「・・・留守電?」

傷心しきって気づかなかった。

誘われるように、再生ボタンを押す。

【メッセージは2件です】


Pi~

『あー、真一です。えと、元気・・・なら、連絡くれないか?』

(あ・・・そういえば電話、してないな・・・)

結城真一、故郷の東風原(ひがしかざはら)にいるひとつ年下の亜矢の恋人。

つまり遠距離恋愛。

最近、帰ってきてから長電話する気力がなくて、真一に電話をかけていなかった。

『いつでもいいから・・・夜中でも、待ってる。ほら、うちの親、あまり家にいないから気にしなくていいし、

 ちゃんと亜矢のこと話してるから、もし居ても大丈夫だからさ。時間あったら、電話して。それじゃあ、また』

真一の気遣いが少し嬉しかった。


Pi~

『加藤です。佐倉、ちょっとウチに来るの休みなさい。

 教授もそう言ってるから。・・・人の心は底なしじゃないからね。痛いときに休まないと・・・

 気持ちの整理がついたら、またいらっしゃい』

「・・・・・・」

軽く溜め息をつく。

加藤の言う通りかもしれない。少し、疲れた。

動物が好きで、獣医になりたくて、少しでも動物の事が知りたくて患畜の世話に通っていたが、

少し先走りすぎたかもしれないと思う。

ゆっくりとシャワーを浴びて、明日は自主休講にしてゆっくり休もう、と思った。


・・・


シャワーから上がり、髪を拭きながら考える。

(明日、どうしようかな)

久しぶりに丸一日使える日を作ったのだから、パーッとなにか思い切り遊ぼうと思う。

・・・が、しかし、しばらく考えて思い当たった。

「病院の人たち以外に、こっちに知り合い居ないや・・・」

同級生や授業が重なる相手などとはついぞ話したことも無い。

もちろん、動物にかかりきりで、サークルや部活動などに手を出している訳でもない。

(・・・ひとりぼっち、だな・・・あたし)

聞こえる音は低く唸る冷蔵庫の音、カチカチと妙に響く時計の音。

たったそれだけの、今の亜矢の空間。

ここから出ても、この街にはほかに亜矢の場所はないのだ。

「はあ・・・」

ことさら大きく溜め息をついて、ぽすん・・・とカーペットの上に座り込む。

テレビをつける・・・バラエティ番組でもやっていれば、少しは気がまぎれるかと思ったが、

ろくな番組がやっていなかった。

適当に明るい声が聞こえるチャンネルに合わせ、リモコンを放り出す。

つけておいて画面も見ず、壁掛けの時計の秒針を見ること、5周・・・

「・・・・・・」

さびしい、とつぶやきそうになって、ぎゅっと口をつむぐ。

誰に聞かせようというのか。

誰が悪くて、何をどうすれば解決するのか。

・・・どうにもならないモノに文句を言うのは、いやだった。

改めて時計を見る・・・9時過ぎ・・・

「・・・電話、しようかな」

少し遅いが、真一はいつでもいいと言っていたし。

ほんの少し、甘えてしまおう。

そう思って携帯電話を取り、そう多くない登録から結城家の番号を呼び出す。


・・・


『もしもし?亜矢かっ?』

「うん、あたし・・・ごめんね、最近電話してなくて」

『いや、うん・・・いいんだけどさ、なんかあったのかと思って、心配だったから』

「なんにも・・・」

ないってば、と続けようとして、ちくっと胸が痛む。

ずっと動物の世話ばかりをして、ユキが死んで大泣きして、気がついたら誰も友達がいなくて寂しくて・・・

なんにもないわけではない。

しかし、それでも真一には心配をかけたくなかった。

「・・・なんにもないってば、ただ学校が大変で、疲れただけ」

『そか、よかった、亜矢の事だから、冷房かけて腹出したまま寝て、夏風邪でもひいたのかと思った』

「バカにすんなっ!」

微笑みながら、声を少しだけ荒げる。


・・・


10分ほど話をした。

『・・・うん、まぁよかったよ、楽しそうで』

「うん・・・」

『じゃ、また』

「っ・・・」

瞬間。

さびしいよっ、と言いたくなる。

また、誰も居なくなる・・・亜矢だけの世界になるのが怖くて。

『ん?』

「ん、んーん、なんでもない。またね」

『ああ、また』

ブツッと声が聞こえなくなり、規則的な発信音だけになる。

しばらく未練がましく電話を握り、じっと見つめて・・・ふぅ、と溜め息をつく。

真一に心配をかけたくない。

でも、わかって欲しい。

相反する感情で胸が苦しくなるのを息にして吐き出して、電話を充電器に戻す。

まだ時間は早いが、そのまま寝ることにした。



・・・・・・

・・・



5へ続く・・・


【文も改行も滅茶苦茶で読みづらくて申し訳ありません><】


Mステなどの嵐映像をエンドレスで垂れ流す毎日

♪LoveRainbow♪で

さ~せ~るぅ~よぉ~♪
の所のニノの目は…


なんで、あんなにキラキラしてるんじゃ~い!


