やがて海霧の夜に翔ぶ -2ページ目

やがて海霧の夜に翔ぶ

FFXIケルベロス鯖にて活動しているエルヴァーンのブログです。



主にFFXIのオリジナル小説などを載せています(ネタバレも含みますので注意!)。

 かすかに霧がかかる運河。静かなジャグナー森林の東側に位置するこの場所に円陣を組んだ集団とその中心に男が2人。

 「アイアス君、どうしてこんなことになっているか説明してくれるかな・・・?。」

 橙色の銃を腰から抜きながら中心にいる男の1人がつぶやく。布や帽子などで顔隠した者達に囲まれているのはまぎれもなくデュランダル兄弟だった。2人は背中を合わせなんとか周りと均衡状態を保っているが、いつこの男達に襲われてもおかしくない状況である。

 「ふん、来てくれと頼んだ覚えはない。それにこんな奴らは俺だけで十分だ。」

 アイアスは剣を抜き盾を構えた。


 砂丘から2日ほどかけてサンドリア王国へ戻りメルと別れたマイルスは、彼女から受け取った少しの謝礼と保存食を冒険者居住区のモーグリに預けお金になる話を得るために王国中の知り合いに会いに行った。元々散歩が好きで子供の時から両親のように自分の面倒を見てくれた人達が国内には多くいて、神殿騎士時代も他の兵士が嫌がるような小さな依頼をマイルスは積極的に受けていたので町人の信頼度はとても高かった。

 「あら、マイルスじゃないか!久しぶりだねぇ。」

 出て行ったとは言え名家の長男を呼び捨てできるのは古くから仲の良かった証拠で、雑貨屋の店主もその一人である。

 「お久しぶりです、ターミラさん。お元気そうでなによりですよ。」

 世間話をしながらターミラにお金の事を相談すると簡単なおつかいに加え、何か困っている事があったらマイルスに依頼するよう言っておくと彼女は笑いながら答えた。マイルスの笑顔癖もほとんどがこの人の影響であるが、あまり知られてはいない。ターミラのおつかいは店で売る旅装のための素材を集めるというものだったがサンドリア周辺は庭みたいなものであるマイルスにとってそれほど時間はかからなかった。その後も店を手伝いながら依頼をこなし、3日がたとうとしていた。

 「おはよう、マイルス。お客さんが来ているよ。」

 マイルスは冒険者である事を忘れるが如く、店のアルバイトより早く出勤してしまうほど雑貨屋にお世話になっていた。今朝の客人はサンドリアの兵士であった。

 「おはようございます、マイルス=デュランダル様ですね?アイアス様が未だに城に戻らないのですが、何か知りませんでしょうか。」

 兵士から今回のアイアスに与えられた作戦を聞いたマイルスは不審に思った。弟の属する”王国騎士団”の事はくわしくないが、小隊には王国へ連絡する兵士が必ずつき定期的に状況を報告する決まりだったからだ。

 「それはおかしいですね。ターミラさん、今日は仕事を休ませていただきます。あいつは私の事を嫌ってますが・・・、大事な弟ですから。」

 そう言うとマイルスは店を後にジャグナー森林へ向かうことにした。


 「盗賊団のアジトがありそうな場所を探したら案の定でしたよ。森林は広いですがこの”ギルド桟橋”でもない限り危険が多いですからね。」

 マイルスは周りに警戒しつつ銃に弾を込め、鞄から7色のカードを取り出した。

 「小隊にこの盗賊団”銀狼”の手下が混じってたとはな。深い霧に状して入れ替わったんだろう・・・、そして俺たちをここへおびき寄せるために迷ったふりをして誘導したんだ。おかげで食料も尽きて敵の術中、腹がたつぜ。」

 アイアスが小言を言っているとしびれを切らした盗賊達が一斉に襲い掛かってきた。

 「私が援護します。君の騎士道を見せてください、アイアス!。」

 マイルスは急所は狙わず次々に下半身を撃ち抜き、男達の進撃を遅れさせている。アイアスは身軽に敵の攻撃をかわしながら1つの動作で何人もの敵を薙ぎ払う。多対一の戦闘によっぽど慣れているのだろうとマイルスは思った。彼自身も近づく相手を突剣であしらい確実に弾丸と”クイックドロー”と呼ばれる技で大群を吹き飛ばし、焼き払い、時に眠らせ・・・、圧倒的な実力を見せている。

