プラムディヤ「人間の大地」インドネシアに行く菅総理に その2 | エルサレムの響き3

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保守派ですが、愛国心の押し付けに反対するため、小説を書いています。
note 大川光夫 で検索してください。「 愛国者学園物語 」という題名です。

著者であるプラムディヤ・アナンタトゥール(1925−2006)の人生も衝撃的なものだった。

「人間の大地」四部作は、彼の10年以上の投獄生活の中でまとめられたというのだ。

 

彼は日本の軍政下で生まれ、オランダによる植民地支配も肌で感じていた。

インドネシアの独立革命の時代に作家として、社会運動家として活動したせいか、投獄されてしまう。

やがて自由の身になり、再び作家活動を続ける。

 

しかし、世界は朝鮮半島やベトナムがそうであったように、冷戦下であり、東西対立、民族対立、自由陣営vs共産諸国の争いで燃えていた。ヨーロッパの植民地諸国はその大半が独立した。

 

1965年にインドネシアで起きたクーデター未遂事件(9月30日事件)は、その後、対共産陣営への攻撃に変貌する。100万人とも言われる共産主義者が殺され、10万人以上が投獄されたという。

共産主義系の文化団体に関わっていたプラムディヤも投獄され、ブル島の監獄に流刑された。

 

 

彼はここで10年以上を過ごした。

そして、受刑者としての生活を送るうちに、四部作の物語を思いつき、それを他の囚人たちに語っていたところ、好評を得た。やがて、受刑者でありながらタイプライターを与えられ、それで物語を書き上げたという。

 

彼は監獄を出たが、その日常は秘密警察の監視下に置かれ、自由に移動することもあまり出来なかった。

事実上の自宅軟禁におかれた彼だったが、細々と執筆活動を続けた。

 

 

主人公の男ミンケは、現地人(プリブミ)の貴族で、医学校の学生だった。

ある日、不思議な家族に出会ったことから、ミンケは、インドネシア誕生につながるような民族の動乱と彼らの苦悩に関わることになる。

 

その家族の当主メレマは、オランダに妻などの家族がいながら、プリブミの女性を現地妻にして二人の子供を生ませ、自分は荒んだ生活をしていた。それゆえ、実質的な経営者は、現地妻の通称ニャイ、あるいは地名をとってニャイ・オントソロ(のちにミンケの義母、ママとも呼ばれる)。教育の機会には恵まれなかったが、真面目な彼女は自らの手で教養を高めた。そして、だらけて何もしないメレマの代わりに農場を切り盛りし、繁盛させたのだった。

 

ママとメレマの息子は、父親のコピーみたいなクズ男。娘アンネリースは良い性格の女性に育ち、やがてミンケと結婚する。では、なぜ、ママがメレマのような人間と結婚することになったのか、、、。

 

 

 

ミンケはジャーナリストとして、簡単には言い表せないほどの多様な立場の人々に出会う。

オランダ人に媚を売って生きる現地人。

もちろん、オランダ側についた現地人の存在に怒る現地人もいる。

また、植民地政策に賛成のオランダ人でありながら、現地人の心情にも関心を寄せる姉妹。

現地人のことを深く思う、ミンケが卒業した高等学校の女性教師。

フランス人でありながら、アチェの戦争に参加して、片足を失った男もいた。

 

 

ところが、メレマが変死、ミンケたちの人生は激変する。

法律によると、ママが育てあげた農場などの財産はそのほとんどが、オランダにいるメレマの家族のものになってしまう、、ことになった。

そのような「不平等」に深い悲しみと怒りを感じたママやミンケ。

ママは法廷闘争でそれに対抗することを決意し、多くの現地人たちがそれを支持した。

しかし、司法が出した決断は非情なものだった、、、。