幸せスパイス
「悪い・・・今年もまた休めそうにねぇんだ・・・」
誕生日の一週間前、唐突にそう告げられた。
でも、何となく察しはついていた。
・・・と言うよりは、付き合い始めてからまだ一度も誕生日を一緒に過ごせたことなんてないから、むしろ最初から期待なんてしていなかった。
そう言ってしまうのは悪いけれど、そう思っておいた方が私もガッカリしなくて済むし、土方さんだって気を使わなくて済むのだから、今年も私はいつもと同じように振舞ってみせる。
「そんなこと、気にしなくていいのに。誕生日に一緒にいられなくたって、土方さんはちゃんとお祝いしてくれるじゃない。」
「でもよ・・・」
「今年も、土方さんの誕生日と一緒にお祝いにしようよ!私はその方が嬉しいし・・・ね?」
「・・・お、おぅ・・・」
言ったことは、全部本音。
だけど、少しだけ気分が沈んでしまったのは、その中に強がりが混ざっているからなのだと思う。
顔にも声にも出さないように、私はあくまで“いつもどおり”を装ってみせる。
残念に思う気持ちに気付かないフリをして、不自然に明るくならないよう意識しながら。
「ほら、仕事遅れるよ?」
「あ、あぁ・・・行ってくる・・・」
何か言いたげな顔をした土方さんの背中をグイグイと追いやると、私は笑顔で送り出した。
「行ってらっしゃい!」
バタンと閉まったドアの音が、部屋中に響き渡る。
私と土方さんの誕生日が近いから、土方さんの休みが取れた時に一緒にお祝いするのが、毎年恒例で。
それはほんとに嬉しいし、幸せなことである・・・とは思うのだけれども。
やっぱり、誕生日と言う特別な日に二人で過ごしてお祝いしてもらいたい・・・と思うのは、ワガママなことなのだろうか。
普通のカップルさんたちが当たり前のようにしていることが、私たちには出来ない。
それは、多忙な土方さんと付き合うことを決めた時に、覚悟したはずだったのに・・・
月日が経てば慣れると思っていたのに、むしろ付き合いが長くなるに連れて、もっともっとと欲が出てきてしまう。
「ダメだなぁ・・・私、ワガママだ・・・」
零した言葉の受け止め先なんてある訳もなく、胸に突き刺さったそれを、薄っすらと浮かび始めた涙が流してくれるのを待つより他なかった。
そして、誕生日当日。
日付が変わった瞬間に、土方さんが電話で「おめでとう」を言ってくれた。
プレゼントとデートは、次の休みまでお預け。
寂しく思う気持ちは変わらないけれど、気にかけてくれた土方さんのお陰で、少しばかり吹っ切れていた。
だから、その日は特にいつもと変わらない日を過ごす・・・はずだった。
家事をしながら、今日のお昼は何を食べようかな?なんて考えていたところに、急に携帯が鳴って。
ディスプレイに表示された名前に慌てて通話ボタンを押した。
「土方さん?何かあったの・・・?」
「十分でそっちに向かう。出掛ける支度しといてくれ。」
「え・・・えぇ!?な、どうしたの急に!?」
「説明は後だ。とりあえずすぐ出られるようにしておいてくれ。」
「あ、ちょ!土方さん!」
私の答えを聞く前に、電話は切れてしまった。
「すぐ出られるようにって・・・」
一応、朝起きてから髪は整えたりしていたけど、化粧もしていなければ服も着替えていない。
それを、たった十分で終わらせなきゃならないなんて・・・
考えてる暇はなかった。
色々なことは後回しにして、とりあえず準備に専念することにした。
―――十分後。
時間ピッタリに、玄関のチャイムが鳴る。
「準備できてるな?行くぞ。」
余程急いでいるのか、ドアを空けた瞬間に背を向けて歩き出してしまった土方さんの背中を、私は慌てて追いかけた。
「ねぇ、土方さん?どうしたの?何かあったの?」
道端にはパトカーが止めてあって、乗るように促される。
シートベルトを締めた瞬間、アクセル全開で車は動き出した。
煙草の火をつけたのを見て、私はもう一度同じ質問をしてみた。
「どうしたの、土方さん?そんなに慌てて・・・」
「あぁ・・・ちょっと急ぎの用でな。」
「用って・・・仕事の?」
「コレ、後三十分以内に届けなきゃなんねぇんだ。・・・ったく、車で一時間かかるところにどうやって三十分で届けろってんだよ・・・」
「え!?そんな遠くまで行くの!?って言うか、間に合わないんじゃ・・・」
「間に合わせるしかねぇだろ。」
お世辞にも一般人の見本になるとは言えないような運転で、車は目的地へと向かっている。
