それは、ある探偵社からの下請けの話。
その探偵社からの依頼は、mixiの中であるハンドルネームを持った人と対象者との関係を見つけ出してほしいと言うもの。
情報は、そのハンドルネームと。対象者の本名だけ。
それだけの情報で、そんな事出来るか~!
対象者のハンドルネームも分からない。
同じハンドルネームを持つ人だけでざっと1000人以上いる。
そもそも指示書に「ミキシー」と書いている時点で、mixiがどんな物か知らない。
まあ、「パソコンが壊れた」と呼び出されて、原因がモニターのスイッチが切れてただけ、またある時はパソコンが壊れたと呼び出され、原因はLANケーブルが抜けていただけ、そしてインターネットは自分のパソコンの中に入っていると思っていたと言う機械音痴の人だ。
この人に「ミキシー」を理解させるには、パソコンとは何ぞや、ネットとは何ぞや、ブログとは何ぞや、HPとブログの違いから、インターネットコミュニケーションとは何ぞやを順番に教えなければならず、そんな事はやってられない。
だから、仕方がないと言えば仕方が無い。
その人曰く、そのハンドルネームを使っている人は一人しかいない・・・その人の関係の中では一人しかいないかもしれないが、どんなコミュに参加しているかも分からず、趣味も分からない。
友人設定にしていれば、どんなやり取りが行なわれているのかも分からない。
しかし、その友人設定と言う物が理解できない。
もう、感覚が全く違うのだ。
その人曰く、依頼者もmixiが何かを知らないから、mixiの中で同じハンドルネームを持つ人が何人いるか、友人設定がどんな物かを書けば報告書になる。
まあ、そんな事で仕事になるのなら、お安い御用なのだが、そんな恥ずかしい報告書は書きたくない。
少しでもmixiを知っている人が読んだら「舐めとるんか!」と言われてしまう。
ここが感覚の違いだろう。
少しでも知っている人なら、恥ずかしい内容でも、全く知らない人にすれば自慢できるスキル。
そんな事を胸張って「調査しました」と言っている横には恥ずかしくていられない。
しかも、出資者はパソコン無知だが、対象者を探している人はパソコンオタクだ。
そんな恥ずかしい報告書を出したら、金返せって事になりかねない。
まあ、その話が来た時の最初の一言も衝撃的な一言だった。
「ミキシーという危ない所があるらしいんだが、ミキシーって知ってる?」
お~い!
私のスキルを買ってくれるのは大変有難いのだが、基礎的な事は覚えてくれよ。
盗聴発見の時でも、そのトークは横で聞いてて恥ずかしい。
それを理解させる事も考えたが、理解するのに必要な基礎知識から教えないと理解できないだろうし、その基礎知識の基礎も必要になるだろう。
なので、心の中で突っ込みを入れながら調査をしたりする。
「カーテンを開けてると望遠で見られたりしますから」
お~い!ここは何階ですか~!窓の延長方向に同じ高さの構築物や玉はありますか~!
どんな望遠で覗いても、同じ高さ以上の所からでなければ室内は覗けませんけど~!
そんな高さの所があるんですか~!
さあ、愚痴は吐き出したので、そんな事はグッと堪えて、仕事を回してくれる事に感謝して仕事を請けよう。
有難や、有難や。
集団ストーカー―盗聴発見業者が見た真実 (晋遊舎ブラック新書 1)/古牧 和都