サンドリア王国・・・。
クォン大陸の北方に住む誇り高き戦士の民エルヴァーンが、激しい内戦の末に建国した国である。
しかし、今となっては黄昏の騎士王国・・・・・。老いたる、眠れる獅子などと影で揶揄する者もいるほど衰退し、かつての栄光の日々は見ることができない。金持ちだけでなく、優れた剣術や参謀能力を持つ一族が”貴族”階級にいた大戦時の名残か今でもなおその一族、名家の力は少なからず国民に及んでいる。
「おまえに食わせてやれる物はない、帰ってもらえないか。」
「すまんな、今でも”あの名家”の力は健在なんだ。久しぶりに顔を見れたのはよかったが店に入れたと知られたら・・・。」
”あの出会い”から早半月の月日が流れた。腹を空かせた男は赤いシャポーを深くかぶりなおし、店をでる。マイルスはウィンダスで魔法の知識を、バストゥークで銃の知識を学びサンドリア王国へ帰郷した。もう何年この地を去っていただろうか、景色や町の外観は昔とまったく変わっていなかったがマイルスへの対応だけが劣悪なものとなっていた。
「まいりましたね・・・。家を捨てたせいで久しぶりの故郷の味もわからず仕舞いとは。競売で安い食べ物でもでていれば良いですが・・・。」
長旅で食料もなくなり王国内で食事もとれないとなり、元騎士は空腹の限界だった。もちろん元々お金を多く持っていたわけではなく、質素な食事しか食べられないでいたのだが。競売所で食料品を見て回り、結局買えたのは干し肉と少しのパンだけであった。
「コルセアとしての知識と経験はそれなりになりましたがこのままでは飢え死にそうですね・・・。」
小言を言いながら木陰で昼食をひろげていると突然男が前に立ち、笑いながらマイルスに話しかけてきた。
「はっはっは!かつての騎士様もいまじゃこんな貧しい食事とは。後悔の念でいっぱいなんじゃないか?兄貴。」
「その声は・・・、君でしたか”アイアス”。まぁいち冒険者としてはこんなもんでしょう。王国風オムレツとはいきませんよ。」
”アイアス=デュランダル”、この名をこの国で知らない者はいなかった。若くして王国騎士団の小隊を任され、何度も功績をあげている。そしてなにより”デュランダル家”の正統な後継者、本来は弟が継ぐことはできないが前例なくその権利を得ていた。
「兄貴には感謝しているんだ。どうあがこうとあんたがいたらオレは家を継ぐことはできなかったんだからな。これでも食って早く出て行くんだな。この国にマイルス=デュランダルの居場所はもうないぜ。」
「ふふ、”白銀の貴婦人”とは・・・。大好物を覚えててくれたんですね。それより、私にわざわざ会いに来たんですか?平和で良いですね、この国は。」
にっこり微笑みながらアイアスの方を見ると、騎士は不満そうな顔をして
「ふん。今からジャグナー森林にある盗賊団のアジトを攻めるところだ。・・・”あの一家”がなくなってから世捨て者が増えて、今じゃここらの治安は獣人より人間が悪くしている。まったく腹立たしいぜ・・・。」
そう言い残しアイアスは南サンドリアの凱旋門のほうへ歩いていった。
食事をおえ日も昇りきった頃、マイルスは最初の問題を解決しようと悩んでいた。
「さて、何か冒険者にお金になる仕事を依頼にしてくれる人を探さないと・・・。食事も満足にとれないのはシャレになりませんからね・・・。」
その時、凱旋広場のほうから声が聞こえてきた。声の主はヒュームの女性で見たところマイルスよりいくらか若い。
「どなたか”サポートスキル”の試験を手伝ってくれませんか!?私一人ではどうしようもないんです!。」
「あなた・・・、試験というのは”セルビナ”のイザシオさんのですか?。それなら手伝いましょう。」
マイルスは女性の肩をたたきながらにっこりと微笑んだ。イザシオの試験は彼いわく『生き残るための技術』らしい。かなり昔になるがマイルスもそれを弟と一緒に合格し、サポートスキルと呼ばれる能力を会得していた。
「あっ、ありがとうございます!私はメル=バスタード。あなたは・・・・。」
「バスタードですか・・・ふふ、なるほど。私はマイ・・・・・・えっと、クルタダと申します。しがないコルセア、と言ったら怒られそうですが。よろしく、メルさん。」
マイルスは赤いシャポーを深くかぶり直した。
目指すはザルクヘイム地方の中心、『バルクルム砂丘』。