ファーストキスはレモン味
私には、好きな人がいる。
ドSで、腹黒で、意地悪で。
でも、ほんとは優しくて、思いやりのある人間だったりもして。
容姿のカッコよさに惹かれて一目惚れをしてしまったのだけど、それはきっと内面から滲み出た雰囲気が、あの人を更にカッコよく見せていたのだろう、と私は勝手に思っている。
入学式の時に見かけたのが最初。
すぐに、同じクラスじゃないことを残念に思った。
それでも、少しでも近付きたいと思って同じ部活に入ることにした。
全く経験のない野球部のマネージャーをしているのが、その理由。
ルールもよく知らなくて最初の頃は大変だったけれど、あの人が頑張っている姿を見ていると、私も頑張れた。
けれど、部員とマネージャーという立場から何の進展もなく。
2年のクラス替えも同じクラスになれず。
一歩進んだかのように思われた野球部への入部は、足を踏み出した状態からずっと平行線であることに変わりはなかった。
思いきって告白しようと思ったりもしたけれど、フラれて気まずくなることを考えると、どうしても行動に移せない。
そうこうしているうちに、もう高校生活最後の年になってしまった。
そして、その年。
私に最大の転機が訪れる。
三年目にしてようやく、二歩目を踏み出せた状態。
つまり、念願の同じクラスになれたのだった。
更に奇跡は起こるもので、席も隣というポジション。
二歩目どころか、五歩目くらいまで進んだ気分だった。
そんな好機から数日経った、四月の某日。
今日は、私の誕生日だ。
とは言え、彼がそれを知っている訳がない。
いつもと何も変わらない様子で・・・
「ナツ!・・・ナツ!」
ぼんやりとそんなことを考えながらノートをとっていると、隣から不意に名前を呼ばれて驚いた。
「ど、どうしたの?沖田さん・・・」
先生に気付かれないように答えると、ノートが差し出された。
「俺のノートもとっといてくだせェ。今日はもう、眠くて・・・」
言い終わる前に沖田さんは力尽きてしまって、手からスルリと抜け落ちたノートを慌てて受け止めた。
「ちょ、沖田さん・・・!沖田さんってば・・・!」
全く起きる様子もなく、教科書を立ててうつ伏せている。
困った・・・と言えば困ったのだけど、それよりも頼られたことが嬉しくて。
自分のノートよりも丁寧に黒板の文字を写したのだった。
結局、沖田さんはほぼ一日中眠り続けてしまっていて、迷った挙句、余ったルーズリーフに他の授業の分のノートもとっておいた。
放課後、それと一緒に預かったノートも渡そうと思っていたのだけど・・・授業が終わると同時に、沖田さんはどこかに行ってしまったようで見当たらない。
掃除の場所にも行ってみたけど、来ていないようだ。
「どこ行っちゃったんだろ・・・」
そろそろ部活の始まる時間。
教室に鞄が置きっぱなしだから、まだ部活には行ってないと思うんだけど・・・
沖田さんを探していると、後ろから友達が私を呼ぶ声がする。
「やっと見つけた!探したよー!」
「あ、ごめん!何か用だった?」
「用だった?じゃないよ!コレ、誕生日プレゼント!放課後渡そうと思ってたのに、教室にいないんだもーん。」
「うわぁ・・・ありがとう!嬉しいー!家帰ったら、じっくり見るね!」
「うん!・・・で、何か探してたの?」
「あ・・・あの、沖田さんとか見てない・・・よね?」
「え?あぁ、そう言えばさっき屋上に行く階段の当たりで見かけたけど・・・」
「ほんと!?ありがとう!後でメールするー!」
「あ、ちょっと!ナツ!?」
呼び止める友達を背に、一気に屋上を目指した。
弾んだ息を整えながら、鏡をチェックして。
落ち着いたところで、屋上のドアに手をかけた。
「・・・沖田さーん?」
ぐるりと見渡すと、フェンスによしかかったまま沖田さんがコッチを向いた。
「あ、ナツ。どうしたんでィ?」
「どうした、じゃないですよ!ノート返そうと思ってたのに、いなくなっちゃうし・・・」
「あぁ、すっかり忘れてやした。」
「それに、もうすぐ部活始まっちゃいますよ?」
「もうそんな時間ですかィ。」
そうは言いつつも、そこを動く素振はない。
「・・・何してたんですか?こんなところで。」
「どこかにいい寝場所はないかと探してたんでィ。」
「え・・・今日、ずっと寝てたじゃないですか。」
「成長期なんでねィ。」
「あ、そう言えば他の授業のノートもとっておきましたよ。全然起きそうになかったから。」
「おー、助かりまさァ。さすがマネージャー。」
「いや、私は別に沖田さんのマネージャーじゃないですからね?」
否定はしたものの、実際それもいいかもしれない・・・とちょっとだけ思った自分が恥ずかしい。
「とりあえず、早く部活行きましょうよ!また土方さんに怒られますよ?」
「・・・めんどくせェけど・・・怒られるのも面倒なんで、そうしまさァ。」
ようやく歩き出した沖田さんの後ろを、遠慮がちについて歩く。
ほんとは、私だってもう少しこのまま二人でいたいのだけど・・・
ドアの近くまで来たところで、急に沖田さんが振り返った。
「そういや、その大荷物はどうしたんでィ?」
「え・・・あぁ、コレですか?あの・・・実は私、今日誕生日で・・・友達がプレゼントくれたんです。」
「へー、そりゃめでてぇ。」
全く感情が込められているようには聞こえなかったけど、それでも妙に嬉しかった。
「折角だから、沖田さんも何かください!」
もちろん、冗談のつもりだった。
くれるとも思ってなかったし、軽くあしらわれるものだとばかり思っていた。
「いいですぜィ?」
ポケットをごそごそと漁っている姿に、私の鼓動は高鳴った。
まさか、ほんとにもらえるなんて・・・!