なんであんなに、はにかみが可愛いんじゃ~い!!


くそ~惚れる~><

あんな笑顔を出せる人間になりたい!!

なれるなら転生したい!!

そしてモテモテになりたい!!



そういえば、ニノっていつからあんなにもお金大好きキャラだっけ?www

ユキは飼い主が到着すると、安心したかのように息を引きとった。

8歳だったという・・・ウサギとしては頑張ったほうのようだった。

泣きながら礼を言い、冷たくなったウサギをタオルにくるんで抱えて去る飼い主に

教授たちと一緒に頭を下げながら、亜矢もボロボロと涙をこぼした。

「佐倉・・・泣くな、なんて言えないけど・・・」

「・・・うっ・・・ううっ・・・」

「・・・・・・」

加藤はそっと亜矢の背中を撫で、そのまま撫でるように背中を叩いて、部屋に戻るように促す。

ぐすぐすと鼻を鳴らしながらとぼとぼと歩いていく亜矢の背中を眺めつつ、

加藤と教授は顔を見合わせる・・・。

「1匹死ぬたびに、佐倉くんは泣いているねぇ・・・」

「ピュアなんですよ、慣れろ・・・とも言えませんし」

「うむ、患畜を大事に思うのは大切なことなんだがね」

ふぅ・・・と二人同時に溜め息をつく。

ふたりは沈痛な面持ちはしていたものの、泣くほどまでに悲しい訳でもくやしい訳でもない。

慣れてしまっているのだ。

良くも悪くも、命を扱う現場で経験が長いという事。

亜矢が涙に暮れるのは見ていて痛ましく、何か励ましや慰めをかけてやりたくはあるが、

その痛みを忘れて久しい人間としては、自分のペットでもないのに泣くほど胸が痛む気持ちがある亜矢が眩しくもある。

「私達が汚れてるってことにしときましょうか」

「そうだなぁ・・・今はまだ、泣くだけの余裕があるからな」

「彼女が獣医になったら、そんなことも言っていられませんけどね」

「それは、わたしらが言って教えることではないよ」


・・・


外はすっかり暗くなっていた。

亜矢は小さな身体をさらに小さく丸めて、とぼとぼとアパートへの道を歩く。

「・・・あ、サラダ油切れてたっけ・・・買って帰らなきゃ・・・」

小さくつぶやいてスーパーに足を向ける。

ひとり暮らしを始めて生活力が身についてきていたが、習慣のように歩きながらも、

買ったサラダ油でなにか料理をする気にはなれなかった。

数日間、世話をしていたユキの体温。

痩せてはいたがふっくらした毛並み。手が覚えているそれが永久に失われてしまったという事実の重さに、

亜矢は打ちのめされている。

「・・・8歳、かぁ・・・ウサギって8年で死んじゃうんだ・・・」

レジに並びながら、虚ろな声でつぶやく亜矢に、前に並んでいたおばさんがビックリして振り向く。

そして、サラダ油の小型ボトルをじっと見つめている亜矢の姿を見て、思わず凝視。

『最近のサラダ油にはウサギの豆知識でもかいてあるのかしら?』

とでも言いたげな視線を亜矢は軽く気づきながらも無視した。

行動を改める気力も無い。

そのまま、精算をすませて、家路に着く。

「・・・ユキ・・・先週はコジロー。その前はモルだったっけ。その前はケン、その前はチビ、その前は・・・」

たった3ヶ月のあいだに死別した犬猫ウサギにシロテンやオウム。全部で十数匹。

そのたびに涙を流し、その動物のあまり長いとは言えない一生に思いを馳せていた。

そして、精神が疲れ果ててきていた・・・。


・・・


「・・・ただいま」

ガチャン・・・とドアの鍵を閉める。

手探りで明かりをつけて、服を脱ぐものそこそこにベッドの上に倒れこむ。

蒸し暑かったが、エアコンをつけるために起き上がるもの面倒臭い。

(このまま寝ちゃおうかな)

薄目を開けてぼんやり考える。

時間はまだ8時。

動物の臭いでわりとすごい事になっている自覚はあるので、キチンと風呂に入って、洗濯をしなくてはいけない。

しばらくして義務感と無気力のあいだをさまよった後、観念して身を引き起こす。

のろのろと起き上がり、服を脱いで洗濯機に放り込む。シャワーをそのまま浴びようと思ったが、

脱衣所にタオルが無い事に気づき、部屋で昨日とりこんだまま畳まずに放り出していたタオルをかき集める。

ズボラになったのはひとり暮らしのせいか、はたまた動物の世話に忙しいせいか・・・

上京したばかりの頃は面倒でもきちんと畳んでいたのだ。

悪い習慣がついては困るから。


・・・と、タオルを抱えて脱衣所に戻ろうとした亜矢の目に、赤い光が映った。



・・・・・・

・・・



4へ続く・・・