加藤彦次郎氏の句集『方丈記』の中から、その句集名にもなっている『方丈記』を素材とする三十八句の連作の中から、面白いなと思った句を紹介したい。ある新聞の句集紹介の記事の中で、竹中宏氏が語るように、「身辺のなんでもない事物をなんでもなく描けば俳句になるという、そんな一般に流布している教えは、氏を納得させない」ように、この一連の作品も鴨長明の『方丈記』を題材としつつ、作者の自在な想像を作品化したものだ。「凶年や牛の睾丸草を擦り」「黒ぐろと鴨が流るる夜火事かな」「炎上や七珍万宝空にあり」「発心は葱折れてゐる匂ひより」「而して庵結べり春の山」「手は奴足は乗り物春の雲」「蓬長け世の衰ふる気配あり」「捨てし世をすたすた歩む竹落葉」「高麗笛となるべき竹を伐りにけり」「惑ひつつ澄みたる独楽となりにけり」「大沢も広沢も鴨帰ること」。その自在な詠みっぷりが見事だ、と思う。
今日は、午前中は会議、午後は赴任者のガイダンスで、少々疲れた。新しい環境の中で、不慣れなことも多くて、気疲れしてしまうようだ。それにしても、前の職場に比べ、LANが整備されていて、自分の机にいてネットに繋がったり、内部資料を取り寄せられたり、プリンターが使えたりと、快適な環境はちょっと気分が良い。昨日は一日中、教材準備に費やし、授業教材を現文・古文ひっくるめ十数種類作る。ネットが自由に使えるので、古典教材の補助資料を集めるのが簡単で随分重宝した。説話の「浦島太郎」を教材とするので、丹後の浦島伝説や浦島神社の説明や画像、丹後風土記逸文など、色々資料を集め、それを再構成して教材に仕立てる作業はなかなか楽しい。時間的な余裕があれば、いろいろ工夫できる余裕が生まれるので、休業期間中というのはありがたいものだ。一太郎の文字の中抜き機能を使って、今はやりの書写本ふうなものを作ってみたりもした。結構うまく出来たので、はやく実際の授業で試してみたいという気持ちにもなるものだ。
本来は、最寄りの駅からバスを使って通勤する手はずなのだが、気分的に余裕があるので、朝夕の行き帰りは、かなり長い時間を徒歩で行き来している。朝はそれでも、7時40分には職場に到着するので、余裕を持って仕事に取りかかれる。今朝は、北山の稜線が雪で白く見えたのだが、それでもさほどの寒さを感じなかった。昼は、かなり温かく、夕方駅へと向かいながら、川沿いの桜並木が満開になっているのを眺めつつ帰る。
『鼎座』第8号の感想を少しずつ頂いている。ありがたいことだ。「発想の森」についても、感想をいただいている。こんな事は、めったにないことなので、これもありがたい。