毛沢東の大躍進や文化大革命により疲弊した中国経済を立て直すべく、鄧小平氏が打ち出した対外開放政策を契機に、中国は外資優遇政策の一環として経済特区や経済技術開発区を設置し、安価な労働力を武器に先進諸外国企業の誘致に成功し、海外からの直接投資の増大と技術移転により、「世界の工場」と言われるまでに急速な発展を遂げた事は周知の事実です。
しかし現在、中国経済は大きく変貌を遂げており、外資企業にとっての中国進出の意義も大きく変化しつつあります。当カテゴリー「中国進出の意義」では、中国経済の現状と将来展望を踏まえ、日本企業にとっての中国の意義を考えてみたいと思います。
日本企業にとって、中国関連ビジネスの意義は主に以下の3つに大別できます。
1、世界一の潜在的巨大市場の開拓
2、コスト削減
3、資産/債務の清算、整理
現在これらの重要性がどのように変化し、将来どのような変貌を遂げるのか、これから各々の概要を述べて参りたいと思います。
■世界一の潜在巨大市場の開拓
1、中国市場の将来展望
2012年現在、中国は既に名目GDPで日本を抜き、米国に次ぎ世界第二位の経済規模です。
また、購買力平価ベースのGDP比較では、中国は既に日本の約2倍、米国の約2/3を占める経済規模にまで成長を遂げています。さらにIMFの試算では、米中差が年間10%前後のペースで縮小する可能性があり、購買力平価ベースでみれば、2015年には米中がほぼ拮抗、2020年までには完全に逆転する計算となります。
この購買力平価ベースでの比較の意義については疑義もあり、あくまで参考程度として捉えるべきですが、いずれにせよ、将来的に中国は「世界一の巨大市場」へと変貌を遂げると予測されています。
消費者の購買力を示す代表的な指標のひとつに、新車販売台数がありますが、富裕人口の増加を背景に中国の新車販売台数は急増しており、2009年の新車販売台数は前年比46%増の1364万台となり、不況に喘ぐ米国を抜き世界一に躍り出ました。以下は2010年の国別の販売台数とそのシェアを示していますが、中国が世界全体の26%を占めるまでに躍進しており、二位の米国との差が大きく開きつつあります。
2012年、マッキンゼー・アンド・カンパニーは、2020年にかけて中国の新車販売台数は年間8%程度の伸びが期待され、世界の新車販売台数の35%を占めるまでに成長するとの予測を発表しました。
また、非必需品や贅沢品市場の伸びも顕著となっています。
フランスのエセック大学の調査では、2015年までに中国富裕層による非必需品消費総額は1兆2934億8千万香港ドルに達し、これは、全アジア太平洋地区の非必需品消費総額1兆5554億香港ドルの83%に達する試算となります。
これら1兆香港ドルを超える消費のうち、「自動車、パソコン、携帯電話」および「観光・レジャー」の消費潜在力は3千億香港ドル以上、「飲食・娯楽」も2千億香港ドル以上で、消費額が最小の「ショッピング」でさえも1500億香港ドル以上となる事が予測されるとしています。
またベインアンドカンパニーのレポートによると、中国の09年の贅沢品市場の売上高は前年比約12%増の96億ドルで、世界の贅沢品市場の27.5%を占め、初めてアメリカを抜き、日本に次いで世界第二の贅沢品消費国となり、5年後には世界トップシェアを獲得すると予想しています。
ボストン・コンサルティング・グループは、上海で2010年3月に開催された「第2回高級ブランドハイレベルフォーラム」で、中国の贅沢品市場の消費総額は2015年には2480億元に達するとの研究レポートを発表しました。
これら巨大な購買力の源泉となっているのが、中国で急増中の富裕層人口です。
2012年11月、ボストン・コンサルティング・グループは報告書「中国の新世代の消費推進力」の中で、2020年には中国の富裕層の消費者数(世帯年収が2万米ドル以上と定義)が2億8000万人に達し、その年間購買力は、3兆1000億米ドルに達すると予測しており、この富裕層の消費者数が中国消費市場の主要な原動力となるとしています。
