夜中に物音で目が覚めた。

音のする方へ目をやると、暗闇の中で何かが動いている。

暫くして目が慣れて、動く物体が徐々に見えてきたのだが、シルエットしか見えない。

そのシルエットは椅子の下で、ビニールのような物を漁っていた。


私がビニールを漁る姿を見ていたら、そいつと目が合ってしまった。

そいつは暗闇の中で光る目で、私を見ていた。

こいつだ。



こいつは私と目が合うと、ビニールを漁るのを止め、懇願する様な眼差しで私を見ている。

ビニールの中の物が欲しいらしい。

そこで、ビニールの中の物を一つ取り出して目の前に置いた。

しかし、食べようとせずカーテンの後ろに隠れてしまった。

そして無残に切り刻まれたビニールが残されていた。




こは冷蔵庫に仕舞い忘れた赤ウインナー。

これを棚から引き摺り下ろし、こんな無残な姿にするとは・・・

これではもう食べられな・・・?

何か臭い。

暑い中、冷蔵庫にしまい忘れた為、痛んでいたのだった。

あいつが食べなかったのはその為か?

しかし、ここまでのスリットを入れたら分かるだろうに、何故執拗にビニールに攻撃を仕掛けていたのだろう?

もしかして、あいつ私にこれを間違って食べないようにやっつけていたのか?

普段のボディーガードだけでなく、お毒見までしてくれているというのか?

なんと頼もしい奴だろう。

今日は、赤ウインナーではなくロースハムにしてやろう。