%もいるのです。コレステロールもニューファンドランド島のほうが数値が悪い。魚の豊富さからいえば、ニューファンドランド島のほうがずっと上だろうに、これはなぜなのでしょうか?
その原因は、魚の「食べ方」にありました。
ニューファンドランド島は、魚が獲れすぎるので、塩漬けに加工して、どんどん北米大陸に輸出します。そして、自分たちも、その塩漬けの魚に衣をつけて揚げ、ポテトフライと一緒に「フィッシュアンドチップス」として、食べるのです。
「脂と塩」は悪魔の“短命コンビ”ですが、この地の魚の食べ方がまさにそれでした。
一方、ケベックの人たちは、セントローレンス川で獲れる魚介を、毎日のように、新鮮なまま、ふんだんに食べています。
24時間尿を調べると、ケベックのほうが塩の摂取が少ない上に、塩の害を打ち消すカリウムを含む野菜も多く摂っています。
同じカナダに住んで、健康によいはずの魚を食べていても、食べ方次第で、天と地ほどの差が出るというよい例です。
また、マグロなどの大きな回遊魚には、海における食物連鎖の頂点に位置しているため、エサとなる小さな魚が持っていた『水銀』を多く蓄積しています。この水銀はメチル水銀に変化しており、メチル水銀濃度が高い水産物を人が摂取すると、神経損傷や神経発達や生殖に悪影響を及ぼす可能性があります。メチル水銀の中毒症状のひとつにハンター・ラッセル症候群と呼ばれる中枢神経症状があり、感覚障害、運動失調、視野狭窄、聴力障害などがその代表的な症状です。また、この水銀は胎児に影響をおよぼす可能性があることも報告されています。
一方、魚と並ぶ重要なたんぱく質源である、牛肉、豚肉、鶏肉などの肉類は、健康によいのでしょうか?
答えは、それも「食べ方による」です。
肉も良質なたんぱく質であるのは事実ですが、動物性脂肪も多く含むので、普通に食べると、コレステロールや中性脂肪の摂取量も多くなるのが一番の問題です。
特に肉の「脂と塩」の悪魔の短命コンビを日常的に摂っている地域は、ほとんどが短命です。
たとえば、岩塩を大きな肉にはたきつけて食べる「シュラスコ」という名物料理のあるブラジル。
羊の肉と塩茶やバター茶を摂る習慣のあるシルクロードのカザフ族。
これらの地域は、脂いっぱいの肉と大量の塩を一緒に摂っているので、心臓死が多くて短命です。
ちなみに、琉球大学大学院医学研究科の益崎裕章教授の研究では、動物性の脂肪には、喫煙やアルコール以上の中毒性があることが、動物実験でわかっています。
動物実験の段階ではありますが、人間社会でも、脂肪が豊富な肉や、ラードの流入によって、たちまち長寿食文化が崩壊に向かうケースが多いことを考えると、非常に気になる結果です。