2024年のパスオーバーが終わった。

 

昨年のパスオーバーについてはこちら👇

 

パスオーバーは、エジプトで奴隷だったユダヤ人を、神様のお導きにより、モーセが率いて自由の民となったことを祝う祭日で、8日間続く。

 

モーセが海の前に立って杖を天に掲げたら海が割れ、ユダヤ人が無事に脱エジプトできた、という話は有名なので、知っている方も多いのではないだろうか?

 

 

この脱エジプトを祝う、8日間である。

 

この8日間は、パスタ、パン、ピザ、クッキー、ケーキなどChamez(ハメツ)と呼ばれる、小麦粉を使ったものは一切食べてはいけない、という決まりがある。私たちのようなアシュケナージ系ユダヤ人は、「間違えやすいから」という理由で、豆類や米類(キトニオート、という)も食べてはいけないので、(セファルディ系のユダヤ人はOK)ご飯も味噌も醤油も食べられない。日本人の私には切ない一週間。(笑)

 

その代わり、マッツァと呼ばれる、四角い大きなクラッカーのようなものを食べる。これは、「脱エジプトのときに、急いで荷支度をしたので、パンが発酵して膨らむのを待つ時間がなかった」という象徴である。

 

👆ユフダが出している、このマッツァスタイルのクラッカーが美味しい。

 

パスオーバーのハイライトは、何と言ってもSeder(セダー)。最初の2晩行われる、儀式的ディナーだ。

 

👆セリーナ・ゴメスの彼、ベニー・ブロンコ(左)はユダヤ人だから、セリーナを連れてセダーを行っている様子をインスタにアップしていたわね。

 

とまれ。

 

今年のパスオーバーについて、備忘録を書いておこうと思う。

 

今年のパスオーバーは

 

4月22日(月)日没~、4月30日(火)の日没まで

 

であった。

 

4月22日(月)日没:セダー1日目(労働禁止)

4月23日(火)日没:セダー2日目(労働禁止)

4月24日(水)日没:祝日中日1日目

4月25日(木)日没:祝日中日2日目

4月26日(金)日没:祝日中日3日目(安息日)(労働禁止)

4月27日(土)日没:祝日中日4日目

4月28日(日)日没:後半の祭日1日目(労働禁止)

4月29日(月)日没:後半の祭日2日目(労働禁止)

4月30日(火)日没:パスオーバー終了

 

祭日最初の2日間(セダーの2晩、3日)と、最後の2日(2晩、3日)は、例年通り主人の実家へ。日曜日に向かって、最後の準備&ベディカハメツ(パスオーバー直前に行う、最終チェック)をみんなでやって、無事にパスオーバーを迎えた。

 

日没から始まるパスオーバーの午前中に、ベディカハメツで見つけたハメツ(小麦粉類)を燃やす儀式がある。


2024年パスオーバー前のハメツを前にポーズするクアちゃんとルシュキちゃん。


今年96歳のおじいちゃん(主人の祖父)、87歳のおばあちゃん(主人の祖母)は、毎年主人の実家でセダーに参加するのだが、今年は義理の母の弟のところで過ごすことになり、初めて二人がいないセダーとなった。

 

「ハガダ」という本を読み進めながら、ディナーを食べ進めていく。そこに、この2晩のディナーが「セダー」と呼ばれる理由がある。セダーとは、「順番」という意味だ。順番どおりに食べ進めていくから、「セダー」。

 

私が毎年セダーの時に使うハガダは、こちら👇

 

 

これ、とっても便利なの。なぜって、

 

Transliteratedといって、ヘブライ語の読み方が、英語で併記してあるから。さすがにもうヘブライ語を読めるようになったが、やっぱり助かる。

 

セダーは、子供たちも参加して、歌を歌い、アフィコーマンというマッツァ(パスオーバーで食べるクラッカーのようなもの)の割れた一部を隠して、プレゼントと交換するよう交渉したりするのが、醍醐味だ。

 

最初のセダーが始まるのは夜の8時半頃、2日目に至っては9時過ぎで、セダーを終えるには3時間くらいはかかる。つまり、夜中を過ぎる。だから、「除夜の鐘を聞くまでは起きてる!」と頑張る日本の子供のように、「セダーを最後まで起きて参加する!」というのは、ユダヤ人の子どもにとってはただ事ではない。

 

👇これが、セダーの順番だ。 

 

カデシュ👉ウルハツ👉カルパス👉ヤハツ👉マギッド👉ロフツォ👉モツィ👉マッツォ👉マロア👉コレイフ👉シュルハンオレイフ👉ツォルン👉ボレイフ👉ニルツォ

 

この中の、「シュルハンオレイフ」がいわゆるディナーで、ここに来るまで1.5時間くらいはかかる。なので、セダーが始まる前に何かを食べておかないとお腹がすく。

 