 「はっ!なにが援護だよ。昔より上達してるじゃねぇか。」

 アイアスは嫌味を言いながらもどこか嬉しそうな顔をしている。いくら数十人でかかったとはいえ、2人はまるでダンスを踊るかのように舞い、盗賊達を瞬く間に一掃した。

 「ふぅ・・・。なんとかなったな。」

 アイアスはその場に座り込んだ。この脇腹からは血がにじんでいる。

 「アイアス!その傷は・・・。」

 「ふん、ここへおびき寄せられ不意打ちを受けた時に仲間をかばってな。あいつらは”魔行符”を使って逃げたがこれを使うには集中力がいる。だから俺はここに留まってたってわけだ。なさけないだろ?。」

 アイアスは痛みを堪えながら無理やりに笑顔を作ってみせた。

 「・・・・そんなことはありませんよ。貴方は小隊長として立派な働きをしました。」

 マイルスは鞄から薬品を取り出し弟の手当てを始めた。アイアスもはじめは嫌がっていたが冒険者の経験が長いマイルスの治療は的確ですぐに止血された。その姿を見てアイアスは小声で、

 「なぁ・・・兄貴。俺はあんたを誤解していたよ。家を出てただ自由気ままに楽して生きているんだと思っていた。だがそれは間違いだったんだな・・・。マイルス=デュランダルの騎士道は今も生きていた。・・・たまには帰ってこいよ。俺が居場所を取り戻しておくからよ・・・。」

 涙を流すアイアスに、マイルスは彼の肩をたたきにっこりと微笑んだ。 

 

 桟橋の木々の間から差し込む光が、2人の”騎士”を明るく照らした。

 静けさが漂うロンフォール、しとしとと小雨の降るラテーヌ高原を通り、2人はバルクレム砂丘を目指す。道中で何度か獣人や好戦的な魔物達に襲われたが、マイルスの放つ弾丸とメルの剣技のまえに次々と倒れていった。高原もあと半分といったところで日も沈んできたので比較的安全そうな場所にキャンプを張り、夜を明けるのを待つことにした。

 「メルさん、朝ですよ。」

 日も昇り始め静かな高原の一画にマイルスの声が響く。

 「・・・・もぅ・・・少しぃ・・・。」

 しかしメルはまったく起きようとしない。あははっと笑いながらもマイルスは呆れている。だが幼少の頃から寝起きの悪い弟を起こしてきた彼にとっては意識がある分文字通り朝飯前の仕事であった。

 「ふぅ・・・弾に込めしは炎霊の力、ファイアショット!。」

 ドンっという爆音が空目掛けて響き渡り、鳥が木々から一斉に飛び立つ。

 「わぁ!。」

 「さっ、食事を済ませたら出発しますよ。」

 マイルスは干し肉を食べながらメルににっこりと微笑んだ。


 砂丘へ着く頃には日も昇りきり、2人はさっそく試験の合格のために動くことにした。

 「さて、たしかイザシオさんの試験は”蟹の腹甲”と”蜻蛉の腹虫”と”死者の頭蓋”を集める事でしたよね。何から始めましょうか。」

 マイルスは地図を見ながら淡々と話を進める。メルも男の歩幅になんとかついていきながら

 「待ってくださいよ~クルタダさん!私は一応女の子なんですからね・・・。蟹の腹甲はなんとか一人で入手できましたから、あと2つですね。」

  2人は砂丘中を駆け回り”フライ族”を倒していく。腹虫自体が希少で戦闘によって傷がつく事もあるためかなかなか見つける事ができないでいた。たびたびキャンプを張っているゴブリン達に狩りの邪魔をされつつも2人は懸命に敵を倒し続けた。イザシオの試験は体力・運・基本的な力など絶妙なバランスを問われることで有名だった。

 夕方に差し掛かかろうとした時、メルが叫び声をあげる。一瞬の気の緩みからか倒したと思っていたフライ族の放った毒液が直撃してしまったのだ。これはまずい、そう思ったマイルスはメルをかつぎ上げると同時にある事に気がつく。腹虫だ。それを鞄に放り込むと男は砂丘に隣接する町”セルビナ”へ走る。

