フランス語圏を知るための61章
エリア・スタディーズ 225
岩﨑えり奈 小島真智子 編著
明石書店 発行
2026年3月31日 初版第1刷発行
はじめに
フランス語圏を意味する言語は「フランコフォニー」
・小文字で始まるfrancophonie
フランス語を公用語に含む国家群、すなわち、フランス語圏諸国
・ 大文字で始まる固有名詞Francophonie
フランス語を介した精神的なつながりを発展させるための文化的な共同体
Ⅰ 世界におけるフランス語の諸相
フランスの様々な地域ではそれぞれの地域言語が話されており、18世紀の終わりの時点で、国民の約98%はフランス語を話していなかったと推定されている。フランス語は、まずオイル語などの近縁のロマンス諸語が話されていた地域から、都市部や上流階級を中心に徐々に広まった。
地域言語は文化遺産と捉えられ、
2008年には憲法に「地域諸言語はフランスの文化遺産に属する」という条項(第75条1)が追加、
2021年には「地域諸言語の文化遺産としての保護と振興に関する法律」(モラック法)が制定された。
しかし憲法第2条では「共和国の言語はフランス語である」と規定されている。そのため、モラック法の一部の条項が違憲とされ、
また1992年に欧州評議会で採択された欧州地域言語少数言語憲章も批准できていない。
フランス語を唯一の公用語に定めた1539年のヴィレール=コトレ勅令、
フランス語のみを用いた義務教育を導入した1882年のフェリー法など、
国内におけるフランスの地位の確立とその普及に寄与した政策は多岐に渡る。
フランス本土の若者ことばには、アラビア語や英語をはじめとするフランス語以外の言葉からの借用語(emprunt)が豊富に観察される。 特に移民言語の一つであるアラビア語からの借用語が目立ち、いくつかの語彙・表現はアラビア語を話す集団にとどまらず、フランス本土の若者に広く浸透している。
アフリカのフランス語では初対面でもtuを使う場面がフランスより多いようだ。
Ⅱ グローバル・ヒストリーの中のフランス語圏
Ⅲ グローバル経済とフランス語圏
フランス語圏の大企業の事業の展開場所
・ 世界市場を相手にする巨大企業
・ 主要な先進国を進出先とする大企業
・ フランス語圏を優先的な対象として海外進出する大企業
チュニジア人の移民ルート
チュニジアからトルコ、そしてセルビアへ飛行機で移動
セルビアから陸路でハンガリーに行き、オーストリアを経由して、フランス、ドイツ、イタリアへ移動
Ⅳ フランス語圏を取り巻く世界秩序の変革
ロケットを打ち上げるためには巨大なエネルギーが必要である。そのため、地球の自転の力も活用する。地球は西から東に向かって自転しているため、通常、東に向けて打ち上げる。また、地球観測衛星など、人工衛星のタイプによっては北極と南極の上空を通って周回する軌道に打ち上げる。つまり、ロケットを打ち上げる場所は、東と南北のどちらかに開かれた場所でなければならない。ロケットは失敗した場合、人が住まない場所に落下させる必要があるため、海に向かって打ち上げるのが一般的である(旧ソ連のように開かれた海へのアクセスがない国は砂漠など、人口密度が低い場所で打ち上げる)。つまり、ロケットを打ち上げるのに適した場所を持つ国は意外に少ない。
その中でも世界最高のロケット射場として評価されているのが、仏領ギアナにあるクールー射場である。
かつてフランスは、第1次大戦時のオスマン帝国による迫害、後にフランス政府はこれを「虐殺」と認定、からアルメニア人を軍艦で救出し、港湾都市マルセイユに着いたアルメニア人は主に国内に定住した。その結果、今日、アルメニア系フランス人は約50万人いるとされる。フランス総人口に占める割合は1%未満と少ないが、3大都市のパリ、リオン、マルセイユ界隈に集住し、選挙基盤として無視できない分布である。
Ⅴ グローバル化とフランス語圏の政治
200万人以上の人口を抱えるブリュッセル首都圏は、フランス語を公用語(の1つ)とする都市圏として、欧州では人口1000万とされるパリ都市圏に次ぐ規模を誇る。なお、「欧州では」 というくくりを外せば、実は最大のフランス語人口を抱えるのは人口規模1700万とされるコンゴ民主共和国首都キンシャサであるが、かつて同国を植民地としていたのがベルギーである。レオポルト2世の治世以降、19世紀終盤から20世紀前半にかけて、歴史上名高い残虐な統治の下、莫大な豊かさをベルギーにもたらした。
近年のアフリカで暴力の連鎖が拡大し続け、国際的な関心が高まっているのがサヘルと呼ばれる地域である。日本ではあまり聞き慣れない地名だが、サヘルとは北アフリカのサハラ砂漠の南縁に広がる地域を指している。サヘルの面積は約300万km2で日本の約8倍に相当する広大な地域だ。西アフリカではセネガル、モーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、ナイジェリア(北部)チャドが含まれる。
2023年のモロッコ地震
「友好国」 スペイン、イギリス、カタール、UAEの4ヵ国からのみ救助隊を受けることを決定した。特筆すべきは、いち早く救助隊派遣を申し出た旧宗主国フランスのオファーが見送られたことである。
背景には、当時の両国の冷え込んだ関係がある。その主な原因は、フランスが2022年に決定したモロッコ人へのビザ付与数の大幅削減であった。フランスで長年課題となっている 不法移民対策の一環ではあったものの、モロッコ人からは多くの批判の声が上がった。
Ⅵ グローバル化により変貌するフランス語圏社会
ルクセンブルクには安楽死法と同日に成立した緩和ケア法がある。同法により、終末期患者は緩和ケアを受ける権利を保障され、医師は患者の苦痛を効果的に緩和すべき義務を負う。昨今の緩和医療学の進歩に鑑みれば、緩和ケアによる対処が可能な範囲が広がれば、患者の耐えがたい苦痛は減じられる可能性が高まる。
Ⅶ グローバル化との相克におけるフランス語圏の文化
現在のヨーロッパ、そしてフランスで当たり前の存在となっている食べ物の中には、南北アメリカ大陸原産のものも少なくない。七面鳥、トウモロコシ、じゃがいも、トマト、唐辛子、ピーマン、パプリカ、パイナップルそしてチョコレートの原料カカオも、1500年以降に「新世界」から持ち込まれて根付いたものだ。
七面鳥は比較的スムーズにフランスの食文化に溶け込んだが、トマトは食用化が遅れた。
アルジェリアでは、日本マンガの様式を用いてアルジェリア人の物語を描く創作活動が、20年近く前から盛んになっている。
