この本は、今の私のメンタルで、手にとって良いのか迷った。

作家の山本さんが、自分の死までを綴る記録だ。重すぎる。

 

でも、私がまだ輪郭も描けていない、得体の知れない怖さを、プロの作家は、上手に綴っているはずなので、そこをつかみたくて読んだ。あと、私は癌患者初心者すぎて、「死」はそこまで近くにいない。目の前の、手術の痛さとか、chemoの副作用の方が、よっぽど身近に怖い。だからきっと大丈夫。まだ自分に引き寄せては考えられない。

 

帯に書いてある文章がもう秀逸なので、なぞっておきます

 

「私の人生は充実したいい人生だった。

58歳没はちょっと早いけど、短い生涯だったというわけではない。

どんなにいい人生でも悪い人生でも、人は等しく死ぬ。

それが早いか遅いかだけで一人残らず誰にでも終わりがやってくる。

だから今は安らかな気持ちだ…。余命を宣告されたら、そういう気持ちになるのかと思っていたが、それは違った。

そんな簡単に割り切れるかボケ!と神様に言いたい気持ちがする」

 

 

 

人は必ず死ぬ

いつ死ぬかは誰にも分からない

死ぬまでは生きている

 

 

なんでか、関西弁で話すカナダ人設定がいいなあ。

すんごいラフで、大雑把で、でも愛に溢れている看護師さんや友人達。

 

そして異国だから、自分が全部一人でできないと自覚できるからこそ、

どんどん周囲の応援を受け入れ、チームのようになって治療を進めていく感じが、

文化の差を感じられる内容が好きでした。

 

カナダには愛があり

日本には情がある、

ってこれ読んだ友人が言ってたけど。確かに。

 

 

日本の看護師さんたちに初めて接して、

私は彼女たちの笑顔と優しさに癒されまくっています。

 

今回の自分の病気は、一人で抱え込むには大きなタスクなので、私も躊躇せず、家族だけじゃなくて、

どんどん周囲に助けを、ヘルプを出していこうと思った本でした。

 

 

起こっていることを、どう捉えるかで、事実は変わるから、チャンスと思え、って要約でいいかな。

何かをこの逆境から学べるか、って思えば、プラスになる。

 

Yesterday is history

Tomorrow is mystery

Today is a gift

だから、先のことに怯えて、今生きているこの瞬間を、蔑ろにするのは勿体無いよ。人は死ぬ前で生きているんだから、

 

という、スーパーポジティブメッセージをいただきました。

2023年7月30日

 

50年も生きていると、いろんなことは、既視感に溢れてくる。

ところがどうだ。この2週間は、全部が初めて過ぎて刺激が強く、私の頭はぐるぐるぐるぐる考え続けている。だから文章もとめどなく出てくるが、熱が治まって気分良くないと、画面に向かう気力が出ないので、夜中に考えていたはずの、あんなことやこんなこと、は、どんどん記憶の彼方に流れてしまっている。無念。

 

 

さて、病院では、毎回名前を呼ばれる。点滴を受ける時。食事を配られる時。「T.Rさん」「x年x月x日生まれのT.Rさん」と。

 

でも。私の普段の実生活の名前は、結婚前の名前をそのまま押し通してきているので、「A.Rさん」なのだ。「T.Rさん」になるのは、それこそ、歯医者に行った時と(ほぼ病気知らずなので病院行かない)、区役所の窓口に行った時、パスポート。そのくらい。だから、私のアイデンティティは、圧倒的に「A.R」

 

なのに、この数日間、畳み掛けるように、「TRさん」と言われ続け、別の人間になってしまったようなのだよ、もしかしたら、「ARさん」は、今頃、当初の予定の通り、北海道をゲストと一緒に歩いて、「いやー、北海道は日本のラストフロンティアなんですよー」と案内しているのかもしれない。

 

ってな話をポンちゃんにすると、「それはあれやな、千と千尋っぽいな。湯婆婆に、お前は今から千だ!」って言われるやつ。

 

よく分かんなくなったけど、なんか、納得。

この病気と向き合う間

は、ARを離れて、TR。

 

 

 

そうそう、昨晩、癌先輩YさんとLINE電話で1時間つながる。

この方、そこまで親しい間柄ではないのだが、彼はコロナの間に癌と向き合い、復活した。というのを、FBで知っていたし、最初にその話を聞いたときは、思わず、メッセージを送った。今思えば、浅はかな、上っ面なメッセージにしか過ぎなかったと思うけれど、それでも彼は、今回きちんと、この厄介な私を真正面から大きな愛で受け止めてくれて、相談、というか、話し相手になってくれて、もう、心大き過ぎで、感謝しかない。

「メンタルは確実にアップグレードされます。僕は、病気前の僕とは違う人間です。外からはそう見えないと思うけど」

「生きてるんじゃないんですよ。生かされているんです。身体は自分でコントロールできるものじゃない。借りているだけ。僕は今、この自分の身体がとても愛おしい」

いい言葉いっぱいあったな。

 

 

フランス語仲間のYさんから、また心染みるメッセージをいただき、また泣く。

「周りを笑顔にする溢れる才能を活かす時がまた来ると信じています」

 

ふとした瞬間に、涙ボタンが押さレ、1日10回以上泣いている。

心はまだまだジェットコースター。

 

 

 

今日の処置

抗生物質点滴2回

鉄分点滴1回

朝は調子良く、ランチ食べると具合悪くなり解熱剤。でも1回だけで済んだ。

今日は土用の丑の日ということで、なんと鰻丼が出た! ヒャッホー。

2023年7月29日(土)

