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(前項よりの続き)
ギャリソンの著作『JFK:ケネディ暗殺犯を追え』ではクレイ・ショー裁
判において事件に陰謀が存在した証言が相次いだと説明されている。
例えば、裁判に出廷した証人六人、リチャード・カー、ウイリアム・
ニューマン夫妻、ジェームズ・シモンズ、メアリー・モーマン夫人、
フィリップ・ウイルス夫人がノールから銃声がしたと証言したという。
ノールから銃声があったと証言した人が多くいたことと、そこから狙
撃があったことは必ずしもイコールではないが、本を読んだ人は皆、
この記載を信じただろう。
だが、裁判の記録を読み各種資料から目撃者の位置を知ると事実
がひどく異なっていたことがわかる。
リチャード・カーはノールから180メートル離れたビルにいたが、この遠
距離で聞こえた銃声ならそれこそデイリー広場にいた全員がノールか
らの銃声を聞いただろうが、陰謀説が圧倒的に有利な暗殺研究業界
でもそんな話は誰もしておらず、証言には一片の信憑性もなかった。
ニューマン夫妻はケネディと目と鼻の先におり、共にノ―ルからの狙
撃を証言していたが、彼らは「自分たちの真後ろ」から銃声がしたと説
明しており、同じノールでもそこは柵の後ろでなくコンクリート建造物の
後ろでそこに狙撃者がいたら四方から丸見えだが、誰も目撃していな
い。
シモンズの証言には不審点はないが、モーマン夫人は銃声について
一切質問されておらず、自ら語ってもいない。
ウイルス夫人の夫フィリップは銃声は自分の右の方(倉庫ビルの方)
からと証言したため、検察側から「倉庫ビルはあなたから見て右では
ないですよね」と問われ、「は?」と回答に詰まり「右ですか?」と問わ
れて「そうです」と証言し、ウイルス夫人も銃声は前(こちらも、倉庫
ビル)からと証言しているのだ。
「ノールから銃声がしたと裁判で証言した人が六人いた」という話の細
目は実際にはこうだった。
・信頼すべき証言は一件のみ。
・遠すぎて銃声が聞こえないため、信頼できない証言が一件。
・同じノ―ルでもコンクリートの後ろという、信憑性の無い証言が二件。
・未回答が一件。
・ノールからの銃声を否定した証言が一件。
そして、ギャリソンがおそらく故意に省略したのは
・証言者の近くで事件を目撃していた証人の夫の、ノ―ルからの銃声
を否定した証言が一件。
いくらなんでも、該当裁判を担当した検事が自分の回想録内で証言
内容を捏造して記載するとは誰も思わないだろうが、これがギャリソン
の現実だ。
ギャリソンの本のデタラメな部分は他にも膨大にあり、まともな人間が
書いたとは思えない内容で、ボケ老人が酒でも飲みながら適当に空想
して書いたとしか思えないヨタ話満載であった。
実は、ギャリソンの本は当初大手出版社から出る予定だったが、ゲラ
のチェックをした研究家シルヴィア・ミェーガーがダメ出しをしたため出
版が見送られ、小出版社がら出た経緯があった。
だが、事件に関して専門知識の無い一般人やオリヴァー・ストーンや
日本人の自称暗殺通たちは彼のことを賞賛し続けるという漫画以下の
笑える事態が発生し、映画化が決まり米大手出版社ワーナー・ブッ
クスからペーパーバックが出て全米ベストセラーになる悪夢のよう
な事態が起きてしまう。
ギャリソンはその拙い手法のため裁判で惨敗したが、それ以上に拙
い手法で書いた本が大ウケし見事世間で逆転勝利したのであった。
(まだまだ続く)