どんな国にも岐路は訪れるから | 逢茶喫茶σ(・ε・`)逢飯喫飯

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A Counterpoint of the Formless Self and the Omnipotent

中国を巡る言説にありがちなものとして、


人件費の高騰で「世界の工場」でなくなったら国家破綻する!


…といったものが挙げられる。



しかし、こうした言論には、とある語られざる大前提が隠されていることにお気づきだろうか。


すなわち、中国人はイノベーションを起こせない、という差別感情だ。



もし、「差別」という言葉に違和感があるのなら、


先進国特有の傲慢とか、エスノセントリズムと読み替えても良い。



実のところ、一世紀前の西欧諸国なんかも、アメリカやアフリカ、アジアの国々に対して


「何百年かかっても、彼らが自分たちに追いつくことはない」


といったことを公然と口にしていた。



ところが、現実はどうだろう。


今や覇権は米国に移り、イノベーションの中心は明らかに西欧諸国の外側にある。


そして、西欧人はその事実を深く自覚している。だから、必死に生き残ろうとしている。



実際問題、現在の中国が「世界の工場」の地位を追われたくらいで破綻するものだろうか。



確かに高度成長には一時的な停滞が付きものだが、


日本が石油危機による停滞を乗り越えて再浮上したように


中国が世界に対して新しい価値を提供するような国に変化する可能性は十分にある。



何と言っても、中国は人口大国であり、イノベーションの核となる人材が豊富だ。


自国民を当てにしないとしても、豊富な資金力で世界中から人材を呼び集めることも出来よう。


(※そのどちらの手法も使えるのが、日本や韓国との違いでもある)



結局のところ、中国の命運は、中国共産党の政治手腕次第であり、


彼らがよほど無能でない限り、何とか危機を脱することだろう。



また、中国国内での汚職や政治腐敗を糾弾する声もある。


蔓延する政治腐敗が政治的安定を損なう、といった理屈だ。


しかし、それも典型的な「先進国ボケ」に過ぎない。



まず、どんな国であれ、発展途上である段階では、必ず汚職や腐敗は付きもの。


その点では、マレーシアであれ、ベトナムであれ、タイであれ大差ない。



特に拝金主義が蔓延しがちな高度成長期であれば、腐敗の程度は一層強まる。


また、発展途上の段階で政治的な潔癖さを推し進めると、却って国益を損ないかねない。



そもそも、自分たちの国がかつてどんな風であったか、よく思い出してみて欲しい。


金権政治、官民癒着、医者への心付けやお礼金など、全て常態化していたではないか。



中国の高速鉄道がいかに手抜き工事で作られているかを批判する人たちは、


山陽新幹線のトンネルに海砂が使われていた、という事実を忘れてしまったのだろうか。


阪神大震災で高架橋が見事に転倒してしまった、という悲劇を忘れてしまったのだろうか。



また、こうした腐敗は、西欧諸国でも広範に見られたものである。


すなわち、現代中国で起きている諸問題は、所詮、どの国でも一度は通る道なのだ。



それらを適当に解決できなければ、


例えば、20世紀に栄華を誇ったアルゼンチンのように没落していくし、


解決できれば、晴れて先進国への仲間入りというわけである。



どんな国にも岐路は訪れる。中国も例外ではない。


しかし、他国のことを心配している暇があったら、もっと自国のことに目を向けるべきだろう。