職業病を本人に明確な過失がない限り、雇用者に責任があるものとして、現在は労働基準法などでその予防と労働環境の維持が事業者に義務づけられている現代にも、トンネルや鉱山で掘削を行なっていた者に塵肺が発生し補償を求め大規模な訴訟が起こったり、林業従事者のチェーンソーによる白蝋病などがあり、最近では手話通訳者に起こる頸肩腕症がある。労働上の疾病や障害は労働災害の一部であり、雇用者によって加入される労働者災害補償保険により補償の対象とされるが、例えばサラリーマンのうつ病による自殺が労働災害にあたるかどうかは、しばしば司法に判断を委ねられる複雑な問題である。

最近ではタクシー運転手が長時間タクシーの運転席に座り続けた後、事務所へ歩いていった際に心不全で死亡した事例で、エコノミークラス症候群と同様の症状で死亡したとして労災認定が成されたケースもあり、現在でも就労環境によって発病したとして係争中の裁判は多い。

なお、糖尿病は力士の職業病と呼ばれているほか、編集者の過剰な喫煙や、キーパンチャーやプログラマの腱鞘炎や近視なども職業病と表現されているものの、これらは職種に直接関係したものではなく、個々の作業環境の問題や、不摂生に因るものである。これらは狭義の職業病には含まれないと思われる。
放射線と職業病 [編集]

キュリー夫妻(ピエール・キュリーとマリ・キュリー)はラジウムやポロニウムといった危険な放射性物質の検出を行なう過程でかなりの長期に亘って放射線を浴び続け(恐らく体内に入り込んだ放射性物質による内部被曝などの影響もあっただろう)体を蝕まれた。これも職業病のうちに入るだろう。ウラン産出国の採掘現場では労働者の理解不足から、イエローケーキを何の放射線防護も施さずに取り扱い被曝するケースも見られ、国際的に問題視されていることなど、教育によって回避されるべき職業病も存在しうる。
業務上の負傷との関連性の深い業務上の負傷に起因する疾病を第1号とし、次いで主として有害因子の種類等に応じて、別表第2号から第7号までが大分類として分類された。
 
この場合において、じん肺症及びじん肺との合併症については、じん肺症が、粉じんへの沈着及びそれに対する肺組織の反応であること、その病態が不可逆性であること等の点で化学物質等による他の呼吸器疾患とは異なること等の理由により独立の大分類(別表第5号)とされた。
 
また、いわゆる「職業がん」については、これが発がんの原因として化学物質のほか物理的因子である電離放射線によるものがあり、さらには特定作業工程従事労働者のがんについては、現在のところその原因を特定の化学物質に帰し難い場合が少なくないこと等の理由により、独立の大分類(別表第7号)とされた。
 
さらに、例示列挙主義を明確にするために、別表の第2号、第3号、第4号、第6号及び第7号の末尾に「その他」の規定(いわゆる包括的救済規定) が設けられ、さらに別表第8号として旧規定第37号と同趣旨の規定が、別表第9号として第1号から第8号までに該当する疾病以外の業務上疾病をとらえるための「その他」の規定(包括的救済規定)がそれぞれ設けられた。
 
なお、単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)による疾病は、これを告示によって定めることとしたが、これは化学物質の数が多いこと、症状・障害が複雑多様であり、それらをできるだけ詳細かつ具体的に規定する必要があるが、別表中に掲げることは技術的に困難であること、科学技術の進歩に応じて労働の場における取扱い物質の種類やは握される疾病の内容が急速に変化することも予想され、この変化に機動的に対処する必要があること等の理由によるものである。

労働基準法第8章の災害補障事由の一であり、かつ、労災保険の保険事故の一である業務上疾病の範囲は、労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)第85条において定められているが、同条の規定は昭和22年の労働基準法の施行時に定められて以来今般の改正に至るまで実質的な改正は全く行われたことはなかった。

この間に、急速な産業技術の進歩、産業構造、就業構造の変化等社会経済及び労働環境の変化に伴い、業務上疾病についてもその病像が変貌し、新しい要因による疾病が発生してきている。すなわち今日みられる中毒や職業がん、特殊な作業態様に起因する神経系の症恵等の疾病には、昭和22年労基則制定当時その発生が予測されなかった疾病が少なからず含まれている。

これらの業務上疾病の災害補償ないし労災保険給付を行う上では改正前の労基則第35条(以下「旧規定」という。)第35号その他の規定により対処してきたところであるが、規定の明確性を欠く憾みもなしとしないので、旧規定の例示規定を業務上疾病の現状に即さないまま放置することが適切でない点も生じてきた。そこで労働者の災害補償又は労災保険給付の請求権の適切な行使や労災保険における業務上疾病の認定等の迅速公正な事務処理の推進を図るとともに、業務上疾病の予防や治療に役立つ適切な疾病統計の作成に資するため、同条の見直しを行い、その規定を全面的に改正することとしたものである。

なお、改正省令の施行に関連して、今後においても産業・労働の実態の変化、医学の進歩等に伴って生ずる新しい要因による業務上疾病や業務上疾病の病像、病態の変化に対処しうるよう定期的に労基則別表第1の2(第35条関係)の規定及びこれに基づく告示の内容の検討を行い、その結果によって所要の規定の改正を行う予定であるので、念のため申し添える。