古典の世界へようこそ😊

お立ち寄り下さりありがとうございます。


第二十六段

気がゆるむもの。

精進の日のお勤め。先の長い準備。寺に長い間籠っていること。


第二十七段

人にばかにされるもの。

土塀の崩れ。

あまりにもお人好しと人に知られた人。


第二十八段

補足①『平安時代あるある』が書かれているようです。全体にリズム感がある段と私は感じました。リズム感の良さを感じさせる段は他にもありますが、こういう場合、作者は笑いを取りに行っている気が私はします。それが成功かどうかは別の話ですが😊


補足②当時の日常作法がうかがい知れる段になっています。こういう記録があるので、平安時代の生活史としても枕草子は貴重とされています😊


補足③ここで言う「憎らしいもの」とは、今風に置き換えると「チョームカツク」くらいな感じです😊



憎らしいもの。

急用のある時にやって来て長話をする客。遠慮がいらない人なら「あとで」 とでも言って帰せるけれど、気後れする立派な人だとひどく憎らしく面倒だ。 硯に髪の毛が入ってすられているもの。また墨の中に石が交じっていて、するとキシキシときしんで鳴るもの。


急病人が出たので祈らせようと、修験者を探すといつもいる所にいないので、別の所を探して待ち遠しいほど長い時間が経ち、やっとのことで待ち迎えて喜びながら加持をさせると、この頃は物の怪にかかわって疲れ切ってしまったのか、座るやいなや読経が眠り声になったのはひどく憎らしい。


たいしたこともない平凡な人が、やたらとニコニコして盛んに喋っていること。火鉢の火や囲炉裏などに、手のひらをひっくり返しひっくり返し、手を押しのばしたりしてあぶっている者。いったいいつ若い人などが、そんな見苦しいことをしたのだろうか。年寄りじみた人に限って火鉢のふちに足まで持ち上げて、話をしながら足をこすったりなどするようだ。そういう無作法者は人の所にやって来て、座ろうとする所をまず扇であちこち扇ぎ散らして塵を掃き捨て、座る所も定まらないでフラフラして、狩衣の前を膝の下に巻き込んで座るようだ。こういうことは取るに足りない身分の者がすることだと思うが、まずまずの身分の式部の大夫などといった人がしたのだ。


また酒を飲んでわめき、口中をまさぐり、髭のある者はそれを撫で、盃をほかの人に押しつける様子はひどく憎らしく見える。「もっと飲め」と言ってるのだろう。体を震わせて頭を振り、口の端まで垂れ下げて、子供たちが『殿様のところにうかがって』(今となってはどんな歌か不明)などを歌う時のような格好をする。よりによって本当に身分の高い人がなさったのを見たので「気にくわない」と思うのである 。


何かと人を羨ましがり、自分の身の上を嘆き、他人の身の上をあれこれ言い、ちょっとしたことでも知りたがり聞きたがって、話して知らせないと恨んで悪口を言い、また、ほんの少し聞いたことを自分が元から知っていたように、別の人にも調子に乗って話すのもひどく憎らしい。 何か聞こうと思う時にタイミングよく泣く赤ん坊。烏が集まって飛びまわり騒がしく鳴いていること。忍んで来た人と知ってて吠える犬。


無理な場所に隠して寝かせておいた男が、いびきをかいていること。また忍んで来る場所に、わざわざ長烏帽子をかぶって来て、それでも人に見られないように慌てて入る時に、何かにあたってガサっと音を立てること。或いは伊予簾(いよす=簾)などが掛けてあるのに、くぐって入る時に頭があたってサラサラと音を立てたのもひどく憎らしい。帽額(もこう=簾の上部に横に長くつけた布)の簾は、まして持ち上げた木端(こわじ=簾を巻き上げる芯にする細長い薄板)を下に置く音がはっきりと響く。それだって端を静かに引き上げて入れば全く音はしないのに。引き戸を荒々しく開けたりするのも、とても見苦しい。少し持ち上げるようにして開ければ鳴りはしないのに。下手に開けると襖などもゴトゴトと音がするのが際立って聞こえる。


「眠たい」と思って横になっているのに、蚊が細いかすかな声で寂しそうにブーンと唸って顔のあたりに飛びまわる。羽風まで蚊の体相応にあるのがひどく憎らしい。ギシギシと鳴る牛車に乗って出歩く人。自分が乗っている時はその車の持ち主さえ憎らしい。また、話をしてる時に出しゃばって、自分一人先回りする者。すべて出しゃばりは子供も大人もひどく憎い。ちょっと遊びに来た子供や幼児に目をかけて可愛がって、おもしろい物を与えるうちに慣れていつもやって来くるようになり、座り込んで道具を散らかしてしまうのは、ひどく憎い。 


家でも宮仕えしている所でも「会わないことにしよう」 と思う人が来たので寝たふりをしているのを、私が使っている者が起こしに寄って来て、寝坊だと思っているような顔つきで揺すったのは、ひどく憎らしい。 新しく仕えた人が古い人をさしおいて、物知り顔で教えるようなことを言って世話を焼いているのは、ひどく憎い。 今の恋人が、以前に関係した女のことを誉めたりするのも、ずいぶん前のことでもやはり憎らしい。ましてその関係が今のことなら、その憎らしさは思いやられる。でもそれほどでもないような場合もあるようだ。


くしゃみをしてまじないを唱えている者(クシャミをすると鼻から魂が抜けると言われた為「ひふみひふみ」とおまじないをした)。だいたい、一家の主人でないのが音高くくしゃみをするのは、ひどく憎らしい。蚤(のみ)もひどく憎らしい、着物の下で踊りまわって着物を持ち上げるようにする。犬が声を合わせて長々と吠えているのは、不吉な感じがするほど憎らしい。開けて出入りする、戸を閉めない人はすごく憎らしい。


完了



最後まで読んでいただいて本当にありがとうございました😊