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ぴるくるの読書感想文

最近話題のビジネス本を中心に感想文を書いてきます。

同シリーズの「はじめてのアメリカ法」が大変面白かったので購入。

本の内容:A
本の読みやすさ:A

中国は法治国家と呼べるような状態ではなく、常に中国共産党が介入しているという噂みたいなものはよく聞くけれど、こういう法律の入門書で、そのことを体系立てて説明していることは驚きでした。
つまるところ、本書のテーマは「中国の法律に党の指導がどのように関わっているか」だそうです。

勉強になったところを3点。

①「審理するものは判決を下さず、判決を下すものは審理せず」

これはとても驚きだった。
日本とかアメリカとかみたいな法治国家の場合、裁判で審理を担当した裁判官とか裁判長が判決を下すのだけれど、中国の場合は、裁判官はいわば判決の「下書き」みたいなものを作るのがその役割で、判決を下すには裁判所の所長とか、重要事件であれば党委員会に審査してもらわないといけない。
自分じゃ判決を下すことができないのである。
(これじゃ三権分立もへったくれもない!)

それと、このような審査は公判の開始前にすでに終わっていることも多く、だから公判の終了後30分後には判決が下されるなんてこともあるようだ。
公判は実質的な審理の場ではなくあくまで形式的なもので、審理のためというより関係者への教育のためとか裁判所の宣伝とかのために行われるようである。日本じゃ考えられない。

もひとつ、判決について党の指導が関与するとどうなるかというと「受理難」とか「執行難」という問題が起こるらしい。
これは、例えば国有企業相手の訴訟を考えるとわかりやすい。このような訴訟の結果、もし国有企業が敗訴するならば党委員会は国有企業の管理者として当然責任を問われることになる。
そんなことは絶対嫌だから、裁判所に圧力をかけて訴訟を受理させない(受理難)、または判決を執行しない(執行難)みたいなことが起こるようである。

②「大公安、小法院、あってもなくてもいい検察院」

本来互いに牽制し合うはずの3つの機関であるが、実際の力関係は上記のようである。

公安の力は絶大で、例えば、労働強制試行弁法は公安部が定めた法規であるが、これは公安機関が単独の判断で1ヶ月とか3年とか拘束することができるもので、さらに恐ろしいことは、再犯は無期も可能というところである。つまり、実質無期懲役に相当する刑が公安単独の処分で可能というものである。

③「重要問題は法律で規定し細かな問題は行政法規で規定する」という体系になって「いない」!

これも中国法の特徴だと思う。つまり、法律問題を調べるときはできるだけ関連法規を手広く探す必要があるということである。


冒頭でも述べたが、本書のテーマは中国の法律に「党の指導」がどのように関わっているかという点である。日本法であれば、法律解釈にあたってはその法律ができたときの立法趣旨を理解した上でその解釈を導くことになるが、これと同じように中国では党の指導、党の政策から法律解釈を導くようである。

2桁成長が終わったとはいえ、いまだに8%程度の経済成長が見込まれる中国は、今後も魅力的な市場であり続ける。
その一方で訴訟リスクはどうしても避けて通れないようにも思えて、何か漠然とした不安とともに本書を読み終えた。

はじめての中国法
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田中 信行
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