さぁ、最終章(予定)です。
今回は前回までの2つの記事と異なり、アプカを楽しむための記事ではなく、アプカを楽しいものにしてくれなかった販売側についてボロクソ言っていく内容になります。不愉快になるようならブラウザバック。

 

今回のトピックとしては、以下の通りです。
・旧デジカの流用失敗
・ゲームバランス
・コレクション要素
(アニメと並行したメディアミックスの一つとしてのアプカ)

一応、前回・前々回の記事を合わせてこれが三部作の3つ目になる予定だったんだけど、思いのほか、問題を書き上げるときりがないくらい問題しかなかったので、この3つ目がさらに3~4記事になると思われます。良ければお付き合いください。

 

<旧デジカの流用失敗>
さて、ご存知の通りアプモンカードは「旧デジモンカードのフォーマットを流用して作成したカードゲーム」です。この点については、公式側が各玩具店へのアピールポイントとして宣伝していたことでもあります。
このブログにも、趣味レベルですが私が現在も開かれているデジモンカードの非公式大会に出た時のデッキレシピ等を載せたりしていますが、実際それだけ旧デジモンカードは楽しいです。
一方で、旧デジモンカードは非常にルールが複雑・難解で、かつインフレを何度もあり一部の強いカードについては適切にメタを張らないと手も足も出ないという酷いバランスを持っているゲームでもあります。幸い、カードプールが広く、ブースターが24弾(+2)まで出た上、デジヴァイス01という「デッキ外からカードを持ってくるカード」が存在するおかげで、なんとかバランスを持ち、多種多様なデッキ(旧デジカでは「デック」といいますが、ここは便宜上デッキで統一)が見られました。それでも、客観的に見ると「新しいカードゲームを作る際にはあまり参考にしたくないカードゲーム」です。


もちろん、アプモンはデジモンユニバースという位置づけであるため、過去に人気があった(そしてプレバンでも現在進行形で商品を出せば売れている)先輩ポジションの旧デジカを模して作るというのは、話題作りや旧デジカファンを釣るための選択肢として無しでは無いのでしょう。ただしそれは、旧デジカが持っていた「悪かったところ」をしっかり認識し、かつ1番のターゲットであるはずの低年齢層にも理解できる仕様に改変することが、当然の前提になるはずです。実際どうだったか、3弾で終わったという事実と合わせてみれば明白ですね。
実際に出されたものを見た時に出た言葉はこれに尽きます。
「これ作った人、デジモンカード触ったことある??」
旧デジカがもっていた悪いところは悪いまま、ルールがとてもめんどくさい。体験会を実施してルールの認知度を上げようとした点は評価しますけど、何回か参加しましたが、正直教えるには難しくて、ティーチングする方も大変だし、小さい子たち全然ついて行ってなかったです。また、本当に何も考えず作ったんだなって思わされたのは、公式サイトの「Q&A」で追加されるルールの多さです。どう考えてもルールブックに落とし込むべき基本的な裁定が、Q&Aで補足されるという事態。これらのほとんどは旧デジカユーザーが体験会や問合せ窓口から問い合わせた結果追記されたものばかりです。つまり、言われるまで制作側が想定できていなかった内容があれだけあると言っても過言では無い状況です。


さらにもっと言えば、「これ作った人、このアプモンカードで遊んだことある??」まで言いたくなります。
別にね、完全に旧デジカのコピーじゃなくても、アプカで独特のバランスのいい環境ができればそれでいいと思うんですよ。でもね、旧デジカ時代において「汎用対策カードがあった状況でさえ害悪と言われたようなカード」を対策カード抜きで実装するなんてことを平気でされると、「あなたたち作るとき何も考えてなかっただけじゃなく、作ったものでテストプレイすら怠ったでしょ??」としか言えなくなります。アプカのルールちゃんと分かって、ちょっとでもそのカード使ってみたら、「こいつがアプモンBOXに出た時点で、相手他に何もできないわ」ってシチュエーション一発でわかると思うんですよ。ちゃんと、それぞれのカードがどんな条件で活躍できるか、逆にどんな条件で不利になるかを考えていれば、2弾発売時点で、「アプモンBOXに立てるアプモンがたったの3種類しかいない」なんて馬鹿な環境には決してならないはずなんですよ。結果、「作成側がこのカードゲームで遊んだことがない」というのが100%わかってしまい、将来性を期待することは2弾の時点でできませんでした。

