こんにちは😊いつもありがとうございます。

今回はですね。投稿というより本を手にされたと思って読んでいただけると大変有り難いです😊


ブロ友さざ波スワンさんから「饗宴ってどんな本?」とリクエストがありましたのでお応えすることにしました。スワンさんはamebloの他にinstaやXも更新中。音楽とお笑いをこよなく愛する女性で、優しい語り口そのままのお人柄。大好きなブログ&ブロ友さんです😊

『饗宴』はプラトンが書いた大作。一般に出回ってるのは抜粋したもので作風は戯曲。実際にあった事をモチーフにした創作とされ、登場人物は実在の人と実在の人を基にした架空の人との混合です。


作品はエロスについて書かれていますが、プラトンが一番伝えたかったのはエロスそのものよりも、巫女ディオティマが話していること。彼女が語っているのはプラトン哲学の根幹であるイデア論←私に聞かないでネ゙😳。以下完全ネタバレ↓


※補足A

①当時のギリシャでは同性愛が大流行。

②ここでいう『少年愛』とは大人の男性と、12〜18歳の男性の間に成り立った関係を指します。

③一部表現が現在では嫌悪感を呼ぶかも知れません。

ですが避けては語れず、そのまま載せます。


登場人物(あらすじでは名前でなく番号で書きます)

①アポロドロス【ソクラテスの弟子

②ソクラテス【哲学者・50代

③アガトン【悲劇詩人・宴主催者・⑤の恋人・30代

④パイドロス【弁論を勉強中・⑥の恋人・20代

⑤パウサニアス【社長・③の支援者兼恋人・50代

⑥エリュクシマコス【医師・④の恋人・30代

⑦アリストファネス【喜劇詩人・30代

⑧ディオティマ【巫女のような人

⑨アルキビアデス【政治家・30代


冒頭。①が道を歩いていると知人に呼び止められ10年以上前にあった宴について聞かれます。彼は出席していませんでしたが、宴の様子を聞いていたので知人に語り聞かせるところから物語は始まります。


③がコンテストで1位を獲得、その祝宴が催されました。宴会2日目、呑み飽きた客を前に⑥は「今日は有名人が多く参加した良い機会だから、普段は人前で語れないエロスについて討論しない?」と投げかけます。テーマを聞いて誰もが尻込みする中、ソクラテスが「何しろ私はエロスに関すること以外は何一つ知らない」と言うので「あのソクラテスがそう言うなら」と皆が渋々了承しましたが誰もが一番手を嫌がります。仕方なく④が先陣を切りました。


④の主張

「エロス神は最も古い神でその由緒正しさを称賛したい。エロス神が人間に宿ると美しい人生を送る為の導き手になる。少年が大人という導き手を得るとその恋ゆえに、相手に恥ずかしい行為や弱気な行為を見せない気構えとなる。神話によると少年アキレウスはパトロクロスと恋人関係にあったが、アキレウスは愛するパトロクロスが亡くなった後に自らの命を投げ捨てて敵討ちした為神々により、祝福された人々が住む島に送られた。アキレウスが称賛を受けたのは彼は本来パトロクロスに愛される側で、愛される少年は受動的で従属的であるのが良しとされているのにアキレウスはパトロクロスを積極的に愛したから。私はその点を評価したい」(④は10代より成人した今も⑥と恋人関係にあり、当時としては逸脱行為。少年アキレウスが積極的に恋人を愛したという神話を語ったのは自己を正当化させる為)


⑤の主張

「エロスには『天のアフロディテ』『俗のアフロディテ』という2人のアフロディテがいる。それに対応するエロスも2人いて『天のエロス』『俗のエロス』。この2人のエロスの価値的な差異は人間の恋愛の行い方に影響を与えた。恋愛の行いには美しい愛し方とそうではない愛し方がある。女性を愛するのは主に肉欲の為でそれは美しくない愛し方。少年を愛するのは男性に愛着を感じるということ自体がそのまま美しい行為だ。しかしまだ理性が芽生えてない少年を愛するのは問題で、理性が芽生えた後の少年を愛するのはその人と生涯を共にする覚悟があるのだ」(⑤は③が成人した後も関係を続けており、これも当時は非難の的。自己の正当化をしてる)


