労働基準法第8章の災害補障事由の一であり、かつ、労災保険の保険事故の一である業務上疾病の範囲は、労働基準法施行規則(以下「労基則」という。)第85条において定められているが、同条の規定は昭和22年の労働基準法の施行時に定められて以来今般の改正に至るまで実質的な改正は全く行われたことはなかった。

この間に、急速な産業技術の進歩、産業構造、就業構造の変化等社会経済及び労働環境の変化に伴い、業務上疾病についてもその病像が変貌し、新しい要因による疾病が発生してきている。すなわち今日みられる中毒や職業がん、特殊な作業態様に起因する神経系の症恵等の疾病には、昭和22年労基則制定当時その発生が予測されなかった疾病が少なからず含まれている。

これらの業務上疾病の災害補償ないし労災保険給付を行う上では改正前の労基則第35条(以下「旧規定」という。)第35号その他の規定により対処してきたところであるが、規定の明確性を欠く憾みもなしとしないので、旧規定の例示規定を業務上疾病の現状に即さないまま放置することが適切でない点も生じてきた。そこで労働者の災害補償又は労災保険給付の請求権の適切な行使や労災保険における業務上疾病の認定等の迅速公正な事務処理の推進を図るとともに、業務上疾病の予防や治療に役立つ適切な疾病統計の作成に資するため、同条の見直しを行い、その規定を全面的に改正することとしたものである。

なお、改正省令の施行に関連して、今後においても産業・労働の実態の変化、医学の進歩等に伴って生ずる新しい要因による業務上疾病や業務上疾病の病像、病態の変化に対処しうるよう定期的に労基則別表第1の2(第35条関係)の規定及びこれに基づく告示の内容の検討を行い、その結果によって所要の規定の改正を行う予定であるので、念のため申し添える。