日本における基礎科学の未来 | 逢茶喫茶σ(・ε・`)逢飯喫飯

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A Counterpoint of the Formless Self and the Omnipotent

今日行われた参議院本会議において、与党に所属する 女性議員 の質問が大変興味深かった。


その内容は以下の通り(※なお、実際の発言内容とは論理構成が異なる)。




日本人は自国を「科学技術立国」と自認しているが、それは本当だろうか。



西洋では、科学(science)と技術(technology)を別個のものと捉えており、


特に前者、すなわち「基礎科学」を尊重する気風がある。



一方、日本は科学の応用面、すなわち「科学技術」に傾注するあまり、


ともすれば、海外から発信される科学知識に「タダ乗り」しがちな傾向がある、


とは言えないだろうか。事実、過去にはそのように批判されたこともある。



以上を踏まえ、文科省の基礎科学に対する認識を問いたい、といったような内容だ。




この質問に対する文科相の返答は、



・日本の科学技術は世界最高水準である


・基礎科学分野についても配慮していきたい



…というものであったが、どうも質問の趣意を理解していない節がある。


あるいは、意図的に分からないふりをしているのかもしれない。



上に挙げた女性議員は、あくまで科学と技術は異なるという認識に立った上で、


日本政府が後者ばかりに傾注して、前者を蔑ろにしているのではないか、


と疑義を呈しているのだが、大臣答弁は両者を混同しており、適切な回答になっていない。




実際のところ、日本の科学技術(technology)は高い水準を維持しているとは思うが、


基礎科学の分野に関して言えば、それほどでもないかもしれない。



無論、国内にノーベル賞級の科学者が点在することは確かだが、


多くの場合、職人芸的な色合いが強く、お世辞にもシステム的な合理性があるとは言い難い。


(※だからこそ、数学や宇宙物理学といった「思弁的」な分野に強みがあるというわけだ)



言い換えれば、日本の基礎科学分野には、


極少数の天才と多数の廃人によって構成されており、


中間層に厚みがないため、全体としては効率性を欠いている。



また、基礎科学に対する教育予算の割合が驚くほど小さいため、


優秀な人材は海外へと飛び出してしまう。


あるいは、海外で実績を積んでから、国内の大学へ「逆輸入」される例もある。



ただし、日本の場合は、民間企業が基礎科学分野を重視する傾向があり、


これが学術界における当該分野の弱さを補っている、という点を忘れてはならない。


(※昨今の経済状況にあっては、補ってきた、と過去形で捉えるべきなのかもしれないが)



その象徴がノーベル化学賞を受賞した 田中耕一 氏(※島津製作所)や、


世界発の量子テレポーテーションを実現した 古澤明 教授(※元ニコン社員)


といった在野の研究者たちと言える。


(※ただし、両者とも基礎科学というよりは、工学に近い分野ではあるが)



ただし、国際競争の激化により、日本企業が基礎分野へ投資する余裕はなくなりつつある。


もし、本気で「科学技術立国」の立場を維持したいと願うのならば、


減りつつある民間投資分を補う程度の予算計上があって然るべきだろう。




でも、たまには哲学のことも思い出してあげて下さい…。


(※先進国中、これほどまで哲学分野が軽視されてる国も珍しいんですわ)