妹の運転するミニバンがきた。
心配顔でクルマから降りてきた。
包帯グルグル巻きに白鳥タイツを履いた脚。
それが半ズボンからむき出しになっている。
いかにもケガ人という姿に驚いたようだ。
「どうもありがとう」
スライドドアから車内のシートに転がり込んだ。
家に行く前にコンビニに寄ってもらった。
牛乳、パン、タバコ、お茶と
商売道具の週刊競馬ブックを買う。
その間にも脚はどんどん痛みを増し、
いっぱいに膨らんだレジ袋が
一層歩みを遅らせた。
見かねた店員さんが手動扉を開けてくれた。
ありがたい。
今日は世界中のみんなが優しい。
家に着いた。
2階にある部屋へ続く階段が待っていた。
いつものように薄暗い階段。
今日は、弱ったちゅ~ねん男を
あざ笑うかの如くそびえ立っている。
両手で手すりをつかみ、
脚は使わず松葉杖の要領で制覇した。
荷物は妹が運んでくれた。
すぐに帰ると言う。
さすがにゆっくりしていく気にはならなったようだ。
『馬の仕事もリハビリも明日からだ』
寝床に丸めた毛布を置き、
右膝が少し高い位置になるようにセットした。
少し眠ろう。