《中国最新情報》10周年を記念し、編集長の李さんに質問をぶつけてみました。(聞き手前野)
1 なぜ《中国最新情報》を発行し始めたのですか。《中国最新情報》を発行し続けている理由は何ですか。
99年ごろ、この情報誌を発行し始めたと記憶しています。当時、私は雑誌「中国経済週刊」の編集長として勤めていました。この雑誌は紙媒体ですからコストが高く、購読してくれる読者はどうしても一部の企業や法人に限られていました。中国の経済情報に関心や興味がある誰もが気軽に入手できる情報を提供できたらいいなあと考えていたちょうどそのころ、誰もがたたで発信できるメールマガジン「まぐまぐ」が登場し、この雑誌を送り出したわけです。
2002年以降、僕は会社から独立して日中ナレッジセンターを創立しました。それ以降は、セミナーやコンサルティングの仕事で、前よりも拘束時間がふえ、このマガジンの発行がどうしても続かない状況に追い詰められてしまいました。幸いなことに、副編集長の前野さんとのすばらしい出会いがあって、彼女を初めとするボランティアの皆さんがこのマガジンを支えてくれました。彼らの献身的な努力がなければ、このマガジンはとっくに廃刊に追い込まれていたと思います。ですから、10年というこの日に、自分が一番感無量に思うことを申しますと、彼女、そしてこのマガジンの翻訳をしてきたすべての方に「謝謝」という言葉に送りたいということです。
今、会社としてこの雑誌を発行するメリットは、直接的には見られないですが、日本の皆さんに中国の情報をもっと知ってもらうために、このマガジンが存続する価値が十分にあるという意味で発行し続けています。まして、自分の手と皆さんのお力で10年間育ってきた「子供」ですので、この「命」を大切したいとの「感情」は、10歳の子供を育ててきた親しかわからないだろうと思っています。
2 《中国最新情報》が想定している読者層は何ですか。その読者に提供したい中国ニュースとはどういうものであるべきだと考えますか。
僕の仕事は、ずっと対中ビジネスに携わってきた日本人のサラリーマンを対象に情報サービスをしてきたので、想定した読者は、やはり彼らですね。彼らは、やはり中国の経済情報を中心に求めています。または、一般論的な情報よりも、特定分野やテーマに基づいた深みある情報を入手したいと考えています。そのために、毎回のマガジンは、いつも一つのホットな話題やテーマの情報を集めて、「特集」として取り上げようとしています。
基本的に、特定の読者にとって、役に立つ情報を網羅することは不可能ですので、毎回、発行されたマガジンから、一点でも二点でも目をぱっと開くような情報があれば、それでありがたい話だと思っています。
3 10年前(の11月)、どこで何をしていましたか?
残念ながら、ほとんど記憶に残っていません。ただし、その時期は「中国経済週刊」の編集長として勤めていた時期ですので、日々雑誌の締め切りに神経にとがらせていたはずで、10年後の今日と似ている日々を送っていただろうと思います。
日本にいるか限り、山を登るような日々が続き、いつでも「一瞬でもうっかりすると転びかねない」という危機感があります。この悲観論的な考えは中国人らしくないですね。むしろ日本人から「伝染」されたきた「病気」だと思っています。
4 10年間で、日本の中での中国の存在はどのように変化したと思いますか。
10年前、日本人からかなり感動を覚える親切に接することが多かったです。そのときに接した方々の暖かさがいつまでも記憶に刻まれています。その後の10年間、自分が成長し、恩返しをしていければという精神的余裕も多少出てきましたが、日本人がどんどん自分から離れていってしまい、むしろより厳しい目で自分のすべてを見始めているようです。この個人的な体験は、日本の中で中国の存在というものが変化した状況と重ねて見ることができるような気がします。
5 なぜ日本に来たのですか。日本にとどまって生活しているのはなぜですか。ホームシックにはならないのですか。
日本に来たのは、全く「偶然」といったことです。ただし、日本にとどまって生活しているのは、かなりの理由があります。
これまでの人生を振り返って見ると、この選択はよかったと思います。何よりも、自分にとって、もし海外で生活をするという選択をするのならば、やはり日本は、どんな国よりも自分に合っているような気がします。男っていうのは、何よりも事業の成功なしには、生きる喜びが半減されるんじゃないかと僕は思っていますから。日本は、僕にそのような可能性を与えてくれました。
文科系の僕にしてみれば、中国人の文科系には同じ漢字の文化、同じ文化のルーツがある日本は出世しやすい国だと思っています。
6 中国大陸の中国人に日本を紹介するとき、真っ先に紹介することは何ですか。
「あなたは、本当の日本を知らないと断言できます。この国のよさも弱さもわからないのが実情でしょう。日本人のもっとも尊敬される民族性といえば、それは「愚直さ」にあると思っています。中国人がそれだけでも学んだら、世界にとって本当に怖い(よい意味で)存在になるでしょう」。
7 日本と中国との文化的な差異を感じることはどういうときですか。日本人と中国人の根本的な違いは何ですか。
見る角度を変えれば、その根本的な違いも変わってきますが、あえて言えば、「根本的な」違いはないでしょう。同じ人間ですから、実に共通点は多いのです。
ただし、相手を見つめる「色めがね」を外した上で、しかも相互に相手に対する「コンプレックス」を排除し、初めてそのような結論に至るとの条件付きでです。