 

というわけで、根本の問題は「作成側が旧デジカを知らない」かつ「作成側が自分たちで作ったカードゲームで遊んだことすらない」なんですが、それを踏まえて、このカードゲームの欠陥を1つ1つ見ていきたいと思います。前提が「旧デジカを流用している」なので、旧デジカについての知識がある程度ある前提での記載になるのはご了承ください。
一番わかりやすい公式サイトの「遊び方」にそって順に見ていきましょう。


①アプ合体条件
デジモンカードでいう「進化条件」に相当します。超アプモン以上では、アプモンのゲーム・アニメの仕様にそって合体元が記載されていますが、旧デジカで例えるならば、これは「ジョグレス進化」と同じシステムになっています。
これは割と初見で「え!?」ってなるポイントです。一見、何も問題ないと思いがちですが、そう感じるのは多分1~2弾では超アプモンまでしか存在せず、3弾になっても極アプモンに進化することはなかったから。実際、極アプモンに進化するには決まったカードを手札から4枚、神アプモンに進化するには決まったカードを手札から6枚消費することになります。手札が6枚制限なのですから、準備フェイズでこれを揃えるのは至難の業です。かつ、仮に理想的な手札が揃い一気に進化できたとして、手札は2枚or 0枚です。進化しても、アプリンクが一切できず、ちょっと攻撃あげた低グレードの相手にころっと負けて退化してしまうでしょう。毎ターン1段階ずつ上がるということを考えても、1回負けたら退化するというルールを考えると、1回分の進化(2枚)をした上で、アプリンクしつつ、次のターンに使う一部のアプ合体用のカードは手札にキープする…なんて器用なこと、100%できません。そう、このカードゲーム、アプ合体していけばしていくほど、不利になるゲームなのです。真面目に上のグレードに上がろうとするなら、アプリドライヴを駆使して戦闘を避ける一択しかないのです。
まぁ進化して手札的に不利になるっていうのは、旧デジカからそうです。それは間違いないし、そのため「争いはやめましょう」を緩衝剤として使っていたのも事実。したがって、アプ合体をメインに考えるなら、旧デジカからあるこの問題に解答を出したうえで流用しなきゃいけなかったのです。しかももっと悪いことに、このジョグレス進化を1段階目から使っています。旧デジカでは少なくとも1段階目(Ⅲ→Ⅳ)の進化コストは山札(ネット)で手札を圧迫しませんし、援護能力(アプリンクの前身)の使用も1枚制限(ジョグレスが多かった初期には援護能力すらない)ということもあり、ちょっときついけどまだなんとかなる程度の状態だったのが、アプカでは「1段階の進化に手札2枚消費、アプリンクに手札2枚消費」と、より燃費が悪化しています。旧デジカからジョグレス進化というシステムを流用した結果、アプリンクという独自のシステムとのかみ合わせが最悪で起こった悲劇ですね。結局神アプモンは実装まで行けなかったわけだけど、神アプモンが実装されたところで、それをバトルアプモンとして使うことは一切なかったんだろうなぁと思います(極アプモンもそうなりましたし)。
余談になるかもしれませんがもう一つ、正直アプ合体条件欄っていらないと思います。アプモンのアプ合体条件は、ゲームですでに決まっています。アプリとアプリの組み合わせでグレードアップという考え方なので、デジモンのように「アグモンから進化するグレイモン」がいれば「ギルモンから進化するグレイモン」もいるなんていう世界ではなく、逆に、ハックモンの進化先はレイドラモンしかないという袋小路。つまり進化の自由度がゼロなんですね。ドガッチモンのカード7種類くらいありましたけど、全部アプ合体条件は固定。分岐進化ができるのなんて、本当にごくごく一握りです。「アップグレード!」というカードが存在したことや、そもそも環境に生き残れるカードが少ないことで、逆にあまり気になりませんでしたが、正直この枠、カードゲーム上では死んでる枠なんですよ。せっかくこの枠つくったんだから、ここでゲームのオリジナリティ出すくらいのことは、してもよかったんじゃないかなぁと。

 

