【中国事業撤退の方法と注意点】
中国に子会社等を有する日本法人にとって、中国事業を撤退(終止)の方法として、
以下の方法が挙げられます。
■中国事業撤退(終止)の方法
1、解散及び清算
中国子会社の経営期間が満了したり、あるいは継続経営が困難となる等、その他の解散事由が生じた場合、中国子会社を「解散」することが出来ます。
「清算」は、債務の全額を弁済する可能性がある場合のみ可能となります。中国子会社が解散、清算の手続きを開始する前に、解散申請を行い、設立時の審査批准機関(各地区の対外経済貿易委員会)から解散承認書を取得し、批准を得る必要があります。
企業は解散を批准された日から15日以内に清算組(清算委員会)を設立し、清算組を設立した日から60日以内に新聞に清算公告を掲載し、3ヶ月以内に清算報告書を作成した後、登記の抹消手続き及び清算金の分配が可能となります。
2、出資持分の譲渡
合弁企業の出資者が、持分譲渡を行う場合は、まず合弁パートナーの同意を取得した上で、持分譲渡に係る董事会決議を行い、持分譲渡契約書を作成する必要があります。
持分譲渡に係る董事会決議後、審査認可機関(対外経済貿易部門)の認可を取得し、批准証書(認可証書)の変更手続きを行い、批准証書変更日から30日以内に工商行政管理局にて登記変更を行います。
3、減資
2001年の独資企業法・合資企業法実施細則の改定により、投資総額や生産経営規模に著しい変化等あった場合、減資に係る董事会の満場一致の決議の上、認可機関(対外経済貿易部門)の許可を得て減資することができます(ただし、実務上、外資系企業の減資は極めて困難です)。
4、破産
「破産」は企業が債務超過の状態に陥り、自社で完全な債務弁済が不可能(債務不履行)となり、裁判所の監督の下、企業資産の清算(換金)と債権者への分配を行う方法です。
「外商投資企業清算弁法」第27条に「企業の財産が債務弁済に不足する場合、清算委員会は裁判所に破産宣告を申請しなければならない」と規定されています。
受理機構は、企業所在地の管轄裁判所で、裁判所の審査後、法定条件に相応する申請と認めた場合、受理の裁定を下します。
裁判所は破産の申請を受理すると同時に管財人を指定しなければなりません。
管財人は関連部門、機構の人員により清算組を設立、あるいは法律により設立した弁護士事務所、会計士事務所、破産清算事務所等仲介機関が担当する事が可能です。管財人は債権者に対して会社資産の換金・分配を行い、最後の分配が完了した後、適時に裁判所に破産財産の分配報告書を提出し、裁判所に対して破産手続きの終結を裁定するよう申請します。
裁判所が破産手続きの終結を裁定した後、管財人は破産人の元登記機関にて登記の抹消手続きを行い、破産手続きが完了します。
5、休眠
「休眠」は企業側の体裁上の問題などから、意図的に破産をさけて休眠会社として存続させる方法です。但し、実態的には、年度検査等で工商行政管理局から営業許可の取消処分とされるケースが多く、6ヶ月程度の時間稼ぎにしかならないのが実情です。
また、たとえ工商行政管理局に営業許可を取り消されても、企業の法人格は引き続き存続するため、出資者は清算を経て、工商行政管理局に企業抹消登記を行う義務が残ります。
6、 組織再編
中国法人を複数設立している進出企業であれば、不採算地域の企業を他の地域の収益企業に吸収合併させ、規模縮小を図る方法も可能です。
■中国事業撤退(終止)の注意事項と問題点
1、清算の義務
「会社法」184条により、会社を解散もしくは経営終止する際、株主には会社清算の義務があり、営業許可書を剥奪され、設立登記を抹消された場合でも、清算の義務は残ります。
ただし、現行法及び条例には、株主が清算義務を履行しない場合の処罰規定が明確でなく、株主が清算手続きを行わず会社を閉鎖し撤退した場合、その処遇については地方間の差異が大きく、裁判所を通じて株主の出国制限を行い、会社に代わり従業員給料及び税金の納付を要求する地域もあり、注意を要します。
