富山ふじ居の日本料理 | ジャン=ピエールの霧の中の原風景

ジャン=ピエールの霧の中の原風景

こだわりの食とお酒を味わった思い出や情報を綴ります。

少しまとまった休みがとれることになったので、富山・金沢を旅行した。
初めて北陸新幹線かがやきに乗り午前11時前に富山駅で降りる。
最初の目的は日本料理店ふじ居での食事である。
周りの風景からすると少し異様な建物の前に辿りつき入店する。
ここは祇園味舌で勤務されていた方が富山の地元の食材を使い日本料理を提供してくれるお店と聞いた。


店内は明るく綺麗である。
料理を作っているところが見えるカウンター席に案内される。
北陸に来たらやはり日本酒であろう。
富山の地元でしか味わえない美味しい日本酒を大将にお任せした。
まずは、太刀山純米吟醸生酒を出してもらった。
このお酒は辛口で力強く生酒の風味に溢れすこぶる美味しかった。


いい酒に出会えテンションが上がったところに八寸が出される。
鯛の子や山葵の茎、富山名物生蛍烏賊のぬた和え、すり身のカステラ等、春らしく見事な料理が並ぶ。
どれも美味しかったが、その中でも特に作り手のセンスを感じたのは蕨のペーストを挟んだ最中である。
香り高く感心させられるものだった。


太刀山が美味しくて私はあっという間に飲み干してしまった。
次は、メニューを見て頼みたいと思っていた勝駒の純米酒である。
勝駒はとても小さい蔵たが、どの日本酒も一つひとつ丹精込めて造られている。
勝駒純米酒の味わいは優しく素朴で香り高くバランスのいい日本酒だった。


そして、白海老真薯が出される。
出汁が素晴らしく、真薯は香りも味わいもふわっとしていて美味しい。


お造りは、新湊の真鯛と4月に解禁になったばかりの岩瀬の白海老である。
真鯛は落ち着いて存在感のある味わいで、白海老は口の中でトロッととろけ甘みが口の中に残る。
こんな美味しい白海老を味わうのは生まれて初めてあった。


お任せの日本酒をもう一杯いただく。
林の純米吟醸生酒である。
綺麗な酸味と旨みが残るいい酒だった。


焼き物は富山の鱒寿司で有名な桜鱒。
それも氷見産の最上等品を焼いてくれた。
炭火で焼かれた桜鱒は焼き加減はもとより桜鱒そのものが極めて美味しい。


次は、富山の山奥岐阜県に近い大沢野で採れた野芹とクレソンにホタルイカソースをかけたものだった。
野菜に力強い野生の味わいがして嬉しくなる。


続いては、天然ヒラメと葛の桜餅が出てきた。
道明寺仕立ての桜餅の中にはヒラメがしのばせてあり、トロリとした葛の銀餡がかけられている。


食事は富山大門素麺の薹味噌添えであった。
出汁が優しい。
蕗のとうを使った薹味噌が春の香りを伝えてくれる。


最後は再び桜餅が出された。
今度は関東の長明寺山本やと同じようなクレープ状の桜餅で餡は小豆の皮を残した素朴で絶妙な甘さのものだった。


一緒に抹茶もたててくれる。


富山の地物を活かしながらまっとうな京料理を味わえる素晴らしいお店であったことはいうまでもない。
次回は寒いが香箱蟹が味わえる時期にまた訪れたいものである。