 町の宿屋でメルの解毒を済ませ、ベッドの横に座ったマイルスは安堵のため息をついた。するとメルが小声で

 「・・・ごめんなさい。せっかく手助けをしてくれているのに私ったら・・・。」

 「いえいえ、気にしないでください。それに貴女が倒した相手から腹虫を入手できましたし。今夜はゆっくり休んでくださいね。」

 マイルスはそう言うと部屋をでていった。もうすっかり日も暮れ、町の船着場の光だけが闇を照らしている。


 朝になりすっかり町は活気に満ち、外から聞こえる漁師や冒険者達の声でメルは目を覚ました。部屋には彼女の荷物と赤いシャポーを引っかけたレイピアが壁に立てかけられているだけで”クルタダ”の姿はない。その時宿屋の入り口から大声が聞こえた。驚いたメルは声の方へ急いでむかうとそこにはボロボロになった彼が座っていた。宿屋の店主や野次馬の影からメルに気がついたマイルスは微笑んで彼女に袋を手渡した。

 「いやぁ、昨夜砂丘で頭蓋を入手してそろそろ戻ろうと思っていたら普通の2回りは大きいフライ族に出会ってしまいましてね。とても私が勝てる相手ではなかったので、なんとか町まで逃げ帰ってきたんですよ。」

 マイルスの活躍もあり無事試験に合格したメルは宿屋に戻ってきた。しかし部屋は彼女の荷物があるだけで静かだった。メルはお礼もまだ言えてないのにと店主に男の行方を聞き慌ててセルビナを後にした。まだ出て行ってからそんなに時間は経っていなかったためメルは辺りを見渡しながらラテーヌ高原の方を目指す。すると海岸の壊れた船の影に彼の姿を見つけた。

 「クルタダさん!お礼も言わせてくれないなんてあんまりですよ!それに怪我まで・・・。」

 「おっと、見つかってしまいましたか・・・。少し考え事があって。本当の事を言ったほうがいいのでしょうね。」

 メルはなんのことかわかっておらず首を傾げている。

 「実は・・・、私の名前はマイルス=デュランダル。”護りのバスタード家”とは対をなすデュランダル家の者です。今は家を捨て冒険者として暮らしていますけど。バスタード唯一の後継者は養子にとった女の子とは聞いていましたが、あなただったのですね。」

 マイルスの言葉にメルは驚いた。サンドリア出身者なら誰でも知っている有名人と一緒に旅をしていたのだ。

 「あっあなたがマイルスさん・・・。信じられない・・・。」

 「名などどうでも良いのです。それよりも貴女がなぜ今こんなところまで来ようとしたのか気になったのですよ。高原は雨が降りやすく、砂丘は最も暑くなるこの時期に、ね。」

 笑いながら続けるマイルスにメルは隣に座って口を開いた。

 「・・・・もうすぐ騎士登用試験が行われるんです。知っていますよね?年に一度しかないアレです。私はそれにどうしても受かりたいのです。父の意志を継ぐために。だからサポートスキルが必要になったんです。」

 メルの真っ直ぐな目にマイルスは何かを確信した。そして鞄の中の”あの剣”を取り出してみせた。

 「では・・・、この剣をあなたに託しましょう。私はもう騎士ではない身ですから。」

 彼女は目を丸くした。デュランダルの宝剣は価値もつけられずこの世に1本しかない。マイルスがその事を知らないはずがない、そう思ったのだ。

 「我が剣と”バスタードの盾”に誓って、立派な”騎士”になってくださいね。メル=バスタード。」


 マイルスから受け取った剣の刀身が陽の光に輝き、辺りは静かな波の音だけに包まれた。


 サンドリア王国・・・。



 クォン大陸の北方に住む誇り高き戦士の民エルヴァーンが、激しい内戦の末に建国した国である。

 しかし、今となっては黄昏の騎士王国・・・・・。老いたる、眠れる獅子などと影で揶揄する者もいるほど衰退し、かつての栄光の日々は見ることができない。金持ちだけでなく、優れた剣術や参謀能力を持つ一族が”貴族”階級にいた大戦時の名残か今でもなおその一族、名家の力は少なからず国民に及んでいる。



