今年の慶應ビジネススクールのファミリービジネス講座の成果①後継者の修行の方法
今年の慶應ビジネススクール(KBS)での「ファミリービジネス実践論」が先週で終了した。全18回で2単位だが、受講生は「ファミリービジネスの2代目、3代目の後継者」に絞って20名強だTた。KBSにはこういう属性の人はこの2倍くらいいるし、老舗の子弟もいるので、やはりファミリービジネスの後継者の割合は他に比べかなり高い。
2代目、3代目にこだわっているには当然理由があって、この世代が日本のファミリービジネスにおいて「弱い」からだ。これは日本のみならず、世界的にも同じだ。私の知り合いのドイツ人の教授が「3代目が弱いという諺は世界の27国にある」という研究をしているが、この数はどんどん増えているそうだ。
もちろん、創業した一代目である親は、2代目、3代目となるうちに会社がおかしくなる可能性を熟知しているので、2代目、3代目をKBSのようなところに出して勉強させる。慶應でもファミリービジネスに特化した講座はこの講座しかないので、私がその人々の受け皿にならねばならない状況だ。
今年一番問題になったのは、大学を卒業した後に「大手企業で修行するか、すぐに家業に入るか」だ。結論は永遠の課題というところだが、面白いのは中国からの留学生は「そんなことは問題でもなくて、家業にすぐに入って一日も早く仕事を覚えるべきだ」という。確かにその通りだが、日本では家業をすぐに継ぐと「都落ち」のように思われる傾向がある。
やはり、日本ではまだまだ大企業に就職する人の方が、家業を継ぐ人より優秀だ、と思われる傾向がある。この背景には私が常々言っている「日本ではファミリービジネスが下に見られ、イメージも悪い」ことと無縁ではない。欧米のようにファミリービジネスが正当に評価され尊敬されていれば、日本のように余計な回り道をしなくてすむ。これにより日本の競争力も削がれる可能性があるのが問題なのだ。
もっとも、銀行などに入って一見遠回りをしても、それがゆくゆく活きてくることもあるだろう。しかし、全くの時間の無駄のケースもあろう。自分の家業で求められる能力と、銀行などの大企業で求められる能力は違うことが多いからだ。
またそういうことを考えることに2代目、3代目は相当の時間と労力をかけている。さらに、就職の内定をもらうまでに面接やその準備などで、相当な時間を取られている。この時間を家業のことに費やしていればと思うと切ない。それが日本のファミリービジネスの競争力に影響もしているだろうから、早く、正しい理解、欧米のように尊敬される存在になることが急務だろう。