②バトルタイプ、③属性、④攻撃
この3つは切っても切れない関係なのでセットで話しましょう。
もともとこのABCの3すくみは、デジモンの「ワクチン・データ・ウィルス」の3属性を反映して作られました。まぁシーズン2からはバリエーションを増やす目的か、この属性相性とは切り離されることとなりましたが。AがCに強く、BがAに強く、CがBに強いといった感じに設定されています。AとCは、数値的にはAの方が大きくなりますが、Cには「Aを0に」する効果があり、バトルタイプAは成長期(レベルⅢ)であっても、バトルタイプCの究極体に簡単に勝てるという、よく考えなくても酷いバランスを持っていました。
一方で、アプモンにも属性はあります。3すくみのような単純なものではなく、ナビやソーシャルといったアプリとしての特性を反映させたカテゴリ分けがされており、属性相性もちょっと覚えにくいですが、ゲームをしていればすぐに慣れる程度の簡単なものです。残念なことに、それがこのアプモンカードでは一切反映されず、デジモンカードを単純に流用したABCに無理矢理当てはめられてしまいました。まぁ、対象年齢を下げるためにゲームのシステムを簡略化することはありだとは思いますが、絶対簡略化すべきところはそこじゃない。ポケモンカードでさえ、タイプは10種類以上あっても子どもがちゃんとプレイしているし、むしろ「Aを0に」なんて認識できても「理不尽すぎて受入れたくない」ようなルールを使い続ける方がわからない。単純に、「新しいルール考えるのもめんどくさいし、このままでいいでしょ」って想いが溢れんばかりに伝わってくる、つらい。
「Aを0に」もさることながら、攻撃の数値が全て3桁なのも子ども向けとしては酷いと思います。単純に攻撃力を比べるだけなら、どんなでかい数値でもいいと思いますが、アプリンクやオプションを使う度に「+100」「+500」「2倍」「3倍」なんて計算がやってくるから、大人の俺でも途中で電卓使いたくなります(使ってました)。また、これもデジモンからの悪しき習慣ですが、攻撃力をどんな順番で上げたとしても「○倍/半分」計算は足し算の前に行う、「○倍」は累積しない、でもワルダモン+メディックモンの特殊能力は「全部計算した後の攻撃力を半分にする」っていうルール、本当に作った側でもちゃんと理解しているのでしょうか(実際、体験会のルール解説マニュアルですら間違っていました)。ぶっちゃけ、攻撃力なんて無駄に0つけず、1桁か2桁でもよかったのではないかと思います。

 

⑥アプリンク効果
デジモンカードと大きく異なるところですね。援護能力というものを発展させて作った新しいシステムで、通常時はアプモン1体につき、プラグが一致するアプモンを2体までアプリンクすることができます。
ここで頭に「?」が浮かんだ人は、鋭い。
設定的な話をすれば、アプモンは凸プラグと凹プラグの2つのプラグを持っていますが、ベースアプモンに同時にアプリンクできるのは1体だけです。また、本来はどんなアプモンともアプリンクできます。つまり、アプカのアプリンクはオリジナルの設定を何も生かしておらず、どっちかといえば、旧デジカの援護能力の方がオリジナルの設定に近いという…。(援護能力にも対象を指定するものもありますけどね) しかもこの2枚までアプリンクでき、「プラグ増設!」を使用すればそれ以上アプリンクができる…という独自ルールは、上述のアプ合体だけで進化するというシステムに強く干渉してしまうという皮肉な結果となりました。あえて言いましょう、なんでこんなことしたんだ馬鹿野郎!
そしてこのプラグというのも面倒な代物で、作成側が「どんな効果が有用なものか理解できていない」ために非常に格差が大きく、プラグの不遇さにより採用されないカードも多く生み出してしまいました。これについての詳細は、別記事で長々解説しているので今回は省略します(コメットモンとワルダモンの登場により、■の問題はある程度解決していますが)。

 