さらに、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・フォーゲル氏は、中国は2040年には、全世界の40%もの購買力を占める国へと変貌すると予測しています。
ただし、これらの専門家の予測の多くは、現在のトレンドをそのまま未来にあてはめる傾向にあり、過度に楽観的であるとの指摘が多いのも事実です。一人っ子政策等の影響で中国の人口ボーナス(生産年齢人口の比率が相対的に最も大きくなる経済成長に最適の人口構成)が2013年前後で終了することなど、その後の成長を鈍化させうるリスク要因も多く、数値予測についてはあくまで参考程度とすべきだと思われます。
それにしても、近い将来、世界一の経済大国となる可能性が想定される中国市場は国際展開を図る日本企業にとって、外せない市場のひとつと言えるでしょう。
2、人民元高の恩恵
人民元が実際の価値より大幅に低く固定されている事(どの程度低いかは諸説あり)が、世界的な貿易不均衡の原因となっていると主張する欧米諸国の圧力の回避及び国内のインフレ抑制等の目的で、2010年6月より人民元が管理変動相場制に移行し、当面の間、徐々に人民元高(対米ドル)が進行すると見込まれています。
この段階的な人民元切り上げにより、今後より一層、中国の購買力が高まる事が予想されております。
3、中国に進出した日本企業の実情(輸出志向型から現地販売型へ)
しかし、日本国内では「中国で実際に儲かっている企業は少ない上にリスクが高く、進出しても割に合わないのでは?」というような慎重論が未だに根強く、二の足を踏んでいる企業が多いように思われます。では中国進出企業の実情はどうなのでしょうか?
現在、中国経済の急成長を背景に、在中日系企業の現地販売比率は顕著に増加し、これまでの輸出を目的とした進出から現地販売を目的とした進出に変化しつつあります。
経済産業省の海外事業活動基本調査によると、2004年における産業全体の中国現地販売比率は48%で、製造業では46%になっていましたが、僅か5年後の2009年度にはそれぞれ65%、67%と大幅に上昇しました。
輸送機械、食料品、鉄鋼、生産用機械などは中国現地販売型の代表で中国現地販売比率は9割前後まで上昇し、これら産業の企業にとって中国は既に巨大「市場」として位置付けられていることが窺えます。
一方、業務用機械、情報通信機械、汎用機械、繊維等の輸出比率は5割を超えていますが、これら産業の企業も中国現地販売比率は着実に上昇しており、中国市場への依存度がますます高くなっているのが現状です。
経産省の海外現地法人動向四半期調査によれば、日系企業の売上高に占める中国現地販売率は1997年の第1四半期の31%から2011年4-6月期には62%超へと倍増しています。
以下は、日本企業の海外主要市場での売上高と、売上高経常利益率の推移を示す図ですが、海外市場の売上高は、2000年前後をピークに欧米の売上高の割合が減少に転じた一方、その頃より逆に中国の売上高の割合が急速に増加し、2010年度の中国の売上高は米国の約半分、欧州全体とほぼ同等のレベルにまで増加しています。
また、海外市場の売上高経常利益率をみると、1998年から2010年にかけて米国での利益率は長期的低下傾向を示している一方で、中国での利益率は右肩上がりで上昇しており、2008年のリーマンショック後も利益率は減少せず、2010年は15%前後で推移しています。
以下は地域別投資収益率ですが、リーマンショック以降、中国の投資収益率は欧米を大きく上回っています。
また以下は、日本企業を対象とした中国を有望とみる理由のアンケート結果ですが、現地マーケットの規模や将来性が中国進出の主要な理由となっている事が分かります。
このように国内市場の低迷に喘ぐ先進諸国にとって、中国はまさに垂涎の的である市場環境が整いつつあり、日本企業の継続的発展にとって、世界一の潜在力を持つ中国市場の開拓が急務となっております。
尚、中国展開の要点については、「中国ビジネス進出ガイド」をご覧下さい。
以下のページから無料でダウンロード可能です。
http://jcbridge.jp/download.html






