タジツはなんとか少年院に行くことはなかった。
しばらく謹慎のつもりで親が学校を休ませたが、休んで立ち直るとは思えなかった。
タツジの顔をどうしても見たくて、自宅に電話をして訪問することになった。
家庭訪問は、4月下旬の予定だが、一足先の訪問だ・・・・
さすがヤクザの組長の家・・・大豪邸だった・・
門には「組」の若い衆が二人立っていた・・・
恐る恐る・・・「すみません・・・タツジくんの担任ですが・・・・」
挨拶が終わる前に・・・「どうぞ・・・・」と丁寧に玄関まで案内してくれた・・・
私が来るのを知っていたようだった。
タツジの父親が出て来た・・・迫力ある顔にびびった・・・
突然・・・頭を下げて・・
「先生・・・・ありがとうございます・・・」
驚いた・・・
「先生の手紙のお陰で、少年院は免れたようです・・
先生のお陰です・・・・あんな息子ですが、やはりそばにいて欲しいし・・・・本当にありがとうございました・・・」
一方的な話と父親の迫力ある顔に押されっぱなしでなんのことか最初は意味が伝わらなかった。
「どうぞ、上がってください。タジツも呼びますから・・・」
15畳はありそうな居間に通された・・・・高価な壺があった・・
掛け軸も高価そうだ・・・美術教師の血が騒いだ・・・・
「先生・・・・ありがとう・・・」
素直なかわいいタツジだった・・・でもやっぱり体はでかい・・
和服を着た母親が、丁寧に頭を下げた・・・
「先生のお陰です・・・ありがとうございました」
そんなに、あの手紙の効果があったのか???不思議だ・・
そしてタツジが話し始めた・・・
「裁判所の人が先生の手紙を見せてくれたよ・・・・ウソばっかっり書いてたね・・・俺、そんなにいい子なわけないだろう・・・
でも裁判所の人も・・・これは担任の先生の君に対する願いだってさ・・・そんなこと親にも言われたことないし、だれからも言われたことない・・・・」
確かにタツジへの思いを切々と書きこんだ・・・・タジツが立ち直って、少しでも周りの人たちに愛される子になって欲しいという願いを込めていた・・・・
愛されて育った子こそ・・・
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