今回は、仕事仲間の話だ。
彼は、元々縫製工場を営んでいたのだが、繊維不況で苦しんでいた。
仕事の体験談シリーズ10で、入札にまで持っていった人物でもある。
彼とは色々と仕事もした、結構気のいい奴で好きだった。
そんな彼が、変わり始めた。
髪の毛は茶色なり、車はベンツに乗り始めた。
取立屋の手伝いを始めたと言っていた。
その時点で「止めとけ!」と注意したが、大丈夫!と言って聞き入れなかった。
フィリピンで日本人相手の店を出すと言って相談しに来たが、失敗は目に見えていた。
それは、現地人のことを知らない人の発想でしかない。
案の定計画は途中で挫折。
その次に、お好み焼き屋を始めたと言って来た。
しかも、工場をたたんで、大枚をはたいて店を買ったと言っていた。
買う前に、相談しろよ!と思ったのだが、後の祭りである。
相談しろよと思ったのには訳がある。
私も不動産出身だ。
何か話がおかしく聞えたのだ。
その物件も、取立屋経由で買ったらしいのだが、抵当権は調べたのか?と言う疑問があったのだが、店を始めてからではもう遅い。
しかも、開業してから一日平均客二人・・・駄目じゃん!
経営のテコ入れしないと、ひと月も持たない。
広告は?メニューは?店の作りは?看板は?のれんは?味は?
私は、不動産会社の前にエアロビクスのゼネラルマネージャーでもあった。
そこにはジュースバー&サラダバーも併設していて、そのオープンを手がけた経験もある。
そんな経験から、いくつかのアドバイスをしたのだが、それも無駄な事だった。
懸念していた事が現実の物となってしまったのだ。
一ヶ月もしないうちに、そこの所有者と言う人が現れて、騙されていた事に始めて気付いた。
そして、私の所に相談に来たのだがもう遅い。
もっと早く相談すればよかった・・・その言葉が虚しい。
金融流れの不動産はよほど注意しなければ買うものではない。
抵当権も第一抵当だけならいいが、第三抵当まで付いている物も珍しくは無い。
そして、彼は結局破産して土地も家も全て取られてしまった。
そして、今後の身の振り方を夫婦で相談しに来た時、何も食べていないと言っていたので、私も金が無かったのだが、ラーメンをおごった。
ラーメンごときで、あんなに感謝されたのは初めてだ。
お互い金が無くても、困った時はお互い様だ。
彼も、進学を控えた子供が3人もいる。
何とか助けてやりたかったが、私もすでに借金生活で援助は出来なかった。
彼も今では何とか生活出来ている。
彼も、私と同じように、あせってしまったのだろう。
しかしこんな事は、今では珍しくない事だ。
シャッター通り。
かつては賑わいのあった商店街が、シャッター通りと化している。
それらの店主にも様々なドラマが有ったのだろう。
苦しいのは自分だけではないと思える風景だ。
それもまた「強者どもの夢の跡」・・・