かつてコスト削減は、中国進出の代表的な動機であったが、現状はどうでしょうか?
企業活動の主要なコストである人件費、仕入費(原材料費)、税務コストについて、中国の現状をご説明したいと思います。
人件費の削減
一般に人件費は、製造業平均で売上の30%前後、サービス業平均で売上の40%前後を占め、
売上に占めるウエイトが非常に大きくなっています。
人件費削減を図る際、重要な指標となるのが、「単位労働コスト」という考え方で、
これは「賃金を労働生産性(労働者1人当りが生み出す付加価値額)で割る」ことで算定でき、
一般にこの数値が低い程、費用対効果が高いと判断されます。
この単位労働コストについて、日本、中国、その他アジア諸国の比較を行ってみたいと思います。
単位労働コストによる比較を行うために、まずはアジア諸国の賃金を比較します。
下図は2010年のアジア各国の一般工の月額賃金の比較ですが、中国の人件費が
沿岸部を中心に上昇した結果、その他アジア諸国と比べ、決して割安な水準では
なくなってきている事が分かります。
次に、アジア諸国の労働生産性を見ていきましょう。
前述の通り、労働生産性は、労働者一人あたりにつき、どれだけのアウトプットを生み出したかを測る尺度で、[労働生産性=生産量(付加価値)÷労働量(従業員数)] で算定することができます。
以下で計測する労働生産性は、「購買力平価(PPP)換算労働生産性で評価されたGDP÷就業者数」
として表されるもので、GDPは1年間に国内で生み出された付加価値であるため、この労働生産性は、
付加価値ベースの労働生産性ということになります。
ちなみに、2010年度の日本の労働生産性は OECD34 カ国中 第20位で、68,764米ドルであり、これは米国の66.8%に該当し、OECDの中位レベルをかろうじて維持している状況となっています。
これに対し、中国の労働生産性水準は 中国が11,612ドルで第82位であり、日本企業の生産拠点として中国の比較対象となっているベトナム(5,373ドル)やインドネシア(9,167ドル)こそ上回るものの、タイ(14,300ドル)の約8割、マレーシア(35,154ドル)の1/3程度にとどまっています。
ただし、実質労働生産性上昇率(2005~2009 年平均)をみると+11.7%(世界93カ国中 第3位)と、急激な上昇が続いています。(インド、バングラディシュ、ミャンマー等は正確なデータを得る事が困難なため、割愛。)
これらのデータから、単位労働コスト(賃金を労働生産性で割ったもの)を算定すると、
日本(*注1)を100とした場合、中国(*注2)は46.8、ベトナム(*注3)は39.6、
インドネシア(*注4)は45.0、タイ(注5)は、40.8となります。
*注1 横浜を基準に算定 *注2 大連を基準に算定 *注3 ハノイを基準に算定
*注4 ジャカルタを基準に算定 *注5 バンコクを基準に算定
(※社会保障費の負担率は考慮されていない。)
以上のように、人材のコストパフォーマンスという観点で考えると、中国は決してアジアNo.1とは言えず、他にも複数の選択肢はあると言えます。
しかし、実際に進出する際には、その他、社会保障費、輸送コスト、税率(関税、付加価値税、所得税等)、インフラの整備状況、原材料の調達コストと品質、政治的リスク、法律の整備状況、国民性、言語の問題、教育の普及状況等、様々な周辺要素を加味する必要があるため、注意が必要です。
次回、仕入費用(原材料費)の削減について、中国の現状を見て参りたいと思います。
尚、中国展開の要点については、「中国ビジネス進出ガイド」をご覧下さい。
以下のページから無料でダウンロード可能です。
http://jcbridge.jp/download.html


