超富裕層はなぜ相族で揉めるのかー古い日本の家長制度と新しい民法のはざまで
昨日は伊藤公一さん(エール大日本同窓会前会長)にお会いし、超富裕層の悩み、トラブルについて伺った。やはり、それは「相族問題」だった。伊藤さんの知る限り、超富裕層はほとんどが相族のときに揉めるそうだ。それはなぜなのか。額が大きいからかと伺うと、「それは違う」そうだ。
まず、日本では昔から家長制度があり、長男が何でもしなければいけないという暗黙の了解がある。家族間の揉め事も長男のところにくるし、親の面倒も、親の葬儀も全て長男の役目だ。しかし、新しい民法では兄弟は皆相族分は基本的に平等だ。これでは長男に不満が起きる。
また、この「平等」というのが曲者だ。相族財産が全て現金だったら、平等に分けられるが、超富裕層は株や不動産の割合が多いので、これを公平に分けるのは不可能だ。誰かに不満が出て、さらに相族額も大きいため、通常はトラブルになることも分かる。
通常人から見ると、たとえ少々の不平等はあっても、20億円が18億円になったくらいなら、いずれにせよ一生、生活する分はあるのだから問題ないと思うのだが、当の本人は違うらしい。20億円入ってくるのが当然と考えると、たとえ100万円でもそれより少なければ、人間って文句をいう動物らしい。理屈ではないのだ。
そうだとしたら、必ず超富裕層の相族は揉めるだろう。これは大変だ。私のお客様でも今後、相族が当然起こるので、今からその対策(あるいは心の準備)をしておかないとまずい。何とか、自分のお客様には問題が起きないようにするのもファミリーオフィスの大事な仕事だ。
それでも、相族問題の本質が気持ちの問題だったら、これはやっかいだ。お金で解決できればまだ単純だが、気持ちとお金が複雑に絡まっていると、それをほぐすのは相当な難関だ。少なくとも、事前にできることはやっておくしかないだろう。