今年、ルシュキちゃんは7歳、クアちゃんは5歳。保育園も合わせると、ユダヤ教学校へ通ってルシュキちゃんは6年目、クアちゃんは3年目である。

 

今の本格的なユダヤ教神学校へ通って、ルシュキちゃんは2年目、クアちゃんは1年目だが、子供たちの成長にはそれはそれは目を見張るものがあった。

 

まず、クアちゃんは、セダーの順番であるヘブライ語の歌を大きな声で歌い上げ、みんなを驚かせた。

 

 

クアちゃんが学校で作ってきたパスオーバーのあれこれ。


2人とも、おじいちゃん(主人の父)と交渉して無事にアフィコーマンのプレゼントをもらえることになった。

 

今年のセダー1晩目は、とても不思議だった。

 

ユダヤ人には、トーラーの規律を守るユダヤ人と、そうでないユダヤ人がいる。超正統派、現代正統派、保守派、改革派、などとグループや派があり、それぞれ守り方のレベルや仕方が異なる。それでも、皆ユダヤ人として結束している。

 

主人の家族は、モダンオーソドックス(現代正統派)と呼ばれるグループに属していて、安息日やコーシャーを守っている。なので、兄弟姉妹は全員、モダンオーソドックスのユダヤ教神学校で幼稚園から育った。


ところが、みんな大人になって、今でも規律を守っているのは、主人一家(私たち)と、妹一家の2家族だけで、それ以外の兄弟は全員、全く規律を守っていない。彼らの子供たちは公立の学校へ通い、ヘブライ語も知らない。ユダヤ教の祭日で家族が集まるときにはやってくるが、伝統を楽しんだり、その由来を知ったりと言った興味は全くない。

 

セダーの1晩目、そんな弟一家が、子供たちを連れてやってきた。が、全く興味がないし学んでいないので、一緒に楽しむことができない。しかも、彼らは公立学校へ通っているので、明日は普通に学校がある。それでなくても遅くから始まるセダーの夕食が始まるのは深夜に近い。だから、「とにかく早くディナーであるシュルハンオレイフにたどり着かないと!」というのが全員の目的になってしまって、ゆったりとセダーを楽しむことができなかった。


ルシュキちゃんは、セダー中、ずっと黙っていた。「歌おうよ!」と言っても、黙ったまま、何も言わず、ただ、自分の作ったハガダを眺めているだけだった。


ご飯を食べたら、弟一家は即座に帰っていった。


ルシュキちゃんは、この弟一家の長男が大好きなのだが、彼らが去ったあと、ぼそりと、「●●くんは、セダーに全く興味がなさそうだった」と、残念そうに言った。


だから、黙っていたのか。


私はとても切なくなってしまった。ルシュキちゃんのユダヤ教への愛、ユダヤ人としての誇り、学校でパスオーバーについて一生懸命勉強してきた努力、今夜が最初のハイライトという晩、そうした興奮と楽しみをそがれてしまったようで、切なかった。


だから、


「そういう子もいるよ。でも、ルシュキちゃんはルシュキちゃんで楽しめばいいんだからね。明日の晩はもっと楽しもう!」


と言った。


そして迎えた2晩目。2晩目は、主人の両親と私たち一家だけだった。だから、ルシュキちゃんとクアちゃんは大きな声で歌を歌い、学んだことをすべて思いきり、遠慮せず、出し切りながらセダーを進めることができた。


クアちゃんも頑張ったが、ディナーが終わってセダー後半の「預言者エリヤフを迎え入れる」の前に、限界が来て寝た。(翌日目が覚めて、「エリヤフが来るのを見られなかった」とがっかりしていた。

 

ルシュキちゃんに至っては、最後まで起きて参加した。自分で作ったハガダを読み進めて。

 

学校で作った、全部ヘブライ語で書かれた「ハガダ」。



「ハッガヤ」という最後の歌を歌い終えたとき、ルシュキちゃんは、自分でも信じられない!という笑顔で喜び、興奮していた。

 

あまりに素晴らしい参加だったので、おばあちゃん(主人の母)が、「アフィコーマンのギフトを3つにしてあげるわ!」とボーナスをもらった。(笑)

 

ルシュキちゃんが選んだアフィコーマンのプレゼントは、レゴのブリックヘッズ。



クアちゃんが選んだのは、モンスタージャムのジャンプセット。デカっ!



とまれ、今年も無事にセダーが終わって本当に良かった。二人の逞しい成長が、本当に嬉しかった。


中日と安息日は、これまた例年通りペンシルベニア州にあるウォーターパーク、グレートウルフへ行ってきた。新しく建てられたヴィラには、グリルやキッチンがついていて、パスオーバーにはとても助かった。ベビーシッターのはなちゃんが一緒に来てくれたので、比較的ストレスなくパスオーバーを過ごすことができた。



これが、今年のパスオーバーメニューの記録。



来年はますます二人とも成長するんだろうな。来年のセダーが、今からとても楽しみである。