 「おまえに食わせてやれる物はない、帰ってもらえないか。」

 「すまんな、今でも”あの名家”の力は健在なんだ。久しぶりに顔を見れたのはよかったが店に入れたと知られたら・・・。」

 ”あの出会い”から早半月の月日が流れた。腹を空かせた男は赤いシャポーを深くかぶりなおし、店をでる。マイルスはウィンダスで魔法の知識を、バストゥークで銃の知識を学びサンドリア王国へ帰郷した。もう何年この地を去っていただろうか、景色や町の外観は昔とまったく変わっていなかったがマイルスへの対応だけが劣悪なものとなっていた。

 「まいりましたね・・・。家を捨てたせいで久しぶりの故郷の味もわからず仕舞いとは。競売で安い食べ物でもでていれば良いですが・・・。」

 長旅で食料もなくなり王国内で食事もとれないとなり、元騎士は空腹の限界だった。もちろん元々お金を多く持っていたわけではなく、質素な食事しか食べられないでいたのだが。競売所で食料品を見て回り、結局買えたのは干し肉と少しのパンだけであった。

 「コルセアとしての知識と経験はそれなりになりましたがこのままでは飢え死にそうですね・・・。」

 小言を言いながら木陰で昼食をひろげていると突然男が前に立ち、笑いながらマイルスに話しかけてきた。


 「はっはっは!かつての騎士様もいまじゃこんな貧しい食事とは。後悔の念でいっぱいなんじゃないか?兄貴。」

 「その声は・・・、君でしたか”アイアス”。まぁいち冒険者としてはこんなもんでしょう。王国風オムレツとはいきませんよ。」

 ”アイアス=デュランダル”、この名をこの国で知らない者はいなかった。若くして王国騎士団の小隊を任され、何度も功績をあげている。そしてなにより”デュランダル家”の正統な後継者、本来は弟が継ぐことはできないが前例なくその権利を得ていた。

 「兄貴には感謝しているんだ。どうあがこうとあんたがいたらオレは家を継ぐことはできなかったんだからな。これでも食って早く出て行くんだな。この国にマイルス=デュランダルの居場所はもうないぜ。」

 「ふふ、”白銀の貴婦人”とは・・・。大好物を覚えててくれたんですね。それより、私にわざわざ会いに来たんですか?平和で良いですね、この国は。」

 にっこり微笑みながらアイアスの方を見ると、騎士は不満そうな顔をして

 「ふん。今からジャグナー森林にある盗賊団のアジトを攻めるところだ。・・・”あの一家”がなくなってから世捨て者が増えて、今じゃここらの治安は獣人より人間が悪くしている。まったく腹立たしいぜ・・・。」

 そう言い残しアイアスは南サンドリアの凱旋門のほうへ歩いていった。


 食事をおえ日も昇りきった頃、マイルスは最初の問題を解決しようと悩んでいた。

 「さて、何か冒険者にお金になる仕事を依頼にしてくれる人を探さないと・・・。食事も満足にとれないのはシャレになりませんからね・・・。」

 その時、凱旋広場のほうから声が聞こえてきた。声の主はヒュームの女性で見たところマイルスよりいくらか若い。

 「どなたか”サポートスキル”の試験を手伝ってくれませんか!?私一人ではどうしようもないんです!。」

 「あなた・・・、試験というのは”セルビナ”のイザシオさんのですか?。それなら手伝いましょう。」

 マイルスは女性の肩をたたきながらにっこりと微笑んだ。イザシオの試験は彼いわく『生き残るための技術』らしい。かなり昔になるがマイルスもそれを弟と一緒に合格し、サポートスキルと呼ばれる能力を会得していた。

 「あっ、ありがとうございます!私はメル=バスタード。あなたは・・・・。」

 「バスタードですか・・・ふふ、なるほど。私はマイ・・・・・・えっと、クルタダと申します。しがないコルセア、と言ったら怒られそうですが。よろしく、メルさん。」

 マイルスは赤いシャポーを深くかぶり直した。


 目指すはザルクヘイム地方の中心、『バルクルム砂丘』。