~ All or Nothing ~ 前編・最終話 『迷いし剣に未来は築けるか』 | やがて海霧の夜に翔ぶ

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FFXIケルベロス鯖にて活動しているエルヴァーンのブログです。



主にFFXIのオリジナル小説などを載せています(ネタバレも含みますので注意!)。

 「よし、全員揃ったようだな。」

 クルタダは周りをみて話をはじめる。入江までの距離は意外と遠く、ナシュモへ着くころにはすっかり日が沈んでいた。

 「ワスードそしてマイルス、作戦の協力を感謝する。まぁ騙す形にはなったがね。」

 クルタダは二人を見ながら感謝の言葉を送った。しかしマイルスは不機嫌そうな顔をしている。

 「では・・・ワスード君の海猫党入団の件は白紙と?。」

 「えっ!?。」

 マイルスの一言にワスードはとても驚いた。少年の純粋な気持ちを踏みにじったと思い、いつもにこやかなマイルスの表情も穏やかではない。

 「こっこれみてよ!この銃がコルセアに必要なものだと思ったんだ・・・。ぼ・・・ぼく・・・、海猫党に入れないの?。」

 ワスードはすでに涙目であまり呂律がまわっていない。その姿を見てクルタダは少年の頭をなで、こう言った。

 「それは違うな、ワスード。コルセアに必要なもの・・・それは”運”と”実力”。そして・・・・”勇気”。海猫党の掟は絶対だ。仲間を裏切ってはならない、これは仲間のピンチに自分が死んでしまうとしても、逃げることを放棄するという誓いだ。おまえの”勇気”は十分みせてもらったよ。入団を許可しようじゃないか。」

 それを聞いたワスードの表情はパっと明るくなった。マイルスとズィーハはそういう事かと少し呆れた顔をみせている。

 「じゃあワスード。おまえに任務を与える。皇国へ帰って自分の店の手伝いをするんだ。」

 「えー!それじゃあ、いつもと一緒じゃないか!いやだよ、ボク。」

 クルタダの任務にワスードは不満を隠せない。船長に歯向かうなんて・・・とムティーブはハラハラしているのがわかる。

 「それは違うな。おまえが皇国にいてくれるだけで、オレ達は安心して皇国へ買出しや情報収集に行けるんだ。茶屋を手伝うことで冒険者や町のやつらの話もおまえを通してオレ達の耳に入る。これはすごく重要な任務なんだぞ?。」

 クルタダは言葉巧みにワスードを”騙した”。言い換えれば『いい子にして皇国にいろ』ということだ。しかしワスードは重要な任命にとても喜んでいる。マイルスはクスクスと笑うズィーハを見て、思わずいっしょに笑ってしまった。

 「ところで、その銃は昔のコルセアの遺品なんだ。元の場所に返しておいてくれるか?マイルス。」

 クルタダはマイルスの方に向きなおしてお使いを頼んだ。少ししぶるも、やれやれ・・・とマイルスはワスードから銃を受け取り支度を始めた。

 「では、ワスード君。帰ったら店主に”シュトラッチ”を用意しておくよう言っておいてくれますか?。私もすぐに戻りますから。」

 マイルスは少年ににっこり微笑むと西門の方へと歩き始めた。



 辺りは暗い森の中。霧がかる浮沼をかすかに射し込む星の明かりを頼りに1人の騎士は入江を目指す。戦闘の傷と長く歩いた疲れでマイルスはヘトヘトになりながらも、静かになった墓場を越えて洞窟の奥へと進んだ。

 「ふぅ・・・、やっと着きましたか。ワスード君をまたここまで連れてくるわけには行かないですし・・・、これも保護者の務めですね。」

 独り言で気分を紛らわせながら廃船に近い岩陰に壊れたヘキサガンをそっと置いた。

 「長旅ご苦労。マイルス。」

 聞き覚えのある声が奥から響いてきた。ナシュモで別れたはずの海猫党の面々が姿を現す。

 「わざわざ頼み事をしておきながら、きちんと戻したのか確認しにきたのですか?。」

 呆れ顔のマイルスにクルタダは真剣な表情で、

 「マイルス。おまえの剣術、実力、そして勝負強さをみこんでの話だ。オレ達と一緒に来ないか?。」

 少し間をおいて、騎士は口を開いた。

 「・・・・私はしがない暗黒騎士ですよ。家を捨て、国を捨て、業を背負い・・・、あなた方達のようなコルセアにはむいていない。」

 マイルスはそう言い、来た道をもどりはじめた。

 「しがないコルセアのオレには尊い騎士様の考えは理解できないが、茶菓子のためにこんな地まで初対面の子供に付き合うっていうのはどうも納得できないな。おまえの剣・・・、信念には迷いがあるんじゃないか?だからコルセアと出会う事を選んだ。」

 続けるクルタダの言葉に、マイルスは胸を抑えた。しかし足を止めようとはしない。

 「海賊の道へ入る気があるのなら、オレ達はいつまでも待っているぜ。そしておまえがコルセアの道に進むのなら・・・・。登りつめてこい、高みまでな。」




 悲しいことを言われたわけではない。皇国で出会った冒険者達のように、クルタダは罵声をあびせたわけではない。しかし入江をぬける頃にはマイルスの目からでた涙が、彼の頬をつたっていた。

 









                                                     ーEndー