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大統領が前から撃たれたという見地は、陰謀説最大の根拠だ。
公式説ではオズワルドが後方から三発撃ち大統領にニ発命中した
とされていたため、前方からの狙撃があった場合第二の狙撃者の
存在が証明され、陰謀の証明となるのである。
だが、今も多くの人が信じるこの説は可能性ゼロの荒唐無稽な
ものだったことが現在までに判明しているが、それは事件当時で
さえ明らかなことだった。
事件の三十年後の1993年前後から、現場デイリー広場におけ
る狙撃再現とそれに伴う弾道確認が頻繁に行われるようになり、
それぞれ手法は違えど、アメリカ弁護士協会、アソシエーテッド・
テレビ、ABCテレビ、ディスカバリー・チャンネル、ヒストリー・
チャンネル、ナショナル・ジオグラフィック・チャンネル等を始め
としたテレビ局や各団体が弾道再現を行ったのである。
レーザー光線の発射装置をライフルに見立てて、ケネディ役の
人形に受信装置を設置して弾道再現する手法、夜間に現場でパ
レードを走らせて光線銃で撃つ弾道再現、CGによる弾道再現、
狙撃手を各地に配置して銃眼を通してパレードを見る弾道再現、
各地点からの肉眼目視等により網の目のような弾道チェックが
行なわれた結果、以下のことが判明している。
・「右斜め上前方の、グラシー・ノ―ル」から撃った場合、弾はケ
ネディの右側頭部に命中し、左側頭部に抜ける。
・「前面の斜め右上の、陸橋の袂」か「前面の、歩道部分」から
撃った場合、陰謀説に近い弾道は可能になるが、陸橋には
人がいて袂で狙撃準備はできず目撃者も出るが、その報告
はなく、歩道上はあらゆる位置から丸見えで狙撃手は配置で
きず、目撃談もない。
・「前面右斜め下の、雨水穴」から撃った場合、狙撃手からケネ
ディの姿が見えないため、狙撃自体不可能。
・「真正面斜め上の陸橋」から撃った場合、喉への弾道は角度が
浅いためフロントガラスを貫通するが、そのようなことは起きてい
ない。狙撃手が橋の中心部か前から見て左端以外の位置では頭
部への弾はフロントガラスを貫通するが、そのようなことは起きてな
い。仮にその地点にいても、右前頭部をかする弾道にしかならない。
また、橋の上には警官二人を含む十四人がいたが、誰も近くでの狙
撃を証言していない。事件直後に撮影された写真とフィルムにも狙撃
者は写っていない。
重要なポイントは、ケネディの乗ったリムジンのフロントガラスがケネ
ディの頭頂部より高かったことだ。弾がフロントガラスを貫通していない
ため、彼が前から撃たれたとすれば、弾は真正面でなく前面の上か左
右から来たことになる。先のテストがその全ての可能性を否定したた
め、前方からの狙撃の可能性はゼロになり、陰謀説は事実上死亡した。
前方狙撃説の致命傷になったのは、弾道が全く異なることと、前方に
は狙撃手が隠れる場所がないことだった。
各種テストの映像を観ると、答えは端から明らかで単純明快なもので
あったことがわかる。事実、1975年のロックフェラーCIA国内活動調査
報告書は事件を扱った章でこう説明している。「ノ―ルからの弾は大統
領の左側頭部に貫通するが、そのようなことはなく、狙撃者がいた可
能性は無い。大統領を真正面から撃てるのは前面の路上だが、そこは
丸見えでこの可能性もない。フロントガラス越しに撃てるのは前面の橋
の上だが、そこには警官や聴衆がいて、狙撃は不可能だ」(意訳)と
言うが、事実その通りだった。
90年代から現在までに至る現場検証の結果のほぼ全ては、既に
半世紀前にウォーレン委員会が指摘していたことばかりであり、暗殺
研究家たちはあれほど軽視していたウォーレン委員会の前に惨敗し
たのである。
研究家(注・研究家の事実上全員は陰謀アリの意見)のほぼ全員
が各種実験の結果を無視したため、暗殺研究書を読み彼らのホーム
ページを見ても「前方からの狙撃はあり得ない」話は出てこない。極少
数の例外に各種実験の不備を指摘する者もがいたが、それは瑕疵に
過ぎず結果を否定できるものではない。さらに少数の研究家が本当
のことを認めついにギブアップして「前方からの狙撃は無かった」と明
言している。もっと少数の、たった一人の研究家だけが「狙撃者はオズ
ワルドだ」と認めている。
暗殺研究家たちによる、徹頭徹尾の情報封鎖と隠蔽が行われたわ
けだが、彼らにとっての最重要機密は、1998年に現場で行われたレー
ザー光線で弾道を再現する実験だった。ネットの動画で「LASER
TEST」「ROBERT GRODEN」と入力すればいくつかの映像が出てくる
から、視聴するのもいいだろう。
検証チームにはレーザー光線のエキスパート、解剖学の権威、弾道
再現の専門家等、錚々たるメンバーがおり、実験映像を観る限り、皆が
皆、陰謀の存在とノ―ル及び前方からの狙撃を信じていたようだ。
だが、レーザー光線の送受信機を駆使し、現場を走らせたリムジン
にケネディとコナリーを模した人形を乗せて受信機を傷口に刺して弾
道確認した結果、「ノ―ルからの狙撃は排除される」ことがあっと言う
間に判明し、「前方からの狙撃もあり得ない」こともわかり、彼らは
「倉庫ビル六階からの狙撃は可能である」ことまで認めざるを得なく
なっていたのだ。
この時、「パレード左後方のダル・テックスビル二階からの狙撃の可
能性を排除できない」ことも確認されたが、ここからの狙撃の証拠はな
いため、あまり意味のない結論だった。
映画『JFK』の技術顧問にしてザプルーダー・フィルムを世に出した
暗殺研究業界の古参の大スターが、「ノ―ルの狙撃者はいない」
「前方からの狙撃は無い」「単発説は誤りではない」と認めたわけだ
が、陰謀説仲間が”裏切った”ためか、この実験に関して批判的に
さえ言及した暗殺研究書は絶無に等しかった。
(この項続く)
