誰もが困る後継者問題②ーいい世襲とわるい世襲の違いは? | 日本ファミリーオフィス協会

誰もが困る後継者問題②ーいい世襲とわるい世襲の違いは?

日本のマスコミはなぜか「世襲」という言葉に嫌悪感を持つ。マスコミは世間の風を読むので、つまり日本全体が「世襲」にアレルギーを持っているということだ。これは日本人独特の嫉妬心にも関係するが、当然、世襲にも「いい世襲と悪い世襲」がある。

 

マスコミは「いい世襲」を取り上げることがなく、報道されるのは全て「わるい世襲」ばかりだ。これでは一般人も「世襲は全てわるい」と感じてしまうが、冷静に考えると世の中の半数以上の世襲は「いい世襲」だ。そうでないと日本には長寿企業など存在しない。日本は世界一の長寿企業大国でもある。

 

世襲で最悪なのは、最初は世襲批判もあるので息子に継がせないと公言しながら、晩年になって突如「親心」を出し継がせる例だ。これでは継いだ息子の方も、準備もしておらず悲惨な結末を生むことが多い。ダイエーがいい例で大塚家具など、マスコミを騒がしたのはほとんどこの例だ。親の代で創業し、事業承継に慣れていない事情もあるだろう。

 

他方、最初から継ぐべき人が決まっていて、幼いころからそういう教育を受けてきた人は最初は「世襲批判」を受けるが実績で批判をなくすことが多い。トヨタがその例で、ほとんどの長寿企業はこの例だ。たまには大王製紙のギャンブラー息子のような例もあるが、これは子弟の金銭教育を怠ったためだ。

 

日本の伝統芸能の能や歌舞伎はまさに「世襲」だ。同様に、変化の少ない経営環境にある老舗もほとんどが世襲だ。その方がうまくいくと経験的に分かっているからだろう。他方、変化の激しいIT業界などは世襲では対応できないだろう。

 

こうしてみると、「世襲がいい業界とわるい業界」があることにも気づく。政界だって世襲批判は強いが、自民党の上層部で活躍している人のほとんどが2世議員というのも不思議ではある。世襲が成功するかどうかは「業界」と「親の教育」だと考えているが、まだまだ日本では全体として世襲が幅を利かせそうだ。