私の親戚に

自分の顔写真をプリントしたTシャツを

着る人がいました。


罰ゲームではありませんよ?

好き好んで自分の顔写真のを着てるんです(笑)

この人は「実録・寅さん」みたいな人で

一箇所に定住することがなく

親戚が集まった時などは、彼の話題になると

「そういえばあいつ今、どこにいる?」となり

誰か彼かが持つ断片的な情報を総合して

何処に住んでいるのか、何をしてるかを

話し合われるような男性でした。


若い頃は旅回りの一座に加わっていたことも

あったそうです。


寅さんは奥さんと離婚して、長男と女児ふたり

合わせて子供三人を引き取りましたが

引き取ったものの面倒を見るのはまた別の話で

子供はおばあちゃんに預けて

寅さんは何処かへ行ってしまい

子供には、たまに会うくらいでした。


おばあちゃんは農家。

女児ふたりのうち、1人は嫁いで行きましたが

1人は身体に不自由なところがあって

あまり外には出られません。長男が農家を継いで

おばあちゃんとふたりで妹の面倒を見ました。


寅さんは、ごくたまーーに帰って来て

愛想良く調子の良いお喋りをふりまいて

また何処かへ行くのです。

寅さんがどうやって生きているか

誰も知りません。


長男はそんな寅さんを普通に見送ります。

数年後、寅さんは若いお嫁さんを連れて

地元に戻り飲食店を始めました。

が、しかし場所は田舎。狭い世界。

皆、寅さんをわかっています。

温かく応援とはなりません。


それでも細々と続けていましたが

苦しかったようです。

親戚にお店の応援をお願いしてたようですが

寅さんが願うよりは協力が足りなかったらしく


やがて「皆、俺をバカにしやがって」と

悪態をつくようになりました。


寅さんがそんな悪態をついてる場に

たまたま居合わせた事がありましたが


毎度おなじみの自分の顔写真をプリントした

Tシャツを着て激怒してましたから

全然迫力がなくて、寅さんには申し訳ないけれど

私にはめっちゃ面白かったんです。


そのうち寅さんはお嫁さんと何処かへ行って

また行方がわからなくなりました。

寅さんは亡くなりました。

独身に戻っていた寅さんを見送ったのは

長男でした。

おばあちゃんを見送り、妹を嫁がせ

もう1人の妹の面倒を見ながら

あまり一緒には暮らさなかった父親まで見送り

彼は農家を継いで頑張ってます。


「こんな家に嫁さんに来てくれる人はいない」と

本当はしたかった結婚を早々に諦めて独身です。


長男は

数年に一回は海外旅行に行ったり

ふるさと通信みたいなSNSを発信したり

同級生の選挙応援に熱心に取り組んだりして

彼なりの人生を楽しんでいる様子。


本当に、色々な人生があるもんだなあと

思わされるのです。




最後まで読んでいただいて、本当にありがとうございました😊