昨日の日経新聞の柳沢幸雄前開成校長の話ー5月に北鎌倉女子学園で詳細を聞く
昨日、日経に柳沢さんのインタビュー記事が出ていた。とはいっても字数の関係で背景がよくわからない内容になっており、要は「1000人の令和版遣唐使を出せ」ということだが、その背景はこんなことだ。
そもそも、柳沢さんとはハーバードに行った30年以上前に「ハーバードで地球温暖化の研究をしている日本人がいる」と聞いて会ったのが最初だ。その後、アメリカにいた2年間お世話になって、東大に移った後も時々お会いしていた。息子が大学に入った報告もあり、5月の連休明けに、柳沢さんの現在の職場である北鎌倉女子学園に行き、たまたまこの話を聞いた。
背景は柳沢さんが東大の蓮見総長の時代に、総長の補佐として大学改革にあたっていた時代に遡る。もちろん、ハーバードでの教職の経験を買われて東大改革に携わったのだ。ところができたことは「60歳定年を65歳に伸ばした」ことだけだったという。私は「それだけでもすごい」と言ったのだが、何と東大の60歳定年制は大正時代に定められたものだそうだ。
東大に限らず大学改革は至難の業だ。秋学期制を導入しようとした東大浜田総長もひどい目にあった。大学の教授は、その仕事柄いろいろな理屈をつけて改革に抵抗してくるので(ある大学のオーナーに言わせると大学教授は「屁理屈を考える天才」だそうだ)、現状維持になってしまうことが多い。
柳沢さんはその経験から「大学は供給側(大学自身)が自ら変わることはなく、需要側(学生側)の圧力からしか変わらない」という名言を吐露した。需要側を変えていくには現状の留学生数では話にならず、1000人規模の留学生を出すことで、その少なくとも半数は帰国して大学に戻ってくる。彼らは世界標準の学びを日本に持ってくるので日本の大学も教授も変わらざるを得なくなる。これしか日本の大学を変える方策はないという。
なかなか柳沢さんらしいシャープなアイデアだが、奨学金の手当の問題や、そもそも今の日本でそれほど多くの優秀な学生が留学を望んでいるかという問題もある。がしかし、これほどのドラスティックなことをしない限り「日本の大学は変われませんよ、世界から取り残されますよ」というのが柳沢さんのメッセージであり、私も全面的に賛同する。