少子化が進む各国 

 

前回、高齢化が進む日本でも何か果たせる役割があるのでは、といったことを書いたのは、日本と同じ道を進んでいる国が多いからです。少子化高齢化の傾向は世界中で進行しており、日本はその先頭を走っている形です。いわば先駆者なので、参考事例が乏しく、苦労しているのだと思います。でも、日本の苦労している経験が、後から続く他国に対して何か役立つ、参考になるはずだ、と考えます。

 

日本と同じ少子化傾向は各国で生じています。それを表す指標として合計特殊出生率という数値があります。

合計特殊出生率:一人の女性が(その時点の年齢別出生率で)一生の間に産むと思われる子供の数

世界銀行のデータバンクに国別の合計特殊出生率の推移がわかる資料がありましたので、そこから抜粋してグラフを作成しました。世界銀行のサイトは以下

 

 

 

 

 上記グラフを見ると、韓国をはじめとして、インド、タイ、ブラジルといった国々の少子化が急速に進んでいることが見て取れます。韓国の合計特殊出生率が低いことは知っていたのですが、タイの数値には驚きました。2020年、タイの数値は1.341です。日本は1.34です。つまり、タイは日本と同じくらい出生率が低下しています。1960年の時点で、日本は2.001です。すでにかなり低い数値でした。しかし、その時タイは6.248でした。一人の女性が6人以上子供を産む多産な国だったのです。それが今や日本と同じ値にまで少子化が進んだのです。アジアだけでなく、ラテンアメリカ諸国も同様の傾向を示しています。例外はアフリカ諸国です。アフリカの国々は今でも多産な国です。以上の点から考えると、これから世界各国で少子化、高齢化が急ピッチで進むと予想できます。

 

人口構成が急激に変化すると多くの歪みをもたらします。国の制度が追いつかないのです。日本が人口のボーナス状態からオーナス状態へと変化し、経済成長率は低下しました。日本の社会保障制度は、まだ少子高齢化がさほど進展していない時代に策定されたので、現在のような少子高齢化が進んでしまうと対処困難です。日本の社会保険予算は急速に膨張しており、財政を圧迫していますが、予算を減らせません。

予算を減らすこと=社会保険サービスを低下させること

現在すでに高齢となりサービスを受益している人(既得権者)だけでなく、近い将来サービスを受益するであろう、待期者にとっても、人生設計に影響を与えることなので、予算の減少に対する同意は困難でしょう。

 

少子高齢化を背景に、日本経済や社会は大きな課題を抱えて悪戦苦闘しています。果たしてこの苦境にどのように対処すれば良いのでしょうか?

 

外国の視点、近い将来日本と同様の少子高齢化社会へと突入するであろうアジア諸国から日本の状況を見ていると、これから自国に生じる可能性のある事象が具体性を持って感じられることでしょう。今後、日本がどのように対処するのか、その成功例、失敗例を参考にしようと考えているのではないでしょうか。

 

日本は、いわば実験台です。人口のボーナス状態からオーナス状態へと急激に変化したらどうなるのか、その変化にうまく対応するにはどんな方法があるのか。もし、失敗するとどうなるのか。世界の多くの開発途上国にとっても他人事ではなく、自国も近い将来、ほぼ確実に似たような難題にぶつかるのです。

 

他国のために実験台になるのは割に合わない、納得がいかない、と感じるかもしれません。でも、別に他国が日本に実験台をおしつけたのではありません。日本が最初に飛躍的経済発展を遂げ、その後、少子高齢化状態になって今に至っている、ということですから。

 

では、先駆者であることに何かメリットはないのでしょうか。他国に対して参考になる事例を提供する、それにより他国に貢献する、という役割以外にもっと実利的なメリットも欲しいものです。先駆者だからこそ得られるメリットもあるはずです。

 

ビジネスの世界では、ベンチャー企業が革新的な製品やサービスを生み出し、それが大成功して巨大企業へと成長する。というサクセスストーリーがあります。特に、近年のアメリカで、急成長、急拡大した企業の事例が数多く見られます。Google,Amazon,Facebookどれも当てはまるのではないでしょうか。ごく最近では電気自動車の先駆者であるテスラがまさにそうです。このような企業は、先駆者なりの苦労があったはずですが、成功した暁には、先駆者として大きな果実を得ました。

 

日本が直面している少子化と高齢化の同時進行という難しい課題に対して、何か成功事例を生み出すことができれば、それを日本モデルとして世界各国へ売り込むことができるかもしれません。日本モデルを広げていくことで、他国の社会、経済発展へ貢献すると同時に、日本の利益にもつながっていく、そのようなWin Winの関係ができることを期待しています。共存共栄、近江商人の家訓である三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)の精神です。これからの日本に求められている道ではないでしょうか。