そのいじめっ子は、小学生の頃から怖い物無しだった。
その原因は、母親にある。
その母親は、今で言う「モンスターペアレント」だった。
自分の子供が、喧嘩で怪我をして帰ってくれば、有無を言わさず相手の家に乗り込んで、一方的にまくし立て、誰かを傷つけても「うちの子に限ってそんな事はしない」と反省もさせない。
そんな親に育てられれば、子供に怖い物は無くやりたい放題だ。
中学に入る頃には、手を付けられない様になっていた。
先生には平気でナイフを投げ付け、クラスメイトは恐怖に脅えていた。
そいつは、いつも目をギラギラさせ、まるでナイフのような雰囲気を持つまでに成長していた。
しかし、中2の時に更正施設へ入る羽目になり、風邪の噂でヤクザの世界へ入ったと聞いた。
それから20年、そいつが町に帰ってきた。
しかし、薬中で廃人になっていた。
ナイフのようなあの雰囲気は、見る影も無く、いつもよだれを垂らしながら空を見つめ、意味不明な笑いを浮かべながら徘徊していた。
子供を守りたいと言う親心は分かるが、その親心が子供を廃人にしてしまった。