時計を見ながら間に合うことを祈り続けていた私の頭に、ふと一つの疑問が浮かんだのは、それから更に十分が経った頃。
「・・・そう言えば、何で私は車に乗せられてるの・・・?」
「・・・あ。」
土方さんも、説明していなかったことに今気が付いたらしい。
「悪いな、急がせちまって・・・」
「あ、うん。それはいいんだけど・・・」
土方さんを見ると、何だか言い難そうな顔をして口ごもっていた。
「・・・何かあったの?」
顔を覗き込んだ私をチラリと見遣った後、観念したかのように口を開いた。
「コレ届けた後、もう一箇所寄らなきゃなんねぇところがあるんだが・・・約束の時間まで、少し余裕があるから・・・よ。」
「・・・もしかして、デートに誘ってくれたの・・・?」
耳が赤く染まっているのが見えて、思わず笑ってしまった。
「こんな慌しい誘いで悪いんだが・・・・・・も、・・・・・・とすご・・・・・ったんだよ。」
「・・・え?何?」
「・・・・・・俺も、お前と過ごしたかった・・・んだよ。」
今度は、私の方が照れてしまった。
言った本人ももちろん真っ赤で、妙な空気が車内を漂っている。
「・・・あ、りがと。」
「・・・おう。」
それから、飛ばした甲斐あってどうにか三十分以内に目的地へと辿り着いた私たちは、無事に仕事を終え、束の間のデートをした。
「昼、何食いたい?」
「んー・・・そうだなぁ・・・レストランでも行ってみる?」
けれど、やっぱりお昼時はどこも混んでいて、空いてるラーメン屋へ行くことにした。
結局、土方さんと一緒ならばどこでもよくて。
それどころか、何も食べなくてもお腹一杯だったりするのだけれど。
頼んだラーメンが届くまで、私はいつもより上機嫌で色々な話をした。
土方さんも心なしかいつもより楽しそうに見えた。
「おまちどうさまでしたー。」
当たり前のようにマヨネーズをかけ始めた土方さんを見ながら、私はチャーシューを口に運んだ。
「ん・・・結構美味しいかも・・・」
それを聞いて、マヨをかけていた手が止まった。

「ん・・・」
そして、何故かチャーシューが差し出される。
「え・・・くれる、の・・・?」
「・・・だって、美味いんだろ?」
「あ・・・うん。」
確かに、美味しいとは言ったけれど。美味しいことも事実だけれど。
それはきっと、今日が特別な日で、土方さんと一緒に食べているから。
「・・・ふっ・・・あははは!」
「な、何だよ!いらねぇなら、俺が食っちまうぞ!」
「あ、ごめんごめん・・・!食べる!食べるから・・・・・・あーん。」
大きく口を開けて待っている私に最初は慌てていたけど、周りをキョロキョロと確認すると、恥ずかしそうに食べさせてくれた。
「・・・美味いか?」
「ん・・・うん!さっきのより、もっともっと美味しい!」
お祝いをしてくれたこと。
誕生日を一緒に過ごしてくれたこと。
わざわざマヨの付いていないチャーシューを食べさせてくれたこと。
どれもこれも、私にとっては最高のプレゼントで。
何よりも幸せな一日になったのだった。
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はい、ってことで・・・
sayakaさん、誕生日おめでとうございま・・・した!
今年も出遅れてしまってすみません(´・ω・`)
しかも自分、何故かsayakaさんの誕生日を5月5日だと思い込んでました。
それ、土方くんの誕生日ぃぃぃ!!!←
毎年お祝いさせてもらってるクセに、重ね重ねほんとにすみません。
sayakaさんの好きな食べ物をリサーチしにお伺いしたら、ルームに“肉”って文字を見つけたので、チャーシューでもいいかな・・・?みたいな。←え
そんな感じで、土方くんにはチャーシューをあーんしてもらうことにしましたw
嫌いだったらすいません(((( ;゚д゚))))
駄文が相変わらず駄文なのはほっといてくれて全然かまわない・・・と言うか、むしろ華麗にヌルーしていただければと思ってるんですけど。
それよりも、何だか土方くんの顔を可愛くし過ぎたような気がしてるんですが・・・気のせいじゃないよね?
カッコよくを目指していたはずなのに・・・どうしてこうなった/(^o^)\←もういい
後で、改めてお祝いの言葉とノア画を贈らせていただきますw
そして、次はもっとカッコいい土方くんに出来るように、日々精進しますw
ほんとにほんとにおめでとうございましたっ!
sayakaさんがこの一年を楽しく過ごせること、願っております!
noah@以上で、出遅れ祝誕!終了でっすw