⑥の主張

「⑤の2つのエロスの区別は認める。加えるなら医術の知見だ。人間の健康な部分と病気の部分は異なるエロス(欲求)を持っている。医術とはこの2種類の欲求を識別してその充足をコントロールし、様々な部分の調和を図る技術だと思う。人間の体は対立的な要素によって構成されており、そのバランスのあり方によって様々な状態に変化する。音楽だって低音と高音から協和音が生まれ、早いテンポと遅いテンポからリズムが生まれる。儀式や占いなどの場面にも2つのエロスは登場して人間の振る舞いに影響を与えているのだ」


⑦の主張

「太古の昔、人間は現在の人間2人が1つの球体の生物で、二体の組み合わせによって男・女・アンドロギュノスという3つの性に分かれた。太古の人間は力強く尊大であった為に神々に逆らい、ゼウスによって罰せられる。ゼウスは人間を真っ二つに分断して現在の人間の姿にした。ところが人間は元の姿に戻ろうとして、二体が抱き合ったまま次々に死んだ。そこでゼウスは人間の生殖器を移動させ、性交渉によって子孫を残せるようにした。この神話からエロスとは人間が本来の片割れを求め、それを一体化しようとする表現し難い感情の本性を直感的に言い表している。エロスは常に特定の個体への欲求なのだ」


③の主張

「エロスの本性は2つ。1つは神々の中でも美しい存在。2つにはエロスはあらゆる徳を身につけている。第一の理由、エロスは神々の中で一番若い。2つ目、エロスは繊細。3つ目、エロスはしなやかな姿で優美であり美肌。第二に正義・節度・勇気・知恵の順にエロスはそれぞれに秀でた徳を持つと証明したい」(③の主張はギリシャ語の音声にすると韻を踏んで美しい表現になるそうで当時のアテネでは絶賛される手法でしたが、この場合内容的には空虚)


最後は真打ち、②の登場。まず彼は③に対して「君のエロスには矛盾がある」と前置きしてから、昔、ディオティマから聞いたという話をし始めます。

※補足B

①エロスが所望する美しいものとは、子孫を残そうとする女性のパートナーのこと。

②エロスが所望する良いものとは子孫のこと。

子を成すとは妊娠出産のことではなく、性的行為のこと。(但しここは解釈が割れていて、妊娠出産のことだ!と言う翻訳本もあります)


エロスとは何か?

「ディオティマ曰く『エロスは美しくも良くもない。エロスは美しさと醜さの中間で、良さと悪さの中間、賢さと愚かさの中間にある』『エロスは神と人間の間にある超自然的な霊的存在で精霊だ。精霊とは神々と人間の間を繋ぎ、全宇宙を一体化させる。占いや予言をはじめとする宗教的行為も全てこの精霊を媒介して行われる』『女神アフロディテの誕生祝いの宴の際に来た、機知と策略の神ポロスと物乞いにやって来た貧乏神ペニアとの間に生まれたのがエロス。ゆえにエロスはアフロディテと密接で美を追い求める存在になった。またエロスはペニアの性質も引き継いだので常に欠乏して、欠けているものを手に入れる為に常に画策し続ける存在になった。そんな性質の中、最も重要なのが知恵だ。知恵は最も美しいもののひとつで哲学とはそもそも知恵を愛し求めるという意味を持っている』と言う」


エロスの働きは?