 

夜中、23時に抗生剤点滴をするのだが、昨晩は、また39度以上熱が上がり、解熱剤と氷枕を依頼。トイレ。。。尿意があるような気がするけど、いざトイレ行くと出ない。1時間に一回トイレに起きる夜中。

そして、暗闇は人を不安にさせる。前日、FBに、入院の話書いたら、たくさんの人からメッセージをいただき、このモヤモヤとした苦しさから逃れたく、親しい人には、事実を打ち明ける。言われた人は、こんな重たい話聞かされてたまったもんじゃないかもしれないけど、聞いてくれる人がいるのはメンタル的に重要。人は一人ではない。どんどん周りに助けを求めよう。

 

朝一番で、主治医先生が顔を出してくださり、昨日の若先生とは違う優しい口調で話してくださった。主治医先生には涙を見せるが、若先生には、私も強がりでなんでもない、って感じで対応してしまう。

 

朝二番で若先生と話。「動いていいですよ」「どんどん筋力落とさないよう動いて」ということなので、お願いをして、リハビリ室で筋トレ、また、19階で軟禁状態の今から、気分良い時は、別の階まで行けるようにお願い。「19階までの階段はないけど、1−4階、外来のとこには階段あるかもですね」と。熱が下がって、痛みもない時は、動きたい。身体のメンテナンスをしたい。という前向きな気分になり、youtube見ながらベッドの上でヨガ&ストレッチ。(病院のベッドは横に柵があるので全然動けないのが難点)

まずはこの感染を治す、うまく落ち着けば来週半ばに退院、その後すぐに抗がん剤治療を、と言われるが、1週間の自由時間が欲しいとお願いした。温泉も、食事も、ハイキングだって、なんでも好きなことやっていい1週間があると思うと、パーっと霧が晴れたような気分だった。何しよう。何食べよう。誰に会いたいかな。髪の毛短くした方がいいな。やり残しの無いように。将来に希望ができると人は前向きになれる。

 

朝は37度、朝食後は36度台まで落ち着き、元気なので、2日ぶりにシャワー。いやー、リフレッシュ!香り良いシャンプー、コンディショナー、ボディソープ、ドライヤーをぽんちゃんのラインに依頼。ぽんちゃんには、何も考えず、欲しいもの全部ライン。甘えて良い存在がいてくれるのは、ありがたいね。彼も、いきなり配偶者がこんなことになって、メンタル辛いと思うので、申し訳ないけど、今は甘えさせてもらおう。

 

さて、今日は午後、ベッドが空いたので婦人科の一般病棟に引っ越し、そして母がやってくる。お母さんに話するの嫌だなぁ。

 

***

 

今日の午後は、おしっこの量で脳みそが一杯だった。

昨晩から尿の出が悪い。看護師に言うと、あんまり出が悪いようだったら、導尿感つけることもできますよ、と。とりあえず、尿量を測ってみてください、と、野外フェスで渡されるような400ccのサイズの巨大紙コップを渡される。午前中は、これがどうした、20cc、10ccしか出なくて、なんだか色も濃いオレンジ色だし、え、この、高級貴腐ワインをテイスティングするようなこの色と量はどうなの。。。とドキドキし始める。点滴管が手についているだけでも気分悪いのに、更に身体に管入るとか、病人レベルが進むようで絶対嫌〜。冷徹若先生は、「まあ、絞り出すことですね」といつもの調子だし、このままだとヤバいと脳内で赤いサイレンが回り始めた午後、登山の脱水症状を思い出し、「これ、、水飲めばいいんじゃない?」と。発熱もしたりと身体が欲していたのかな、いつまでも、ごくごくと飲める。400。800。1200。1600。そしたら!久々の尿意、そして復活したのだった。どんどん尿の色は薄く綺麗になっていき、計量紙コップに、並々と出された尿に感激する。50。80。100。最後は、コップいっぱい、ビールだ!人生で、こんなに尿の量をまじまじと観察したことも、ありがたく思ったことはないね。

 

 

 

午後、母親とぽんちゃんが連れ立ってくる。甘え放題なので、ヨーグルトやら桃やらゼリーやら、欲しいもの全部持ってきてもらった。病気の話はさらっとして、いつものたわい無い会話を1時間。こういう時間はポジティブになれるものだね!人と会ってエネルギーもらうのは良いことだな!

 

 

 

夕方、癌の先輩Yさんからお薦めされた本を読む。シンプルな言葉なので、今の豆腐メンタルな私には、小難しいこと言われるより、つるんと心に届いて、励まされる言葉ばかりだった。お薦め本のチョイスが秀逸だ、先輩。

 

筆者が難病になった時の禅師との会話。

「命長くはない病気になりました」

「そうか、もう命は長くはないか。だがな、一つだけ言っておく。人間、死ぬまで命はあるんだよ」

「過去はない、未来も無い、あるのは永遠に続く今だけ」

とか

 

「何が起こったか。それが、我々の人生を分けるのではない。

起こったことをどう解釈するか。

それが、我々の人生を分ける」

「この病気は、私に何を伝えようとしているのか」

とか。

 

 

他の癌の先輩からのショートメッセージ

「自分は運が良いと思うことですね」と。

いろんな人から、色々メッセージをもらったけれど、一番意外で、すごく直球で、でも一番響いた言葉だった。重たい病気を経験している人たちの心の深さよ。

 

 

*今日の処置

抗生物質点滴2回

解熱剤点滴2回

鉄分点滴1回

夜中1時半、39度まで上がり、ナースコールで点滴。でも眠れず朦朧と朝を迎える。

 

 

 

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