ただし、有限責任会社の株主は、原則、出資額を限度に、会社に対して有限責任を負い、それ以上の会社の債務に関して連帯責任を負うことはありません。
2、持分譲渡の制約
合弁企業の出資者が、持分譲渡を行う場合は、原則、合弁パートナーの全員一致による同意が必要です。
「中外合弁経営企業法実施条例」第20 条では、以下の内容が規定されております。
・中外合弁企業の株主がその持分を第三者に譲渡する場合、その他の株主の同意を得なければならない(持分譲渡同意権)。
・合弁当事者の一方が、持分を譲渡する場合、他の合弁出資者は、優先購入権を有する。
・合弁当事者の一方が、第三者に持分を譲渡する条件は、他の合弁当事者への譲渡条件より有利であってはならない。
以上の内容に違反する場合は、その譲渡は無効となってしまいます。
既存のパートナーが買手となる場合には、問題は少ないのですが、パートナーの賛同が得れない第三者への譲渡の場合には、上記条例による持分譲渡同意権が問題となりやすく、往々にして非常な労力と時間がかかります。
最高人民法院によると、2009年に審理した外商投資企業の紛争のうち、持分譲渡に係るものが2割を占め、その多くは中外合弁企業株主の持分譲渡における同意権により引き起こされたものであるとされています。
3、政府の抵抗
会社登録を取り消す場合、政府機関の許認可が必要です。しかし、現地政府は税収減や就業難などを懸念し、抵抗感を持つことが一般的です。また中国政府は外資導入実務には慣れているが、外資撤退に対応する経験には乏しい傾向があり、規定にない資料の提出を要求されたり、手続きに予想以上の労力と時間がかかるケースも少なくない。
4、中国撤退の代価
撤退の代価が高過ぎる。
ⅰ)一旦企業が解散を決定した場合、営業期間が10年を超えていなければ、「二免三減」等の外資優遇税制が設立時に遡及して取り消され、通常税率との差額が課税されます。
この場合、2007年までは33%、2008年以降は25%の企業所得税を支払わなければなら
ない。
ⅱ)資産評価の際、譲渡の場合は買いたたかれ易く、清算・解散の場合にも清算費用・仲
裁費用・従業員給与(社会保障費込み)等の支払いが必要であり、債務処理を終えると
純資産価値が大きく下がってしまう。
ⅲ)その他、清算に伴う債務返済、違約金賠償及び諸費の納付なども撤退企業にとって莫
大な圧力である。
注1:輸入設備が免税された外資企業が監督管理期間内に清算を行い、且つその輸入の機械と設備を中国側に譲渡し、或いは中国企業に売却する場合は、その使用年数に応じて減価償却し、輸入税を補足しなければならない。
注2:国産設備を購入した外資企業が監督管理期間内に清算を行う場合、増値税の返還された分を補足しなければならない。
5、労使紛争
外資企業が解散若しくは企業再編の話を提起すると、従業員や組合から強く抗議される事例がよくある。特に日系企業の場合、日本という国に対する不満情緒も絡むため、抗議事件が発生する可能性が欧米系企業より大幅に高い傾向にあります。そしてひとたび事態が拡大すれば、経済的補償に関する交渉は行き詰まり、最終的に労使紛争に至る恐れがあります。
注:中国では、従業員の解雇理由の如何を問わず、ほぼすべての場合で「経済補償金(いわゆる退職金)」と更に上乗せ分の「報奨金」を支払う必要があり、労働法によってN+1ヶ月の給料に相当する金額を支給すると明記されている(Nとは従業員の会社での勤続年数である)が、実際の支給額は上記の基準より大幅に上回っている。
これらの諸問題点の解決策については、後日改めてご説明したいと思います。
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