「私にはエロスが美しいものを愛する理由と何の為にものにしたいのか目的が分からなかった。ディオティマは『目的はつまり幸福になること。この答えを持ってその問いは終わる。幸福が人間の求める究極の目的でありその為に人間は良いものを求めるのだ』と。エロスの働きは『美しいものの中で子をなすこと。それは体の場合でも心の場合でも同様』と言った」


※補足C

①美の梯子でプラトンのイデア論が表明されます。

美の梯子

「若い時は美しい体に心が向かうが次第に体から心の美しさへと意識は上昇し、続いて人間と社会の習わしの中にある美しさに気づき、それらが密接に結びついていると発見する。次に彼は知識の美しさを発見し知恵を求める果てしない愛の中で、美しい言葉と思想を生み出す。ディオティマによれば美のイデアはこの世界の様々な美しいものが持つような不完全な性質を持たず「他の何者にも依存することなく独立しており、常にただ1つの姿で存在してる」。この上昇は言葉を生み出していくことで達成される。美しいものと知識が一体化して哲学の営みそのものを通して子が産み出されていく。美の梯子とは言葉による他者との関わりの中で哲学が生まれていく過程をいう」


その時酒に酔った⑨が乱入。⑨はエロスの賛美を勧められても「ソクラテス以外の賛美は嫌!」と言い「それでいいから主張して」と言われて話し始めます。


⑨の主張

「ソクラテスは半人半獣の山野の精(←性的な含意がある)に似ており意地悪な人だ。ソクラテスは楽器の演奏はしないが、その口で言葉で、人々の胸をうつ。その言葉は魅力があまりに強くセイレーンの歌のようで、政治家としての自分を破滅させ恥ずかしくさせる。強く惹かれるが同時に恐れを感じ避けたくなる。ソクラテスは美少年好きでいつも美少年につきまとい、自分は何も知らない無知だという。しかし実際は相手の美しさや裕福さなどは軽蔑していて気にもとめていないし無知でなはい。僕は昔、僕自身を誘惑の材料にしようと、この美しい体を差し出して彼から教育をしてもらおうとした。僕は失敗して心に深い傷を負った」


ソクラテスは言います。

「僕は価値のない人間なのに君はそれに気づいていないのかも知れない。精神の目が研ぎ澄まされ始めるのは肉眼が衰えた後だ。そして君がそうなるのはずっと先の話だ。あなたにも警告しようアガトン。この人に騙されてはいけない。諺にもあるように『愚か者が悟るのは痛い目にあった時』なんてことがないように」

「君が付け足しのように言った言葉、これこそ君の目的だ。なのに君は目的でないように見せかけた。真の目的は僕とアガトンの仲を引き裂くことだ。すなわち君は僕が君以外の誰も愛してはならず、アガトンは君以外の誰からも愛されてはならない訳だ。アガトン用心しよう。誰も君と僕の仲を裂くことがないように」(⑨は名誉欲の強さの為に政治活動する技術を手に入れようとソクラテスに近きましたが、後年目的達成された途端にソクラテスから離れていきました)


ここで突然酔っ払い集団が乱入。大騒ぎとなり、秩序は失われ皆沢山の酒を呑むハメになった。そうして客の一部は帰路につき、残りは酒を呑みながら議論を交わし、ソクラテスは「人間は喜劇を作る技術も悲劇を作る技術も知っている」みたいな話をしていたが、日が昇る頃には最後まで起きてソクラテスと対話していたアガトンが眠りに落ちた。ソクラテスは立ち上がって屋敷を後にした。


おしまい😊

ディオティマのエロス論は『プラトニック・ラブ(プラトン的な愛)』という言葉の出所のひとつ。現在では「肉体的欲求を伴わない精神的な愛」とされますが、実際は「肉体的欲望と精神的欲望は連続しており、精神的なエロスの背後にも情熱的な欲望が存在してる」という意味になります。この欲望があって初めて私達は相手との精神的な交わりを行ない、ついに美のイデアの認識に基づく真実の徳に至る、のだそうです。


最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました😊