アピシウスでのデジュネ | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

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こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

緊急事態宣言が解除され、だいぶ経った。用事があって銀座を訪れたので、アピシウスで昼食をとった。
その日は予約2組だけだったようだ。


まずは、ピエール・モンキュイのブラン・ド・ブランを注文し、デジュネが始まる。


アミューズ・ブッシュは、雲丹のフランだった。
洋風茶碗蒸しの滑らかさと上質な雲丹がこれからの食事の期待を膨らませる。


前菜は、北海道の太い立派なアスパラガス、帆立貝、ミル貝、鳥貝のサフランソースである。
上質な素材とふくよかなソースが素晴らしかった。


この皿には最上等のプュイ・フェッセを合わせる。



メインは、仔羊肉とリ・ド・ヴォーのソース・ペリグーである。
ソース・ペリグーはトリュフを使った豊潤なソースだが、アピシウスのそのクラシックなソースは感銘に値する。


その皿にはシャンベルタンを合わせた。
そのマリアージュは比類なきものとなる。



せっかく赤ワインを頼んだので、フロマージュも自分の好みのものを何種類かお願いした。
まずは、フロマージュ・フレに栗の花の蜂蜜をかけたものだ。
ヨーグルトのようにあっさりしているが、深みが違うし、少し苦味がありホワッとぼかしたような味わいのシャテニエのミエルとの相性は抜群だった。


その他のフロマージュは、栗の葉に包まれた山羊のチーズであるバノン、オランダ王室御用達のかなり古いゴーダチーズ、ウォッシュタイプの雄リヴァロを選択した。
こういうフロマージュと一緒に味わうと赤ワインが何倍も美味しく感じられる。
まさに至福のときだ。


これで、食事が終わったわけではない。
第二の楽しみ、デセールの幕が切って落とされる。
客が望むならワゴンの中にあるデセールを全種類取り分けてくれる。
客が食べる時間を逆算して作るアピシウスのデセールの美味しさは尋常ではないので、こればかりは全種類お願いしてしまうことになる。
メインを肉だけにしたのもそのためである。
ブリー・ド・モーを使った濃厚なチーズケーキ、最高品質の苺を散りばめたピスターシュのケーク、フレッシュの宮崎マンゴーなどを使ったフルーツロールケーキ、絶妙な硬さと味あいの絶品クレーム・キャラメル、


ブラッド・オレンジのソルベと胡椒のグラス。
ソルベは口の中に入れると忽ち溶け、果実分だけが口内に残る。
胡椒のグラスはサンタマリア・ノヴェッラの上等の香辛料を食べているかのようで美味しい。


紅茶とグレープフルーツのムースのケークや


モンブランも勿論、作り置きをしておかなければならないパティスリーのものとは、レベルが違う。


飲み物は、カプチーノよりもコーヒー分を多くしたマキアートのような濃さのものをリクエストしたら、その通りのものをサーブしてくれた。
それも飲み終わったら、黙ってお代わりを持ってきてくれる気の遣いようである。


メーテルドテルは新しい方にかわっていたが、優しく気を遣ってくれる素晴らしい方だった。
競技用のサービスに徹している他の店のメーテルドテルのそれとは違う温かいサービスだった。
アピシウスの親会社は紙コップ自動販売機販売数日本一の会社なので、資金的にはそれ程心配いらないようだが、それでも銀座のこの一等地でのこういう状況の中での営業はたいへんだと思う。
陰ながら応援したいものだ。