「・・・あ。残念ながら、全部食っちまったみたいでさァ。」
「へ・・・?」
ポケットから大量に出てきた飴の包み紙が、風に吹かれて飛んでいく。
「ついさっきのが、最後の一個だったみたいでィ。」
さっきまでのドキドキが、一瞬にして静まった。
別に、もらえる物が飴だったからじゃない。
そうじゃなくて、もらえなくなってしまったことに、すごくガッカリしてしまったのだ・・・
「あ・・・そ、そうですか・・・・・・あ、でも気持ちだけで・・・全然嬉しかったし・・・」
明らかに落胆しているところを見せたくなくて、少し足早にドアへと向かおうとした。
その瞬間、名前が呼ばれて沖田さんが私の腕を掴んだ。
「まだ、やらねぇとは言ってないじゃねぇですかィ。」
「え、でも・・・全部食べちゃったって・・・」
「・・・ちょっと、目ェ瞑っててくだせェ。」
「え、何で・・・」
「いいから、早くしなせェ。」
言うとおりに目を瞑ると、さっきよりもずっと沖田さんとの距離が近付いたような感じがした。
「あ、あの・・・お、きたさん・・・?」
沖田さんの手が髪に触れて、さっき以上に鼓動が高鳴る。
ドキドキし過ぎて、心臓が痛いくらいに。

「最後の一個、ナツにあげまさァ。」
言ったと同時に、唇に柔らかいものが触れた。
そして、カランという音が口の中に響いた。
甘酸っぱい―――
最後の一個だと言った飴は、確かに今私の口の中にあって。
それが、レモン味であることをも知っている。
「ファーストキスはレモン味って、ほんとだったんですねィ。」
思わず目を開けると、間近にある沖田さんと目が合った。
「たんじょうび、おめでとーございまさァ。」
改めてそういうと、また沖田さんの顔が近付いてきたので、私はもう一度目を閉じた。
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
はい、って訳で
natsuちゃん、お誕生日おめでとうございま・・・したー!
すいません、ほんと遅くなってしまって(;´Д`)
大丈夫ですか?首、落ちてませんか?←
とりあえずあの、最初に自分でツッコんでおきたいところが。
どうして総悟はジャージを着ているの!!!
しかも、natsuちゃんまで!!!
駄文を書き終わってから気付きました・・・orz←(馬)
ごめんなさい。
どうして制服にしなかったの、自分んんんんん!!!
その辺は、何かもうヌルーしていただければありがたいと思います・・・w
それから、誕生日と言う設定に無理矢理持っていった感があるのも否めませんorz
誕生日だと言うのに、どうしても方向が逸れてしまうんですよね・・・
色々とごめんなさい!
でも、お祝いの気持ちはがっつり込めましたんで!
もう、「いらねぇよ!」ってくらい詰め込みましたんで!
受け取っていただければありがたく思いますw
総悟を先輩にしようか迷ったんですけど、折角同じ年になったんだから、ここはやっぱ同級生にしておくべきだと思いましてw
こんな感じに仕上がりましたw
後で、改めてお祝いの言葉とノア画を贈らせていただきますw
遅くなってほんとにごめんなさい!
そして、ほんとにほんとにおめでとうございました!
総悟と同じ年という貴重な一年、どうぞ楽しく過ごしてくださいましw
noah@何でファーストキスはレモン味って言うんだろうね?←