⑦アビリティ
みなさん知っていました? これ、デジカでは「特殊能力」って言ってましたけど、アプカでは「アビリティ」っていうんです。
じゃあ「特殊能力なし」ってなんだこの野郎!!
ちょっと独自の言葉使ったと思ったら、結局この統一感のなさっていうね。
さて、アビリティですが、公式サイトにあるように「アプモンがもともと持っている能力」です。④の攻撃力や⑥のアプリンク効果は、グレードによってそれほど大きく変動はしないので、基本的にはこのアビリティの性能がカードの価値に直結します。もっと言えば、属性やその他あらゆるテキストよりも個性を付与できる項目になります。
各弾40体近くのアプモンが登場しているのだから、さぞバリエーション豊富な魅力が発見できることでしょう… 
はい。そうだったらよかったね。
ご存知のように、多くの並アプモンには「特殊能力なし」という残念な記載が見られます。本当にね、馬鹿なんじゃないの?(n回目) 登場するアプモンのうち半分くらい、テキスト0の無個性カードとか…。前も書いたけど、1弾ならそれでもいいでしょう。少しずつユーザーに慣れてもらうため、シンプルなカードから始めて、次第に複雑なカードが出てくるとか…。でもね、それは本当はスターターパックくらいで終わらせなきゃいけない。だのに2弾になっても、3弾になっても、レアリティNの並アプモンに特殊能力を頑なに持たせない。その結果、ただ名前が違うだけの、個性もなく採用価値もないカード、あえていうけどゴミクズカードが何十種類も出てくることに…。
確かにアプモンは進化ルートが固定だから、個性がなくても進化後が個性が強ければ、その進化前がどんなに魅力なくても縁故で採用される可能性はあります。でも、アプ合体条件が無視できる「アップグレード!」なんてカードがあるもんだから、その可能性すら潰れ、結局はアビリティを持つ優秀なRの並アプモンや、数値的にとびぬけたコピペモンみたいなカードだけが採用されていくという現状に。
じゃあ超アプモンやR並アプモンは個性があったかというと、全然そうじゃない。弾ごとに何パターンか能力に分けられるだけ。しかも、パターンごとに価値に雲泥の差がある始末。実際に環境トップを務めてきたカードは、1弾では「アプリンクで攻撃アップ」系のカード、2弾以降は「引き分けを勝ちにできる」カードと対抗馬の「引き分けにされない」カードだけ。それ以外のパターンのカードは、お話にもならないレベルでした。
なんでここでデジモンカードを参考にしないんでしょう。それこそ、特殊能力のバリエーションの参考になるものが山のようにあったはずです。別に40体に個性が出るようにテキスト全部1から考えてほしいなんて言いません。各弾40種類…いやその半分でもいい、デジモンカードからバリエーション豊かに拾ってくるくらいはできたんじゃないでしょうか。
前述したとおり、デジモンカードだってなんどもインフレや格差を経験したけれども、なんだかんだカードプールが広かったおかげでバランスが保たれていたのです。なら、そのカードプール全部を参考にして、いろんなタイプのカードを作れたはずじゃないかしら。いや、それがデジモンカードを流用した販売側の、そしても後発組の義務だと思うんですよ。アプモンはアニメを1年スパンで作成し、それにそってメディアミックスをすることが分かっていたのだから、商品展開できても多くて5弾まで。それを見据えていたら、(1弾は初心者向けという免罪符があったとしても、)2弾でのあのバリエーションの乏しさは問題です。
ごく稀に、ミエーヌモンのような過去の害悪カードをそのまま持ってきたみたいなやつもいましたが、それを持ってくるならセットで持ってこなきゃいけないカードだってあるでしょうと言いたくなるほどに、何も考えずに持ってきているのもまた問題。
ゲームのアプモンは、それぞれアプリワザ、アプリンク効果と魅力的な差別化要素を持っていて、バトルさせるには強いアプモンを出すでしょうが、アプリワザやアプリンク効果は並アプモンでも採用価値がある、よくできたゲームでした。カードゲームは、本来ならその魅力的な差別化要素を、先輩のデジモンさんをお手本にして、さらに魅力的にしてアピールできるはずの舞台だったと思います。現実って、なんて残酷なんでしょう…。

さてさて、分量が多くなってきたので、まだ1つ目のトピックの途中ですが(この後オプションカードやフェイズの話もする予定)、1回記事としては区切りましょう。


ただ、これだけ1つの側面からしか見ていなくても、アプモンカードを1文でまとめると、冒頭あたりで言ったように「デジモンカードを遊んだことがないやつが、形だけ真似して中途半端なもの生み出して、しかも自分たちで遊んでみることもせず適当に世に出しているカードゲーム」だということがバレバレなんですよね。本当、企業としてやらなくちゃいけない最低ラインくらいは超えてほしかったなぁ。

<続く>