- マイケル・J・モーブッシン, 川口 有一郎, 早稲田大学大学院応用ファイナンス研究会
- 投資の科学 あなたが知らないマーケットの不思議な振る舞い
2月に出版された本で、原題は、「MORE THAN YOU KNOW ~ Finding Financial Wisdom In Unconventional Places」。昨年米国で出版されたものです。
著者のマイケル・J・モーブッシン氏は、米スマート・マネー誌の調査で「ウォール街で最も影響力のある人物」の1人にも選出されたファイナンス学界の俊英で、レッグ・メイソン・キャピタル・マネジメントのチーフ・インベスト・ストラテジスト、コロンビア・ビジネススクールの非常勤教授を勤めているとのことです。
「投資の科学」というちょっと硬い邦題ですが、30章のエッセイからなる書で、新しい知見について、エピソードを使いながらわかりやすく説明しています。
最近流行りの行動ファイナンスについては、特に個人の投資行動と市場全体の動きを分けて考えるべきであると説いている部分が印象に残りました。ひとりひとりの投資家が非合理的な投資行動を行ったとしても、十分多様な参加者がいれば、市場全体は正しく機能すること、逆に参加者の多様性が失われるような状況になるとバブルや暴落が発生することなどの説明には説得力がありました。
そのほかにも、バリュー投資についての種々の考察、資産運用業界の問題(運用パフォーマンスの向上は必ずしも運用会社の収益向上には結びつかない)など内容は多岐に亘り、読み応えがあります。
相場全体の動きに関しては「複雑系」の理論を使って説明していますが、数式を使ったりしているわけではないので、それほど難しくはありません。「複雑系」もカオスやフラクタルなどいろいろありますが、バタフライ効果(=初期条件のわずかな差が時間とともに拡大して、結果に大きな違いをもたらす=「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」というような話)から、同じ材料が出ても、相場は反応しなかったり大きく反応したりすることが説明されています。
もうひとつ、オプション理論などでは、価格の動きは正規分布が仮定されていますが、実際にはそうではなく、「ファットテイル(=異常値が多く発生する)」の状態になっているということで、これが、LTCMなどヘッジファンドの破綻につながっている(=理論値よりも大きな変動が発生して想定以上の損失を出す)ということです。
本書は「投資の哲学」「投資の心理学」「イノベーションと競争戦略」「科学と複雑系理論」の4部にまとめられていますが、どこから読んでもいいような構成になっています。投資について直接役に立つような何かを学ぶというよりは、ちょっと知ったかぶりができるというような内容ですが、理屈が好きな人には面白い本だと思います。